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【読書感想文】常識のない喫茶店☕️


僕のマリさんのエッセイがだいすきだ。
読むたび、ひとつひとつのエピソードを抱きしめたくなる。

1日1日を重ねていくのは長いようで短くて短いようで長くて、なのに放っておくといろんなことに忙殺されてどんどん過ぎていってしまうのに、僕のマリさんはそういう生活の中でキラキラしたものを集めて本にして見せてくれる。
「常識のない喫茶店」は宝箱みたいで、開くたびにその輝きに照らされて、とてもうれしい気持ちになれる。

この本は、僕のマリさんがある喫茶店で働く日々をエッセイにした作品なのだが、わたしも学生時代から接客業をしてきたので共感できる部分がいっっっっぱいあった。
わけがわからんお客さんってほんとめっちゃいる!!
買い物したと嘘をついてキレながら駐車券を押しつけてくるガタイのいいおじさんとか!店内の商品を端から端まで説明させる勢いで拘束、質問してくるおばさんとか!外国の方のふりして永遠に英語で話しかけてきて、最後に日本人でした〜!って言ってくる(!?)おじさんとか!もうほんとにいっぱいいる!!

わたしはかつてひとりで店番をしている時にスカートの中を盗撮されたことがあって、最終的には警察沙汰になったり、ほんとにほんとに悲しい思いをたくさんした。

僕のマリさんが作中で、
「店員をストレスの捌け口のように扱っている人たちが、残念ながらいる。なめられているんだな、と悲しく思う。」と書いてくれて、おんなじように悲しい思いをしている人がいるということ、そしてそれを跳ね除け、間違っていることを間違ってると指摘してくれている存在がいることが心からうれしくて、あの時の自分をやさしい強さで包み込んでもらったように感じた。

被害妄想かもしれないとは思いつつ、やっぱり女だからなめられやすいのは確かで、前述した人たちの他にもやたら女性店員に絡んでくる男性に困ってた時、男性の店長が来たらすぐいなくなってむかついた。男性だけど店長もかっこいいし美人でもあるやろがい!なめとんのか!と思った。人間じゃなくて「女」って認識されているんだなと感じるたびにむかつくし、自分の性別にもイライラしたし、負けたくねえ〜と思った。
このことについても、マリさんはいろんな経験や自分の考えを書いてくれている。
わたしは生活雑貨屋(と呼んでるけど、もうちょっとホームセンター的なものも売ってる)で働いているので、喫茶店とは状況などは違うが、同じ気持ちになることが多いなら接客業の人はみんな一度は経験しているのかなあと思えて、全国の接客業の女性たちとスクラムを組んでいるような気持ちになった。連帯!みたいな…気持ちの上でだけだけど。

そういえば、以前おおきなショッピングモールのスタバに行った時、レジをしてくれた店員のお姉さんが名札か何かのところに防犯ブザーをつけていて、胸が痛んだ。
それを見ただけで、彼女が経験させられたことが容易に想像できて、わたしが守れたらいいのにと思った。接客をしていて嫌なことがあったかもしれないのににこにことオーダーをとってくれるおねえさんのことを、今でもふと思い出す。

ここまで書いていて、シンプルにやっぱ接客ってやだな…と思った。もちろん嫌な部分がいっぱいある。
だけど、わたしがずっと接客をしているのは好きだから、以外に理由が見つからない。
わくわくと買い物をしてくれる人たちがいっぱいいるし、ありがとう〜とか、またくるねって言ってもらえたらわたしもすごくうれしくなる。レジ打ちの中でのただの会話かもしれないけど、生活に根ざしたものを販売するなかでその人たちの便利になれたらと思うし、買ってくれる人たちの毎日がたのしいものでありますようにと心から願うことができる。
他人の生活について、直接、純粋にポジティブな気持ちを伝えることができるのは、接客業の特権だと思う。

僕のマリさんも本の中で言ってくれていたが、やっぱりわたしも他人について諦めたくないと思う。嫌なことをしてくる人もいる。ほんとうにいっぱい。ふさぎこめば、簡単に世界に対して絶望できるくらいにはいる。
だけど、そうじゃない人も同じくらい、もしくはそれ以上にいっぱいいるのだと思いたい。
もちろんいろんな生き方があっていいと思う、だけど人を傷つけたりするのは違うよねって、間違ってるもんは間違ってる!って言っていい世界にしたいし、なってほしい。
そう思いながら明日も、「変な客来ませんように!」って大きな声で言ってからお店を開ける。それもいつか笑い話になってくれるだろうと信じて。

この本は、希望に満ちた本だ。僕のマリさんは、接客業で働くわたしのヒーロー。
これからも、仕事で嫌な客に会うたびにこの本を開いて、マリさんの宝物を一緒に抱きしめさせてもらって、日々のきらめきを拾い集める努力をまたはじめようと思うだろう。

一冊読み終わってもう一冊買ったので、ひとつは家、ひとつは職場のロッカーに置いておこうと思います。明日からは、お守りとしてもよろしく!ぎゅ。

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