#48 "預かり型"放課後デイの意義と価値
6月も明日で終わり、月が変われば
学齢期の子どもに関わる人にとっては「夏休みの準備」が動き出す時期ですね。
夏休みで一皮向けたね、なんて話が交わされることも多いように、
専門職によるトレーニング的な関わりだけが発達を促す手段ではなく、
「体験」には発達を力強く促すパワーがあります。
今回は、
・学齢期向けの障がい福祉サービス「放課後等デイサービス」の種類について
・低く見られがちな"預かり型"放デイだからこそ提供できる意義と価値 =体験の重要性
についての話です。
放課後デイのバリエーション
活動設定や運営スタイルが多岐にわたる放課後デイですが、
一例としてこんな分類が可能です。
①個別×専門特化
心理師やPT・OT・STなど、専門職が特定の能力の育ちを狙いに集中的に関わるタイプや、
運動面のサポート・学習支援、プログラミング指導を売りにしている所もあります。
一回1〜2時間、基本的には送迎サービスはなく、ご家族による送り迎えの必要があります。
②個別×多様な活動
あまり多くはないタイプ。
私が働いていた地域だと、市町村委託の単年度事業として中核機関が行っていた一ヶ所のみでした。
最初に発達検査をとり、ご家族と相談しながら重点を置く活動を決め、オーダーメイドでプログラムを構成します。
保護者が毎回付き添い、保護者研修も実施。
送迎はなく、一年間の期間限定。
数も少ないですし、高度な専門性が求められるので、狙って働ける感じではないかもしれません。
③集団×専門特化
音楽や美術、運動・スポーツなど、特定の活動内容を売りにしているタイプ。
習いごとに近いプログラム構成をしている所もあれば、
送迎あり・長期休暇の終日利用可・生活面の支援も実施と、④に近い形で「活動」内容だけが限定的、という所もあります。
④集団×多様な活動
最も数が多く、私が働いていたのもこのタイプ。
利用するメンバーの興味関心や、職員の強みに合わせて柔軟な活動設定を行います。
クッキングや公園遊びに制作活動、夏場はプールを用意する所も。
設定に子どもを付き合わせるのではなく、子どもたちの特性に合わせたプログラム構成ができることが長所ですが、
定員10名までの小集団とはいえ、活動のバリエーションと安全性を両立させるには経験と一定の専門性が必要です。
獲得する場と発揮する場
働く側は①〜④の中から自分にあう場所を選んで勤務することになりますが、
子どもの側は様々なタイプの事業所を並行利用しています。
1週間の中で放課後デイの利用は一曜日だけ、という子もいれば、
週5・週6でほぼ毎日どこかしらに通っている子も。
報酬改定議論の中で、①〜③を「専門型」、④を「預かり型」として報酬区分を分けるというアイデアがありましたが、私は反対です。
①〜③のように、特定の能力を獲得する「トレーニング」的な支援はもちろん重要ですが、
トレーニングのためのトレーニングになっては意味がありません。
その子が興味関心のある活動、
生きていく上で出会う人や場所それぞれで心地よくすごせるようになること
身につけた能力や促された発達を「発揮する」場面も同じように大切だと思います。
体験格差という視点
「体験格差」という言葉が最近夏休み等でトレンドになっていますが、
ともすれば学校と家の往復で一日が終わってしまいがち。様々な事情から、自分たちでの外出や自発的な遊びが難しい子たちがいます。
障がいのある子たちの「放課後」と「長期休暇」の体験を保障する放課後デイ
特に④のタイプの事業所には
体験格差の是正という社会的機能があります。
10人(放デイ一日定員)の様々な障がい特性を持つ子たちを
・一箇所で預かったり
・外出活動に連れ出したり
しながら安全にすごすのは、実はそれだけでも結構専門性がいることです。
が、「預かってるだけでしょ」という批判の声が出がちだったり、
実際に個別最適化した環境設定を行わず、預かっているだけに近い事業所があったことも事実。
④のタイプで働く支援者は、
しっかり反論できるだけの専門性と
「獲得した能力を発揮する場所」として、多様な体験を保障すること
を忘れてはならないと思います。
以上、放課後デイのタイプ分類の1例と、
「小集団さまざま活動タイプ」だからこそ提供できる価値についての話でした。
ではでは。