【血の粥】死に際にふさわしい弱々しい歌声(44)
充満する黒い煙でコバートは息苦しくなり窒息しそうになっている。悪魔の所業のごとく、容赦なくエコーの煙が肺から酸素を吸い取る。肺が致命的に凹むのをコバートは感じる。死を想起させられる。そんな時、稲妻に爆死したエコーの最期が頭を過ぎって、断末魔を思い出す。それは「俺の名前で賛美歌を!」だった。意味はわからなかったが、賛美歌がエコーを葬り去るのかと直感して歌った。悪あがきになっても構わない覚悟だった。死に際にふさわしい弱々しい歌声。
―――紫の雨が降って青い実は星降る。
生き霊がやって来るときは、
雷鳴と痺れを持って立ち向かいなさい。
西から物語は終わる。
血が流れれば穏やかな日々が震える。
マチの商売人はいらない。
ムラの呪術師も頼りにならない。
美しい神と血の粥を称えよ。
すべての生命に花束を捧げろ。
狩りをした記憶が、
生き霊の歪んだ憎悪と、
戸惑いを見つけるだろう。
生き霊のその名前を呼べ。
神に誓って叫べ。―――