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フローター【400字小説】

「何考えてるの?」と守備をしながら話しかけるチホ。バスケットコートでキョウイチと1on1をしている。彼女らはまだ付き合っていない。チホの片思い。身長差20cm。背が高いのはチホ。
「富樫勇樹がビクター・ウェンバンヤマとマッチアップした時、どんなこと考えたのかなって」
それでチホは「本人にとってはうんざりな質問だろうね」と返す。その言葉の途中でキョウイチは右へドライブする。チホはぴったりついていく。それに対してキョウイチは急ブレーキを踏んで、足を止められなかったチホとの間に僅かだがスペースを作り出す。ふわっとしたフローターを放ってゴールを狙う。しかし、態勢を整えたチホの手がショットを阻んだ。「身長差をなくすシュートのコツを教えてあげるからさ、わたしと付き合ってよ」とチホは尻もちをついたキョウイチを見下ろした。「次はさぬきうどん食べに行こう」とキョウイチが。噛み合わない会話がチホにとって厄介なフローターだった。

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