【表現評論】涼宮ハルヒの憂鬱(原作) コアレビュー その0【再読】
今回は涼宮ハルヒの憂鬱の原作を読んでレビュー(感想)をやっていきます。扱うのはアニメでも漫画でもなく、あくまで原作1巻目の「涼宮ハルヒの憂鬱」オンリーです。
⚫︎コアレビューってなんなのよ
ハルヒから入ってくる人がいるかも知れないので一応補足。自分はもともとメモリーズオフという家庭用恋愛ADVのコアレビューなるものをやっています。これですよこれ。
このコアレビューはとあるコンセプトの元で書いている記事です。どういうコンセプトかは以下参照。
このメモリーズオフコアレビューのコンセプトをハルヒに適用してレビューするのが涼宮ハルヒコアレビューになります。
コアレビューで重要なのは、初見ではないという点と、本編以外の情報は一切参考にしないという点と、主観で語るという点です。今後コアレビューと名がつくものは全て同じコンセプトになります。
あと裏コンセプトとして、とにかくボリュームを増やして綿密にするというものがあります。上のマガジンを開いてもらえればわかりますが、メモリーズオフのコアレビューは2024年8月25日時点で6.5作ほどレビューを行い、記事が150本程度、文字数は多分50万字くらいになっています。こんなもん、もはや頭から読めるレベルではない。科挙の暗記量並みになってる。一応各作品のまとめ記事は作ってるけど、それだけ取り出しても10万弱はありそう。
ということで、このハルヒのコアレビューも普通の記事より長くなることだけは保証します。重ねて言いますが、原作以外は何も参照しません。作者のインタビューも漫画も2巻以降もアニメも参照しない。原作1巻オンリー主義。そしてあらかじめ宣言しておきますが、コアレビューは原作1巻しかやりません。なぜ1巻だけなのか。それは1巻で全てが完結してるから。
ではスタート。
⚫︎涼宮ハルヒの憂鬱についての印象
最初に読んだのはいつですかね。二十歳前後の大学生の時かな。アニメが終わった直後くらいだったと思います。あまりライトノベルに触れることのない人生でしたが、1巻はとにかく面白すぎて何回も読んだ記憶があります。じゃあ他のライトノベルを読むようになったのかといえば、少なくともその時点では読むようにはなってませんでした。正確に言えば、読んだものの、そこまでのめり込まなかったような記憶があります。何回も繰り返し読む程度にハマったのはハルヒだけです。さらに言えば、何回も繰り返し読んだのは1巻だけです。他の巻は流し読みしてそれ以来読んでない気がする。そこから月日が流れ、ライトノベルを書いてみようとなった時に再び再読しました。そこからさらに月日が流れ、最近もう一回読んでみました。おおよそ10年おきに再ブームが来ている。
涼宮ハルヒの憂鬱を直近で再読して受けた印象は、「パーフェクト」な「ライトノベル」です。ここまで「パーフェクト」な「ライトノベル」は存在しないのではないか、と思わされるくらいの「パーフェクト」「ライトノベル」。完璧な小説ではありません。完璧な物語でもありません。完璧なエンターテイメントでもありません。僕が言いたいのは「パーフェクト」な「ライトノベル」。どういうことなのよ。
まずパーフェクトとはキャラクター、構成、物語、文章、絵、その全てに欠点がなく最高水準のものが用意されているということです。ハルヒが人気になったのはハルヒの奇矯なキャラクターにあります。そしてそれを表現する文章も軽快で非常に読みやすいですし物語は思春期の青少年の思うところを余すところなく描いています。さらに登場人物が次々と現れ己を開示し無駄なく物語が収束していく構成は群を抜いています。絵もザ・ライトノベルという感じで、特に表紙のハルヒの立ち方が特徴的で目を惹きます。ジャケ買いする人が多かったんじゃないかな、と思わされる表紙の完成度。挿絵の入れ方もなんでここにねえんだよと感じることがない。必要なものが必要な場所に入っています。
で、このオタク特有の早口みたいなパーフェクトの内容は、「ライトノベル」としてのパーフェクトです。じゃあライトノベルとは何なのよ。そう問われても、実際ライトノベルとは何かを定義するのは難しいですが、良いライトノベルを定義することはできそうです。それは少年少女がライトに読んで共感して面白がってくれること。その定義に乗っかった上でキャラクター構成物語文章挿絵全てがパーフェクトなのが、涼宮ハルヒの憂鬱です。
⚫︎個人的に受けた影響
ライトノベルを書こうとしていた時に再読したと上述しました。自分が書きたいものとは全く違ったんですが、とにかく書き手の視点から見ると、こんなに構成が素晴らしい作品はないなと思い、参考にすべく一生読んでいました。とにかく毎秒飽きさせないんですよね。まずキョンの特徴的な語りから始まって、その後すぐにハルヒの自己紹介が入る。そこからハルヒの人物説明に入り、次々と長門、みくる、小泉が現れ、各々が目的を開示をし、クライマックスに向けて全てが収束していく。どのページをとっても飽きさせないという意味で、ハルヒの構成は群を抜いています。ちょっと物語がダレてきそうなところで長門の自己開示が入ったり、朝倉の襲撃が入ったり、閉鎖空間の一幕が入ったりと、起伏の付け方も絶妙です。何回読んでも面白いのは、このように全体の構成が神がかっているからではないかと思いますね。とにかく飽きない。どこ読んでも飽きない。パーフェクト。
で、お前が書いたラノベは入選したのかって? いや〜。無理でしょ。才能がなかったね。でも一回やってみたから才能がなかったとわかる。何事も一回はやってみることをお勧めしたい。
俺の話はどうでもいいんだよ。次回から本文のレビューに入ります。