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【血の粥】「生き霊はエコーだ!」(47)

コバートの賛美歌はまるで効かなかった。エコーは一瞬怯んだが、何も起こらずに終わった。右腕も腐っているし、コバートは自分の非力さに泡を食う。呪術師になったはずではなかったのか?と混乱した。もう無敵だと慢心していた。それだけに脆かった。エコーが安堵して咆哮したが、その低音にコバートは怯えるざま。しかし、ムラ長は違った。「生き霊はエコーだ!エコーの名前に変えて賛美歌を歌いなさい!」と叫んだ。それで慄いていただけのムラ民たちも意を決して大声で歌い始める。すると見る見るうちに生き霊の黒い煙は色が薄くなっていった。拡散していた黒煙は収縮して灰色になり、人の形へと戻った。それはエコーの顔、体の形を成してはいなかった。皮膚は全身が泥になったように乾いたように見えた。それでも「エコー……」とコバートが思わず呟く。ムラ民も「エコー?」とざわつく。そんなエコーの分身を粉々に打ち砕くのがコバートの役割だった、残酷。

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