【マイベスト展覧会2023】大阪の日本画展
ちいさな美術館の学芸員さんのこちらの素敵な企画に参加させていただいております。
参加を決めてからいくつか候補があがっては消え、何を基準に「マイベスト」にすればいいのか迷ったのですが、
結局、唯一前期・後期どちらにも行った「大阪の日本画展」にしました。
行った時の記事はこちらになります↓
<前期>
<後期>
元々日本画というジャンルが好きなのですが、この展覧会のタイトルを聞いた時に、「そういえば大阪の日本画家って知らないな」と思ったのでした。
正確には大阪画壇に入る北野恒富の展覧会に行ったことがあったり、島成園が好きだったりもするのですが、「大阪画壇」というくくりで見たことがなかったのです。
京都画壇とか、東京画壇とかは割と意識するのに(といっても京都の人、東京の人というレベルの軽いものですが)、大阪画壇となる「その他」のイメージが強かった気がします。
そんなわけで、「大阪の日本画」を大々的に扱った展覧会は珍しく、
更にそれを大阪で見るというのが乙な気持ちになりました。
そして展覧会自体も期待を裏切らない面白さ。
なぜ大阪画壇があまり知られていないのか、
同じ関西といえども京都画壇とは趣きが大分違う、
知らない画家がたくさん…
と様々な新発見だらけだったのです。
ということで、私が得た3つの発見を述べていきたいと思います。
発見①:「いとさん こいさん」の世界
大阪のイメージといえば、たこ焼き、お笑い、にぎやか、もしかしたらおばちゃん…と、「日本画」と聞いて思い浮かぶ世界と大分違うのではないでしょうか?
関西に住む私も、なんとなく「日本画」というと京都のようにはんなりイメージを持っていて、大阪には合わないなという大いなる偏見を持っていました。
でもよくよく考えたら、船場言葉やらタニマチやら裕福な世界を象徴するような言葉もあり、そりゃあ商業の街、大阪ですもんね…となるのです。
裕福な世界にはきれいな着物を着たお嬢様もいるわけで、そこは私が思い浮かぶ「日本画の世界」だったのです。
そしてそれを裏付けるような、豪奢な着物を着た絵もいっぱい!
着物を見るだけでも眼福でした。
この展覧会で、私が抱いていた大阪への偏見が曝露されることとなり、
大阪の奥深さを今更のように感じたのでした。
発見②:女性画家が多い
この展覧会の中で一番びっくりしたのが女性画家が多かったことです。
例えば京都画壇にも、とても有名で私も大好きな上村松園をはじめとして女性画家は存在していますが、”珍しい”という印象を受けます。
なんとなく「女性だけれども頑張って画家になった」感がある気が。
もちろんそれは時代的背景として、女性が仕事をすること自体が珍しかったのでしょう。
ところが、「大阪の日本画」展で解説を見ていると女性が多い!
しかも「苦労して画家になった」感が少ない(勝手なイメージですが)。
背景として、裕福な家庭の女の子は習いごとで絵を描くことが多かったそうです。
商人の街ならではの特性と言えるのではないでしょうか。
12月23日から同じ中之島美術館で、大阪の女性画家に特化した展覧会が開催されるので、それも楽しみです。
展覧会ができてしまうくらい女性画家が充実していたということなのかなと期待で胸をふくらましています。
発見③:絵が生活に密接
大阪画壇の日本画家がなぜあまり知られていないのか、につながるお話ですが、
大阪では床の間に飾る絵の需要がとても高かったそうです。
というのは商家ではお客様をもてなすことが多い、そうなると四季折々の絵を床の前に飾る必要が出てくる、
そんなわけで贔屓の画家に描かせたり、画家たちもご用聞きしに来たり、としていたそうです。
こうして豊かな文化が形成されていったのかなぁと想像しながら、再現された床の間を見ていました。
商人のことですから厳しい目で見そうだし、それに鍛えられた画家たちもしのぎを削ってそう…
そんなわけで文展や官展に出して有名にならなくても、画家としての生活が成り立つため、公の場に出ることもなく、
それゆえに世にあまり知られていないという状態のようでした。
正直なところ、こうした床の間に飾られていたような絵は、展覧会のガラスケースに入ってしまうと地味な印象を受けてしまったのですが
逆に言うと生活の一部としてはぴったりな作品たち。
そう思うと、絵のある生活への憧れが募ったのでした。
ここまでつらつら書いてみましたが、半年以上前に見た割には色々と思い出してきました。
ということはやっぱり「マイベスト展覧会」だったのかな。
素敵な作品たちを堪能するだけでも展覧会に行ってよかったーーと思うものですが、こうやって自分なりの発見がたくさんあると、より印象深くなりますね。
年の瀬に展覧会の振り返りができてよかったです。
素敵な企画をたててくださった、ちいさな美術館の学芸員さん、ありがとうございました!
またここまで読んでくださった皆さんもありがとうございました!
来年も良き展覧会に巡り合えますように。