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おおきなかぶ、前日【400字小説】

手に負えない、わたしはそう思っている。おじいさんはかぶが大きく育っていることを喜んでいるけれど、そもそも抜くことが無理だとわたしは諦めている。わたしが変なクスリをかぶのまわりに撒いたからいけなかったのかしら。おじいさんはバカだから、わたしの仕業に気づかない。万が一かぶが抜けたとしても、味に保証はできないでしょう。牛乳煮にしてもそのぼやけた味はごまかせない。つまり、すべては無駄だったの。「明日、かぶを抜くのを手伝ってくれ。ふたりじゃないと抜けそうにない」とおじいさん。やっぱり頭がおかしいと言うか、のんきと言うか、平和な人だな。それで若い頃のおじいさんを思い出して、昔からのんびりしたところがあったと懐かしんだ。そんなあなたが好きでした。そして今も好きなんです。今夜の夕食はシチューなのだけど、久しぶりに食べる。精力をつけたいっておじいさんが言うからそうしたけれど、明日かぶは抜けないでしょうね。

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