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北風と太陽、夏になったら【400字小説】
いつだって太陽と競っていた。自信はあった。しかし、四季を通じて負けてばかり。特に夏の太陽は強敵。人間たちは日光のまぶしさと熱さに、てんてこまい。薄着になるが、それでも流れる汗を止められずに生活している。「暑いですね~」が話題の枕詞のようだ。端から勝てる気がしない。夏はぬるい息でしか吹けない。冷たさが俺の武器なのに。どうしたら勝てるか、自分自身を追い込んで考え詰めた。結果、わたしは悟りにたどり着いた。競うのをやめればいいのだ。自分は自分らしく冷たい風を吹かせればいい。誰かと比べるなんて人間の専売特許じゃないか。それをやめることにした。ところが次は「自分って一体何ができるのか」という壁にぶつかる。それも人間ぽくって嫌だった。太陽はそんなわたしをからかった。「人間らしくていいじゃな~い」と嫌味に笑う。そんな太陽を見て、「自分を見つけられないけれど、こんなヤツにならなくて良かった」と心底思った。
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