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月を語る表現者のまなざしとは。#秋分「月の文学館」

こんにちは。広報室の下滝です。
秋も深まり、月がよりいっそう美しく感じられるようになってきましたね。

みなさんは、月を見て何か想うことはありますか?

美しい、癒やされる、パワーをもらえる、という方から、孤独な存在、いつも追いかけられているようで苦手、といった方もいらっしゃるかもしれません。

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私たちが生まれた時からずっと、空に現れる不思議な存在。「月」を見るたびに、人は何かを感じずにはいられなかったのでしょうか。

中原中也といった詩人から、推理・幻想文学作家の中井英夫、現代作家の川上弘美、浅田次郎など。名の知られた書き手たちは、月を見て感じた想いを様々な形で表しています。

その作品を少しずつ集めて一冊の本にまとめたもの。それが今回ご紹介する「月の文学館」です。

月を語る表現者のまなざしの先には

美しい月が伝えてくるのは、死にいざなわれるかのような魅力か、総毛立つような嫌悪感か。
人物として、生物として描かれる月の貌が次々にあらわれて、読者を魅了します。

川上弘美は粘着質な、不気味な月を。

中井英夫は、狂わされ、翻弄される混沌とした月を。

浅田次郎は、死の気配を宿した不可思議な月を。

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「月」というひとつの存在がこんなにも広がりをみせるのだと、その影響力には驚かされます。

中には圧倒されそうな作品もありますが、短編ですので、好きな作家さんから読み始めてもいいですし、開いてみたページの作品から、自由にページをめくってみるのもオススメです。

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「月」を眺めながら「月」を読む

私が興味深かったのは、正岡子規(まさおか しき)が「句合(くあわせ)」という俳句を詠んで優劣を競うものに参加することになり、「月」というお題に想いを巡らせながら一句をつくりあげる過程が描かれている「句合の月」。

言わずと知れた俳人の子規ですが、そんな名の知れた俳人も自分の考えた句の平凡さに驚いたり、悩みつつ歩いて景色を眺めたりしながら句を考えていく様子が、思考と動作にそって流れるように描写されています。

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こんな風にして、数々の名句が生まれたのかと、正岡子規が悩んでいる姿を窺い見ているような気持ちになって、生まれた句の素晴らしさに胸を掴まれる反面、なんだか親しみを覚えました。

このような、月にまつわる多様な作品の数々が収録されている本作。
月を眺めながらこの本を読むと、新しい楽しみ方を見つけたようですごく贅沢をしているような気持ちになります。

読書の秋に、あなたもこの本で「贅沢な」ひと時を過ごしてみませんか?

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-今回のここに注目!-
「―誰かゐるのか? 戸を引けば流れ入る月光」 (堀口大學「月光」より抜粋)

夜空を見上げれば当たり前のようにそこに在る月。そんな月を見て表現者たちが感じた様々な物語が集められた本書。
他にも「星の文学館」などもありますので、気になった方はそちらもぜひ。

ひそやかに部屋に染み入る月光のような本の世界を、どうぞお楽しみください。

■月の文学館 月の人の一人とならむ

編者:和田博文
出版社:筑摩書房
定価:本体820円(税別)
文庫本:374ページ
ISBN:9784480435262

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