木が語りかけてくる?
フリーランスの庭師です。
今年の12月で庭師歴20年となるのですが、これからお話しするのは、庭師を始めて二年目の頃の話です。
その当時、ようやく木を切らせてもらえるようになり、剪定が難しいながらも、楽しくて仕方ない時期でした。とは言え、剪定する速度は遅く、周りにはいつも迷惑を掛けていました。
ある時、20年近く庭師をしている職人さんと一緒に個人邸の手入れをしていました。
私は木に上ると、「え~と、この枝は要るかな?いや要らないかな。う~ん…。」などと考えながら木を切っていました。一方、その職人さんは、ほぼ手が止まることなく剪定をしています。
休憩時間にその職人さんに聞いてみました。
「どうしたらそんなに早く切れるんですか?」
するとその職人さんは、「木がさぁ、この枝を切ってくれって言ってくるんだよ。」と笑いながら答えてくれました。
いやいや木は喋らないし、木の声が聞こえるとかないし…と私は思ったものです。
それから18年経った今、私もほぼ迷うことなく剪定をしています。木の声は相変わらず聞こえませんが、木の枝振りを見ると、切る枝と残す枝の判別が即座にできるようになりました。枝振りを見た瞬間に切り終わった後のイメージが浮かぶのです。
そしてつい先日、若手の職人に聞かれました。「岡本さん位になると、考えずに切れるんですか?」と。
そこで、こう答えました。
「木の声が聞こえるんだよね。この枝を切ってくれってね。」
おあとがよろしいようで…
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