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hiilagram
秘密の海【400字小説】
小説を仕事にできて幸せかと訊かれたら
答えはすぐに……。
怖いよね、好きなことで仕事をするのは。
コンビニのバイトでもしてる方が毎日、
人との触れ合いがあって泣けるのかもしれない。
小説の仕事は基本、一人。
取材とかしない方針だし、
編集者とも極力会いたくない。
人が苦手/信用していない。
本名の私はよく泣く、弱虫な。
好印象かなって、演技している。
大学を出る直前までずっとそうだった。
幸い、大学4年の時に文学賞を受賞して、
ペンネームで生きることが可能になったから、
そっちではいい人でいる必要もないし、
わがままな自分自身でいるんだって。
窮屈はまっぴら!
迎合するのは本名だけで充分。
売れたいなんて思わないから、媚びを売らない。
なんて幸せなの!
そんなありのままのスタンスが良かったのか、
デビュー以来、3つも文学賞をいただいて
バカみたい。
小説家という生き方は幸せか。
その答えは……。
ちなみに受賞しても一度も泣いたことはない。
❏❏❏