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【400字小説】素直になれない

子どもみたいな絵を描けなくなるのは辛いこと。詩だって小学生の頃は素直ないい詩が書けたけれど、大人になって不自由になっただけ。絵そのものは描かなくなった。絵も詩もあんなに大好きだったのに。ゲームにすら夢中になれない無趣味の女。レディオヘッドが好きだった元カレのことは忘れられないのに。

抱き合うことにだって執着しなくなった。50歳という大きな節目を迎えようとしている。すでにあの世に片足をツッコんでいるのか。正直、長生きは望んでいない。大音量で音楽聴けなくなるから。ああ、そうか。音楽だけはわたしを救ってくれるな。絵も詩にも興味がなくなったのに、音楽を《聴く》ことに関してだけは耳を傾ける気力がある。

といっても流行は追いかけない。若い娘たちが聴く音楽には揺さぶられない。素直に言えば興味がないの。そういえば文通をしていたあの人から返事が来ないな。わたしとのやりとりがつまらなくなったんだろう。その素直さに憧れる。

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