【血の粥】聖言は誰にも言わない(25)
それと同じ時期、マチに吸血鬼が出現した噂が広まる。夜に外出する者はいなくなった。夫婦やカップルは住居で体を寄せ合って眠った。だから、子どもを身籠もる女も少なからずいた。しかし、その中に巧妙に吸血鬼が忍び込んでいて、自分の血を受け継いだ子孫を女に宿らせた。数週間で彼女らは産気づき、血統書付きの吸血鬼の子どもが生まれる。その直後に子どもが母親の秘園を噛み散らかす……。それは噂に過ぎなかったが、日を重ねるにつれ、謎は真実味を帯びるばかり。そして、とうとう昼間でも外出するマチ人はいなくなってしまう。政も商いも暮らしも滞る。その対策に一役買うはずだったのがマチの神父だった。吸血鬼に対抗するために言葉を操った。それが聖水ならぬ《聖言》だ。吸血鬼に襲われた際に、それを言えれば万事解決のはずだった。なのに、神父も邪悪だったから、それらは効力がなかったのだ。吸血鬼のそれぞれに誠の聖言が存在するのに。
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