【書評】ネットワークはなぜつながるのか 第2版

戸根 勤
日経BP
2007/04/12

 結論から申し上げると良書です。育成の一環でネットワーク周りの推奨図書が他にないか問い合わせを受けたため、追加で選んだうちの一冊です。第2版ではありますが、初版は2007年、電子版のデータ作成も2017年。読むとわかりますがまだADSLが標準的に扱われており、明らかに時代が異なっています。しかし、ネットワークの基礎技術は実質30年も40年も変わっておらず、光ファイバーが主流で1Gbps、10Gbpsの通信回線が提供されている現在でも、その根幹は変わらない部分が大きくあります。著者はamazon上には一切情報は無し。追加探索はしていませんが、本の記載からは元ソフトウェア技術者でネットワーク技術者へ転向。ベンダーやコンサルで会社勤務をしていた方が独立・執筆されたもののようです。日経NETWORKという雑誌の連載を書籍化した様子。

 さて本の内容ですが、PCでデータが生成され、NICを経由してLANケーブル-スイッチ-ルータ-通信回線-プロバイダ-基地局-インターネット-webサーバにリクエストを送付し、レスポンスとして帰ってくるまで。これをパケットの旅に出るがごとく、1つ1つのプロセスと要素技術を細やかに語ってくれる仕立てとなっております。まぁ細やかといっても専門書に至るレベルではないのでしょうが、これだけ複合的な技術要素をさぼることなく、付帯技術も合わせて順を追って説明してくれている本を私は知りません。ストーリー仕立てになることで読み手の解釈は否応にもはかどりますし、何よりその技術が採用されていることのコンテキスとごと説明してくれるので、一面的な説明に比べて断然理解の質が異なると思います。なぜその技術が使われているのか、応用的にどういうリスクやエラーや脆弱性をはらんでいるのか、説明されれば理解に至れるようになります。

 ことネットワークの世界は特に最初は苦行のようだと感じます。知らない単語が頻出し、「こうしたらトンネルがつながるので通信できます」みたいなことをサラッと書かれているので、「おいおい、いつトンネルとやらがつながって、なんで通信できることになってんだよ」みたいな置いてけぼりの感覚が激しくあります。OSI参照モデルなんてのは最たるもので、どれだけ勘でも歯触りが悪くて飲み込めない、アスパラの硬い皮部分茹でて食べちゃったときのような気持ち悪さがあります。この本はその硬い皮を丁寧にムキムキして、こういう組成だから、こう調理するとこういう性質でこういう触感に変わるから、おいしく食べられるよーってところまで説明してくれている感じです。

 レビューにもありますが、とはいえ完全な初学者には飲み込みづらいかもしれません。一通り数冊読んだり、CCNAなりネスぺなりネットワーク系の資格に挑んでも腹落ちしてなかったりするくらいのレベル感で、単語自体は見慣れているんだけどという方にはとっても良いと思います。まぁあと実務やっている人ですかね。温故知新!おすすめ!

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