こっちを向いてよ、猫

僕は今まで猫と暮らしたことがない
だからわからないんだ猫が考えていること
僕はこんなに好きなのに
好きな食べ物だと思ってあげても黙々と食べるだけ
一緒に遊ぼうとしてもすぐに違う部屋へ行ってしまう
話しかけてもこっちは見るけど気持ちは届いていなさそう

だから僕はやっきになる
猫の気持ちをわかろうとする
猫の好きなマタタビの匂いを嗅いでみたり
猫が昼寝している日向で一緒に寝そべってみたり
キャットフードもかじってみたり
肉球のキーホルダーを買ってみたり
高いところからジャンプしてみたり
鳥や蛇と闘ってみたり
猫という存在を理解しようとする
でもわからない
態度はまったく変わらない
猫はきっとこの気持ちに気づいてない
今だって我関せずなんて顔であくびしている

でもたまに
本当にたまに
僕を叩いて遊びに誘ってきたり
ご飯をあげるとニャーと鳴いて喜んだり
お腹を撫でるとグルグル言って満足気になったり
座って作業してる膝の上に乗ってきたり
肉球を触らせてくれたり
玄関のドアを開けると待っててくれたり
猫は僕に嬉しいことをしてくれる
僕は余計わからなくなる
猫といると気持ちが乱れる自分がいる
どちらが本当の猫の気持ちなのか
僕のことを好いているのか

でもきっと
そんなところが好きなのかもしれない
振り回されて
猫のことばかり考えて
それなのに猫は知らんぷり
我が道を行くなんて顔をしていつも通り

僕はそんな猫が好き
好きなんだよ
聞いてる?
この思い届いてる?
ねえ君、こっちを向いてよ





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