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歴史知らずの歴史語り:知性のリトマス試験紙
面白い本を見つけました。
内容が面白いというわけではなく、これに反論できるかどうかでその人の知的レベルが判明するという本です。
先ほど通読しましたが、ヨシモトの漫才以上にツッコミどころ満載でした。
まず全体的に歴史知識が古すぎます。
50年前の教科書と司馬遼太郎の小説を混ぜ合わせた歴史認識をベースにしている=現実にありもしない観念論的歴史観の上に立論しているので、砂上の楼閣にならざるを得ません。
そもそもの根本概念として提示してある「理数系武士団」なるものも、日本の危機の時に現れるとありますが、例として挙げられているのが幕末だけであり、理系のお得意の「エビデンス」が全く示されていませんでした。
幕末にしか例のないものを日本史全体にさも存在していたかのような言い方は、どう考えても「科学的」には程遠いおとぎ話でしかありません。
違うというならぜひ証拠を出してほしいものです。まぁ、無いでしょうけれども。
あと、一番ウケたのは、トクヴィルの「アメリカのデモクラシー」の概念を引用していた箇所で、トクヴィルが現実を古来の良き宗教で規定し直すことなしにアメリカのデモクラシーによる社会の自壊運動=ディストピア化を止めることはできない云々、と説いていることを受けて、「いまさら宗教を布教するということはできない。その宗教の代わりになるものが科学であり、科学的に考えられる科学者(自然科学者のみ)が社会を導くことができる」みたいに言っていたところです。
この本はコロナ茶番の後に出版されたものですが(ウクライナ戦争も出ていますので)、コロナ茶番で、その科学者連中がそろいもそろって金銭欲や名誉欲などに目がくらんでアホな「感染症対策(笑)」を社会に押し付けて社会を大混乱させたということをご存じないと見えます。
「自然科学マンセー」そして「自然科学を担う自然科学者によるテクノクラート独裁マンセー」というのがこの本の結論でした。
文系のことを役立たずとこき下ろす前に、まずその貧しい一般教養を何とかするべきであろうというのがこの本と著者に対するアドバイスです。
ちなみに著者は物理学専攻の研究者だそうです。
典型的なタコツボ=専門バカ研究者のキャリアでした。
ということで、読者の歴史理解、人間理解についてのリトマス試験紙となるという意味でなかなか良い本でした。