ダブドリ【400字小説】
「こんな基本的なことでミスってどうすんの」とユタカは部下を注意。それで彼は意気消沈して仕事を休んでいる。致命的な間違いではなかったはずだとユタカは自分に言い聞かせる。だが、一向に部下が出社する様子がないので、上司に相談。「きみの基本的なミスだよ、今時」と叱られた。いつもはやさしく肯定してくれる上司なだけにショックだった。とはいえ、週が明けてようやく出社してきた部下に、ユタカは深く謝った。
「わたしに配慮がなかったよ。今後はあんなことがないように気をつける。申し訳なかった」
でも部下の反応は冷ややか。怯えているのかコミュ障なのか。いずれにしろそれを反抗的とユタカは感じてしまった。でもグッと我慢してその場を離れた。基本的なミスの《基本的》ってなんのことだろう。部下はそれから相談もなく数日にしないうちに一方的に辞表を提出する。少なくともそれは部下側の早まった基本的ミスなのだとユタカは信じたかった。
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