タイムアウト【400字小説】
ジュンイチは秘め事がバレそうになって不倫相手と作戦会議。「一緒に暮らそう」とジュンイチは言ったが、ハルナは頷かなかった。「あなたの家庭を奪うつもりはないの」「じゃあ、どうすんだよ」とジュンイチは聞いたけれど、その先へ踏み込みたくはなかった。関係が終わってしまうことを予想。出社前のマクドナルドであっけらかんとしたふりでコーヒーを飲んでいる。店内はすっからかん。行列の残像も見えない。子どもの笑い声も聞こえない。ただただラジオ風のPR放送が流れている。そこへ唐突にハルナが「アメリカ、金メダル獲ったね」と言う。
「え?」
「パリのオリンピック。バスケ」
ジュンイチは元バスケットボールプレイヤー。
「いつの話してんの?」
「今年の総集編動画で見たんだよ、YouTube」
ジュンイチはもうバスケに興味がない。ハルナもそれを知っているはず。それでハッとして、彼女もこれ以上は踏み込みたくないんだなって、ジュンイチは気づいた。
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