#24 「気をそらす」の達人を目指そう
やめて欲しいのに、毎日繰り返される子どもの行動ってありますよね。
最近のうちの子(1歳9ヶ月)だと、「寝ているお兄ちゃんに襲いかかる」です。
妹:早起きタイプ。はじめ1人の時間を楽しんでいるが、飽きてくるとまだ寝ている兄の上にダイブ!
兄:寝起きの不機嫌でイライラ、まだ手は出さずに「やめて」とモニャモニャ
妹:目覚めたのが嬉しくて2度目のダイブ!!
兄:流石に怒って払いのける。運が悪いともう一発キック
妹:大泣きして試合終了、、、
毎朝の恒例になっています。泣いて終わるってわからんもんかね。
ダイブしようとひらめいてしまった子どもに対して、恒例行事を終わらせるべく大人ができることには、大きく3つの選択肢があります。
言葉で説得(or注意or叱責)する
抱えて物理的に引きはがす
おもちゃ・お菓子で気をそらす
1と2をまず試し、それでもダメなら3の手段、ということが多いんじゃないかと思います。
気をそらすだけでは解決になってないし、「ダメ」と伝えないと結局繰り返しちゃうんじゃないの、と考えがちですが、実は、いきなり「気をそらす」から入ることが結構効果的なんです、というのが今日の話です。
繰り返しのループから抜け出せない理由
「それはダメ」「やめなさい」「何回も言ってるでしょ」
何度注意しても「良くない行動」が繰り返されている時、大人と子どもは『負のループ』にはまっています。
大人の心理としては
「ちゃんと伝えて理解してもらわないと、他所でやったり将来的にこの子が苦労する。人にも迷惑をかけちゃう。ダメなことはダメと言わなくちゃ」
という感じ。
この時、実は子どもからすると、
「ダメとわかっていないからする」のではなく、「ダメと言われることがよーくわかっているから」している、のです。
「構ってもらえる / 刺激的なことが起きる」というのは、ほとんどの幼児にとっては「良いこと」です。
・叱られることの不快さ
・注意を無視した時に自分に訪れる負の影響
を想像して行動を自制することができるようになるのはまだまだ先のこと。
成長の過程で「怒られることの嫌さ」が上回る逆転の時期が訪れますが、それまでは「怒られる」ことは「自分に注目が向いた」報酬扱いと脳が処理しがち。
大人は「怒られることは本人にとって不快で嫌なこと」だと考えているが、
その子にとっては「怒られる=注目を獲得できる嬉しいこと」と処理されているというミスマッチが起きています。
このミスマッチが、繰り返しのループから抜け出せない理由です。
「気をそらす」は単なる「その場しのぎ」だけでもない
「怒る叱る制止する」が本人の期待に応じる行為になってしまっている、というミスマッチが理解できたら、次は自分の脳内ブレーキとの戦いです。
「とはいえ」悪い行動をしているのに何も言わんわけにはいかんだろう、
という頭の中のささやきに打ち勝つ必要があります。
科学的に証明されている、という事実を学んでみるのはどうでしょう?
行動の繰り返し・習慣化に関する研究の先駆者としてスキナー(Skinner,B)という人がいます。
研究の1つである「オペラント条件付け」という理論では
・行動した時に良いことが起きれば、その行動が再発しがち
・行動しても何も起きなかったり、悪いことが起きれば、その行動は再発しにくくなる
と説明されます。
ようやく本題。
今回のテーマは、やめて欲しい行動に対して「やめなさい」をスキップして、「気をそらす」を最初の対応にすることが意外と効果的、という話でした。
スキナーさんを信じてみましょう。
行動しても何も起きなければ、その行動は再発しにくくなる。
「兄の上にダイブ(しようとしている)」行動には特に反応せず、気をそらす声かけやおもちゃの提示だけを行う
→ダイブしようとしても「何も起きなかった」という経験が蓄積される。
→ダイブ行動が再発しにくくなる。
という訳です。
自分にしっくりくる言葉を持つべし
「気をそらす」という表現から専門的な香りが感じられないからか、発達支援・療育の現場では「行動の置き換え」や「行動のスライド」といった表現がよく使われます。
が、言っていることは同じです。
大切なのは、自分が納得できて、いざ子どもが行動を見せた瞬間に自分の対応を少しアレンジする勇気と知恵を持つことです。
以上、不適切な行動が繰り返されている場合には、注意・叱責・制止は一旦やめて、「気をそらす」を初手の対応にすると良い場合が結構ありますよ、という話でした。
ではでは。