為末大さんのAIに対する発言を読み解く:スポーツに関する理解の深化と実現したいこと
今回取り上げたこの記事を読んで考えたことが多数あります。有用な/刺激的な記事はこうやって考察に使えるのでありがたいですね。為末さんの発言と、私の考察したことを合わせ読んで頂くことでみなさんの参考になればと思います。
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まず「どんなスポーツに適性があるか」の判断です。陸上競技一つとっても、腕のリーチが長ければ円盤投げが向いているといったように、身体的特徴をベースとした競技の適正診断ができると思いますが、現状では、幼少期の環境が大きく影響を受けることが多いですよね。例えば親がコーチをしていたり、親戚が体操教室をやっていたり。どのようなデータがスポーツの適性を根拠づけるのかは分かりませんが、データと競技適正の相関関係が可視化されるようになると面白いですよね。
AIの画像診断やデータ分析などに基づいてポジション適性を決定づける要素を抽出しようという。もちろん、いわゆる天才や特別な人はデータから外れますが、その種目のトップ選手の身体的特徴を「外見」でデータ収集/分析し、参考にしていく作業が考えられます。あくまで参考であり、その抽出されたデータが全て「正解」ではないでしょうから、悲観する必要はないでしょう。しかし、経験と勘だけで判断されるより、遥かに説得/納得もし易いというのはあるでしょうね。
それも今はほとんど勘によって決められていますね。経験を積んだ監督やコーチの勘は信頼性が高いでしょう。しかし問題は「誰がその監督やコーチの知見を引き継げるのか?」ということです。そういう知見は、全く形式化できておらず蓄積がないんです。
一方で、競技者の過去の成績に無意識のクセやコンディションも加味したパフォーマンス分析が必要で、AIはその部分に向いているかもしれません。
特に、種目選択において、中学生の頃に〇〇が得意だから、専門種目を○○へ。というのは誤判断の遠因になりやすい場合も多いでしょう。筋組成なども調べ、スピードや持久力などの状況や伸び率等のデータと照合すれば種目選択のミスマッチも減らすことは可能となりそうです。
これは指導者/プレイヤー両方から説得/納得材料として活用できますね。AIを活用する意図は、膨大なデータを使用しているということと、データ保持の非対称性を生まないことが大事かな?と思われます。
セカンドオピニオン的な存在として活用
この先、コーチやスカウティングに関するデータがもっとオープンになってベストな選手とコーチと選手のマッチングができれば、活躍する選手の裾野が広がるのではないでしょうか。
プレイヤー自身がAIの出力したデータを保持することで、セカンドオピニオン的に外部のコーチを活用することが出来るでしょう。日々自分を見ているコーチとは違う視点や学びを得ることで自分を伸ばすチャンスを高める。
もちろん、チーム内で複数のコーチやトレーナーなどと共有することに活用も出来ますし、これから部活動が廃止され、チームではなく、地域クラブや外部指導者が増えていくことも考えられます。
そうした場合に、実績や知見を持った遠方に居るけど、相談できるコーチを活用することも可能となりますね。例えば、動画指導やオンライン講習など。その場合もデータを蓄積していくことで可能性を拡大していけることでしょう。
セカンドキャリアについて
スポーツ選手の場合、いつ引退するかという決断はセカンドキャリアという観点で非常に難しい決断になります。どのタイミングでの引退が自分の人生にとって適切なのかといったこともAIによってシミュレーションできると選手にとって非常に励みになると思います。自分でできることとサポート体制の相乗効果が高まった時に選手の幸福度が高まると思います。
為末さんの発言とは異見になるかもしれませんが、AIの活用によってそのプレイヤーが修得してきた技術や知見などが詳細にデータとして蓄積されていれば、分析することで「ファーストキャリア」で何を得て、保有しているかが明確に解ると思います。それを元に、セカンドキャリアにおいてどのスキルや能力を活かせるかを検討し易く出来るのではないでしょうか?
ワトソンの話に出てくるAIが「文書を読み込み分析出来る」のであれば、プレイヤーが現役時代に発信したこと、レポートや学んできたことを記したりすることで、どれほどの知見を保有しているか?学ぶ能力の高低も可視化できそうです。
他にも、人脈なども可視化出来れば、自分の武器も見えそうですね。
これはどんな人にも当てはまり、就職も、転職に関してもマッチングし易い方法となるでしょう。
トレーニング/レース風景が変わる!?
横から撮影する設備はあっても、上からはほとんどないですね。上・横・前まで撮れたら、かなり分析できると思います。
こちらもご参照頂ければ。トレーニングを現場だけでなく、様々な技術やシステム、アイデアを投下し、投資/協力していければ大きく変わっていくと思います。
それに因り様々なデモンストレーションにもなるし、応用/活用も出来、可能性を拡げていけることでしょう。そういった場を構築できる「プロデューサー」が必要になってきますね。誰かスポンサーになってくれないかな・・・
スポーツの根源的な問いに関わる
普段はとても早く歩ける靴、ARで外部情報が入ってくるメガネ、あるいは脈拍を取ってくれるTシャツなどいろんなものを身に付けながら、スポーツではすべて脱ぎ棄てて生身で競技するわけですよ。だからテクノロジーって、スポーツの現場では本番でその競技力を支えるものではなく、常に能力を磨くためのパートナーという位置から抜けられないと思います。
持論ですが、いくらロボットが進化しようが、ヒトと人の対決や限界を極めようとする魅力は損なわないと思います。そういったことを訴求し、伝えていくことが大切だと思います。これはAIやロボットが進出していくあらゆる分野で言えることだと思っています。
アスリートだけでなく
常時、機器に接続してデータを取っても、その解析結果から何らかの傾向は見えるものの、理由はよく分からない。ですから、そういった分析手法の強化は、トップアスリートの強化というよりは、スポーツ業界全体の発展に結びついていく気がしますね。
駅伝の功罪でも何時も私が持論を持っていますが、駅伝のおかげで沢山のプレイヤー/コーチ等を生み出し、知見なども蓄積されています。駅伝なくしてはこういったものは多く育めませんし、蓄積できません。
それでもまだまだ共有は出来ていないし、もっと裾野を広げること、サンプルを多様化することでAIに因る収集、データもより精度が上がり、役立つものが出力されてくることでしょう。
そういった意味でも、もっと様々な場面で発信が必要でしょうし、発信できる場と糧が生じる必要があると思います。現在は、情報共有も知見の発信もモチベーションになるものは少なく、手の内を明かすことになるから損。という考え方の方が説得力を持ちます。
これが共有することで対価を得たり、依頼が増えたりすることで動機付けされ、進化する一面もあると思います。
結びに
スポーツに関して課題は多いですが、その分可能性も大いにあります。秘めたままで終わることも危惧していますが、同じような危機感やアイデア、挑戦心を持った人が沢山居ればいいな、と思っています。
協力や、スポンサーや共同研究したり、議論を重ねたり、ともに発信する人・・・様々な形で盛り上げることに繋げられると思います。