見出し画像

【血の粥】西に呪われている樹が(18)

ムラの西に聖域すぎるがあまり、呪われているとされた樹がある。陽気なマチの商人すらも恐れている。歩いて行くと五日間ほどかかる荒野だ。あたり一面、砂と土で水たまりもない乾いた土地。植物は皆無。だからその中ぶりの樹の存在は禍々しく、不吉。ぽつんと荒野に存在する。どうやって水分を得ているのか、皆目見当はつかない。謎が深い。サボテンの一種なのか。しかし、周期はわからないが、固くて青い小粒な実をつける。ムラ民のほとんどはそれを口伝えでしか聞いたことがなく、実物を見る機会もない。だから余計に噂は噂を呼び、不穏さに一層磨きがかかる。その実を食べると災いが降りかかるとか、死ぬとか、仕舞いには人間ではなくなるという言い伝えがずっと昔からある。ムラ民の暗黙の了解で、その周辺へ立ち入ることは禁じられている。最早、恐竜動物さえも近づかない。ただ風が吹き抜けていくだけ。砂埃が小さく舞い上がり、殺人的な光線が降り注ぐ。

❏❏❏

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?