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「生誕140年記念 石崎光瑤」展@京都文化博物館
大山崎山荘美術館にてワイエス展を見た後は、京都文化博物館へ行き石崎光瑤展に行ってきました。
無知故名前も知らない画家だったので、生誕140年記念となればたくさん作品が出ているはずだと思い、是非行きたいと思っていた展覧会でした。
11月10日までだったのでぎりぎりセーフでしたが、それだからか、平日とはいえなかなかの人でした。
知らない画家ということで、期待などできなかったのもありますが、予想以上に非常に見応えある作品群でした。
知らないと言いつつも、ポスターにも使われている《燦雨》が既視感あるなと思ったら、上村松篁はこちらを参考に《燦雨》を描いたということで、そちらの絵は観たことがあったからでした。
それだけ活躍されていたはずの石崎光瑤を知らな買ったとは、未知の画家がまだまだたくさんいるんだろうなと思ったのでした。
多くの日本画家の展覧会で写生帖にびっくりすることが多いのですが、今回もそれに漏れず、丁寧な観察力と確かな筆致の写生がただただすごかったです。
会場入ってすぐに12歳から19歳で描いた虫の写生が展示されていたのですが、そこから驚きの連続。写生というより観察記録のようで、細かい描写の横に文字でも注釈を入れており、探究心の一端が伺えました。
初期の作品はこうした緻密な描写力を遺憾なく発揮したような、描き込みがものすごい作品が多かったです。
色彩も美しいので圧倒的な存在感でした。
それが後半の部屋に入るちょっと前から、構図がシンプルになってきて、その分上品さが増してきました。
特に長谷川派や狩野派など古典の要素を取り入れた作品たちは簡素な構図でありがらも存在感たっぷりでした。
確かな描写力を持ち、描きこみを整理していくと、シンプルな構図であっても見ごたえを感じられるような作品になるんだなと思いました。
本日のBEST:《笹百合》二曲一隻
非常に大胆で装飾的な構図で、画面いっぱいに傾斜が激しい斜面を緑で塗り、そこにユリや笹、羊歯や蔦などを配置してあります。後景にはとがった三角形の木が二本配置されていて、それが以前見た長谷川派の《鉾杉図》みたいだなと思っていたら、まさに解説にそれが書かれていました。
といっても長谷川派よりも、光琳のような大胆に装飾的にした作品でした。
こうした先人の良さを取り入れつつも古さを感じないのは、草花の配置にモダンさを感じるからのような気がします。
百合や蝶が写実的に描かれていつつも、蔦は装飾性強く描かれていたり、羊歯もレースっぽさを意識して配置されているように見えました。
おそらくこの配置の仕方のリズムが、江戸時代のものまでとは違っているようにも感じられます。感覚的な感想になってしまいますが。
この新旧の組み合わせがなんともツボでした。
全体的に可愛らしい印象もありつつも、後景の杉のような木の強さも感じられて、緩急もある作品というところもBESTとなった理由となりました。
その他印象的だった作品
以下、好きだった作品のメモです。
《筧》二曲一双
画面全体に卯の花が咲き乱れ、ところどころに百合が咲く、白が印象的な作品。卯の花の奥に筧という掛け樋があり、そこにツバメの番がいるのが更に爽やかにする。卯の花の描きこみがすごくて、「うわー」と思わず言ってしまいたくなる作品だが、よく見ると、同じ花や草でも線描きしているものとしていないものがあり、それがバランスよく描き分けているのでくどくはない。
《緑蔭》一幅
大胆に大きく配置された芭蕉の葉にインコが一匹、身体をねじって止まっている。後の大胆な構図にも通ずるような作品で、こうした構図が自分の好みなのかも。シンプルながらも芭蕉の葉ににじみなど表情があったり、インコが普通に止まっているのではなくて羽を半ば広げつつ身体をねじるという動きがあるのが、この作品を魅力的にしている。
《惜春》二曲一隻
左から地面と平行に突き出る桜に、そのすぐ下をやはり地面と平行に左に向かって飛ぶ烏、そして右下には筍が二本描かれている。桜と烏で横方向が強調されているが、筍はまっすくには生えていないため、縦方向は少し弱い。ここに画面のちょっと不安定さみたいなものを感じ、烏が低空飛行しているのも相まって、桜が見事に咲いてはいるものの寂しさを感じる。タイトルを見て《惜春》と知って、非常に納得した作品。
《奔湍》六曲一双
轟轟と右から左へと流れる川を画面いっぱいに描く。流木があったり、小さな紅葉が舞っていたりして、画面左上には川の上を飛ぶ雉の番が描かれている。川がほぼ白で描かれており、波や飛沫をわずかな陰影で描く。遠くから見るとほぼ白いのが、確かに流れが激しい川ってほぼ白くしか見えないよなと思った。流木が右隻から左隻へ長く一本通っているのが、画面をまとめているもよう。
また素敵な画家に出会えて、大変満足な展覧会でした。