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【血の粥】ことほぎの夕暮れ(40)

祈りを捧げるムラ民のほかに、願いを込め、炎のまわりで、踊っているムラ民。シカの革で作った太鼓。神聖な音で鳴る銅鐸。切り落とされたブタの頭が祭壇に。それを取り囲むように野菜や果物が供えられている。呪文は鳴り止まない。晴れた空は薄暗くなり始めていた。橙色が地平線に落ちようとしている。権力を誇示したい者たちがいて、そんなことには無関心なムラ民もいる。平和だけを祈って、踊っている。皆に酒が振る舞われだして、ほろほろいい気分。誰も悪い予感はしなかった。コバートがムラ長として覚醒するのを待っている人たち。清潔な場所で入れ墨を彫っている人と入れられる人。ムラを去ろうとするものはひとりもいなかった。コバートに希望を託していた。マチの人間はひとりもいない。神懸かった儀式だからマチの有力者ですら呼ばれない。マチはそれどころではなかった、怪死事件が連続発生。コバートが血の粥を食べ終わると万雷の拍手が起こった。

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