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ベンチャー企業COOの適性の話

こちらの記事でご紹介している通り、2024年10月1日にて3年9ヶ月務めたchipperのCOOを退任し、新設会社「株式会社blends」のCEOとして新たなキャリアをスタートします。

3年9ヶ月という短い期間でしたが、その経験を踏まえて自分の考える"スタートアップCOO論"をまとめて、自分のCOOキャリアの一区切りとさせていただきます。

大企業・中小企業・スタートアップと規模によって、COOの役割は変わります。
自分が経験をしたことがない規模のCOO論について書いても具体度が上がらないため、本記事ではあくまでスタートアップにおけるCOOの役割について言及します。


スタートアップのCOOの役割とは

一般的な「COO」の求められる役割にはいくつかありますが、網羅的に記載しつつ、スタートアップで求められがちな役割に★マークをつけます。

中長期的に求められる役割

  • 企業参謀★

  • 組織開発★

  • 変革推進

  • 第二創業請負

  • 次期CEO候補

短期的に求められる役割

  • 実務執行★

  • 事業開発★

  • アライアンス★

  • バックヤードオペレーション設計★

  • 企業マーケティング実行★

  • マクロマネジメント/MVV浸透★

  • マイクロマネジメント/行動数値達成★

  • ファイナンス

中期的に見ると「CEOの参謀的役割」かつ「組織開発」を求められることが多いです。
一方で短期的には、求められる範囲が異常に多い点がベンチャーCOOの特徴かなと思います。

世の中の多くのCEOの傾向

また、これは自分が世の中の色々なCEOと話した所感ですが、世の中のCEOの方は「強みが特化している」ことが多いと感じています。レーダーチャートで言うと圧倒的に尖っているスキルがあるタイプです。

パワーを持って会社を創業するタイプの方は「サラリーマンとして人の下で働くよりも代表として組織を引っ張り、自分最適で組織を作る(創業社長の不得意領域を誰かに支えてもらうように組織を作る)ことが最適だった人が創業していることが多い」という要因が大きいかなと思います。
※もちろんそうでない方もいるので全員がそうと言っているわけではありません。

他CXOとの役割分担

また、CFO(最高財務責任者)やCMO(最高マーケティング責任者)、CHRO(最高人事責任者)のように、明確な役割が決められていないのがCOOの特徴です。
上記の役割は、それぞれ特化したスキルを持つ人が着任する(ことが多い)役割のため、結果としてCOOが「それ以外」を役割として分担することが多いため結果として業務範囲が広くなります。

時にCEOと他CXOの調整役になることもありますし、CXO同士の調整役になることもあります。
(当然ですがCOOはメンバーとCEOの調整役の役割も担っています)

そのため、自分は「COO」=Chief Operating Officer(最高執行責任者)ではなく、「Chief Other Officer」(スーパーなんでも屋)という言葉が合致していると思います。

COOというポジションのよくある誤解

これらのなんでも屋という役割から、COOという役割をポジティブに解釈し「得意な領域がなくてもできる」だったり「強烈なリーダーシップがなくてもできる」と言う人がいます。

3年9ヶ月COOを経験したのでわかります。これは大きな間違いだと思います。
もし「自分は二番手タイプだ」と言ってCEOではなくCOOを目指している人がいたら、考え方をチェンジして欲しいです。

「得意な領域がなくてもできる」は「全てが得意な領域である必要がある」です。
※COOに苦手領域があると、浮いてしまう業務が発生したり、無意識にその領域から目を背ける組織構造になるため。

「強烈なリーダーシップがなくてもできる」は「状況に応じて強烈なリーダーシップを出し入れするスキルが必要」です。
※採用や教育、企業間アライアンス等、組織を作っていく際には強烈なリーダーシップが必要であるため。

COOの適性スキル

これらのスタートアップCOOを取り巻く環境から、適性スキルをまとめます。

  1. なんでもやる覚悟を持っている(マインド)

    1. やらないことを決めない

    2. 他CXOがやらないことをやる

  2. CEOの翻訳家である(ビジョン浸透)

    1. CEOが見ている時間軸を理解する

    2. CEOが言語化できないことを言語化する

    3. メンバーが理解できる言葉に翻訳する

    4. CEOを社内組織醸成のための共通敵にしない

  3. 自分の中の正しさを変えられる(柔軟性)

    1. 正しさは社会環境によって変わることを理解している

    2. 正しさは組織フェーズによって変わることを理解している

    3. 正しさは人や立場によって変わることを理解している

  4. 人の感情を深く理解している(人間理解)

    1. CXOは感情で意思決定をしないように感情コントロールができる

    2. メンバーは感情で仕事のパフォーマンスが変わることを理解し、感情の上下をキャッチして寄り添う

    3. 企業間アライアンスでも感情で意思決定をすることもあるので、相手の属性を深く見極める

  5. 仕組み化から逃げない(組織構築)

    1. スタートアップは人数が少ないからこそ属人的になってしまうが、「属人的だから」と諦めずに再現性を持つような組織にするのがCOOの仕事であることを理解している

    2. 売上と経費の構造を管理し、黒字化するビジョンが見える仕組みを作る

    3. メンバーが人材を紹介したくなるような組織文化を醸成する

CEO向け:優秀なCOO採用のために

上記の適性リストを満たせるようなとてつもなく優秀な人を、どうやったら組織の初期フェーズで採用ができるのか。
これは、これからCEOとなる自分が向き合っていくテーマであるため、数年経って忘れていないように備忘録的に残します。

結論、自分はビジョンのみで入社しました。chipper代表の十時の考えるビジョンと自分の考えるビジョンが合致していたから。それだけでした。
だから年収2倍3倍のオファーを蹴ってでも、年収が下がったchipperを選んでジョインしました。年収という選択軸がなかったから。
ただどうやら、世の中の大半はこの意思決定軸ではないようです。年収というのも大事な決定軸というのが一般的です。

それも踏まえるとこのような流れが理想なのかなと思います。

  1. CEO個人の売上で黒字化している状態を作ること

  2. 誠意を見せれるオファー金額を提示できる状態にすること

  3. 数年後マーケットをどう変えたいか強く信じ、ビジョンを語ること

  4. 相手のビジョンが合致しているかすり合わせること

  5. 最低限の年収は提示しつつビジョンマッチで採用

上記のチェックリストを満たしているか、は大事ではあるのですが、全て満たしている人は採用が難しいことが多いです。

自分が特に重要だと思うのは「なんでもやる覚悟を持っているか」と「自分の中の正しさを変えられるか」です。この2つがあれば他のことはなんとかなります。

だからこそビジョンマッチが大事なのです。人間は固定観念にとらわれてしまう生き物です。どんなこだわりがあっても、大義のために自分を捨てられるか。逆に言うと「自分を捨てられるような大義が存在しているか」が重要です。

最後に

僕が入った時には社員3人だった株式会社chipperへCOOとしてジョインし過ごした3年9ヶ月は、人生において宝物であり、大きな財産です。

こんな貴重な経験をさせていただき、共に寝食や苦楽を共にし、笑顔も涙も共にしたCEOの十時・CMOの奥村には感謝してもし切れません。

また、取引先の皆様、これから一緒に働いてくれる皆様、全ての人への感謝の言葉を以て、本noteを締めさせていただきます。

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