氷山モデルの具体例 [聴覚過敏] #10
こんにちは。にわのです。
知的障がいや発達障がいのある子どもたちへの支援について情報発信しています。
前回、子どもたちが見せる様々な行動は「氷山の一角」にすぎず、行動の背景にある問題に目を向けることが大切、という氷山モデルをご紹介しました。
今回は氷山モデルの具体例として、「感覚の違い」を背景として表れる行動について取り上げてみます。
氷山の一角として、こんな行動
・人が多い空間で耳をふさぐ、突然走り出す
・泣いている人がいると叩こうとしてしまう
・手作りのご飯は口にせず、レトルト食品やカップラーメンなど決まったものしか食べない
・家以外のトイレに入れない
・決まった服しか着ようとせず、夏でも裏起毛スエットを着たがる
・指が腫れあがっているのに泣きもせずけろっとしている
こうした行動が見られたとしたら、背景に「感覚の問題」が考えられます。「感覚刺激への過敏さまたは低反応」は自閉症の診断基準の一項目とされており、発達障がいと併存するケースの多い特性です。
食べ物の好き嫌いや暑がり寒がりなど、感覚差は誰にでもあるものです。ただ、感じ方の凸凹が極端だと日常生活場面でも不快に感じる刺激が多くなり、回避のための「問題行動」につながることがあります。
具体例:聴覚過敏への対応
刺激の量を減らす対策をとり、無理に我慢させないことが基本です。
音の刺激への感受性が敏感な場合に加え、可聴域(聞こえる音量や音の高低の範囲)が平均より広い子も多く、周囲の大人が気づくより先に苦手な音を聞きつけているため、支援者側からすると「突然」走り出したり叩きに行ったり、という行動が出てしまう子もいます。
とはいえ、「人ごみに出かけない」という対応では活動範囲が狭まってしまうので、有効な対策の1つにイヤマフ(ヘッドホンのような形をした遮音効果のある耳当て)の装着があります。
放課後デイで働いてきた体感としては、支援学校に通う子でいうと10人に2人くらいは持っています。ほぼずっとつけている子もいれば、部屋に入ると外す、好きな音楽を聞くときだけ外す、などそれぞれの使い方をしています。
氷山モデルで考えよう
定型発達の人なら耐えられる刺激を不快に感じてしまうことは、もちろん本人のせいではないし、本人の努力でどうにかなる事でもありませんよね。
自分としては苦痛な刺激から逃れようとあれこれ必死に行動しているのに、「走っちゃダメ」「叩いちゃダメ」と注意されることが日常になると、大人への不信感や自信の喪失につながってしまうかもしれません。
「これくらいの音やニオイは我慢しなさい」と無理に慣れさせようとすると、その場所自体が苦手になり、通所しぶりや登校しぶりにつながるかもしれません。
行動背景に感覚の問題があると感じたら、「結果としての行動」をとがめるよりも、感覚に刺激を与えている周囲の環境を見直すことが大切になってきます。
以上、氷山モデルの具体例として、「聴覚過敏」という感覚特性についての紹介でした。
ではでは。