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ン【400字小説】

東くんと、しりとりしてた、暇すぎて。
金もコネも仕事もない私たち。
電気とガスが止まっている。
かろうじて水道が。

こんな生活を終わらせたいから、《ン》を言葉の末尾に。
でもなかなか思いつかなくて、延々と続く。

手紙を書きたいけれど、切手代も払えない。
カネコアヤノを東京まで観に行くなんていうのは夢のまた夢のまた夢のまた夢のまた夢の×∞。
飽きないから抱き合うことしか。
飽きるほど抱き合えるのは、若気の至りか、気持ちの問題か。

確かめてる、東くんという人間を。

《やさしさって何か》、
《時間って本当に流れているのか》、
《死ぬっていつやって来るか》、
そんな類いのことを考えるのは嫌いじゃない。

それが東くんを知るということ。

でも時間の無駄なのか。
働きたいけれど働けない。
心の病気だから。
東くんは芸術家なので、
生み出した作品を売りつける行為しか。
もう死のうかってふたりで。
でも《自殺》も《人殺し》も
《ン》がつかないから、しりとりは。

❏❏❏

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