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【表現評論】涼宮ハルヒの憂鬱(原作) コアレビュー その6 第5章【再読】

●涼宮ハルヒ、その他作品、様々なネタバレが含まれます。

●前回の記事

⚫︎ハルヒの不機嫌が増大

お出かけイベントの後からハルヒの不機嫌が増大しているとキョン君が分析してます。何も目新しいことが見つからないからなのか、他の何かがあるのか。

⚫︎古泉の自己開示

宇宙人の長門、未来人のみくると来て、超能力者の古泉が最後に自己開示してきます。超能力者は「機関」に所属していて、地球上に10人ほど存在すると。超能力者が10人ほどであることはわかりますが、機関の人間がどのくらいいるかは不明です。機関の目的はハルヒを監視すること。すでに機関のエージェントが数人が学校に潜り込んでいると。

古泉は長門と同じように、ハルヒが自分の願望を実現する力があると言っています。宇宙人と超能力者という、ほとんど無関係な二人が同じことを言ってるんだから、これは事実と考えてよさそう。みくるは何にも言ってないけど、みくるは禁則事項だらけだから何も言えない。

長門の目的は進化の可能性を秘めているハルヒを監視すること、古泉の目的はこの世界の「神」であるハルヒが世界を滅ぼしてしまわないようにハルヒを監視することです。この二人はほとんど目的が被っているので、特に敵対関係はなさそうなんですが、古泉の態度からすると何かしら含みはありそう。まあ情報統合思念体の中には朝倉みたいな存在もいるので、敵対していてもおかしくはない。古泉が敵対してなくても、「機関」が敵対している可能性もある。未来人もハルヒを監視するのが目的のようですが、なんのために監視しにきたのかはよくわからない。少なくとも憂鬱の中では未来人の目的は最後まで分からずじまいです。謎。

古泉の超能力は限定的なもので、ハルヒのイライラが頂点に達した時に現れる閉鎖空間内で、ストレスの原因である神人を倒す時にだけ発現します。いわゆる普通の超能力ではないですね。これはハルヒの常識的な部分とせめぎ合って生み出された能力という感じがする。あからさまに空飛んだり火を出したりはしない。そこまでいくと絶対あり得ないだろみたいな。普段は普通だけど、誰にも知られずに限定的な部分のみ能力を発揮できるところに、ハルヒの願望の趣深さを感じる。

⚫︎願望とはなんなのか

古泉はキョン君のことを色々と調べ、間違いなく普通の人間だと分析しています。これは真実だとして、じゃあなぜ普通の人間なのか。ハルヒの能力を信頼すると、宇宙人、未来人、異世界人、超能力者だけではなく、普通の人間を望んでいたということになりそうです。

ここでふと思ったんですが、願望ってなんなんでしょうね。自分の願望を実現する能力が仮にあったとしても、願望ってそんなにはっきりしてるものなんでしょうか。例えば宇宙人がいて欲しい願望があったとして、いて欲しい度合いが100、いて欲しくない度合いが0なんて状況は考えづらいわけで、いて欲しい度合いは80、いて欲しくない度合いが20みたいな、グレーな感じなことがほとんどだと思います。このグレーな願望はどのように実現されるのか。80が実現されるのか、何も起こらないのか、別の形で実現されるのか。その辺ははっきりしません。グレーの度合いによってさまざまに変化しているような気はします。超能力者は60くらい欲しいけど、40くらいは欲しくないなみたいな感じだと、特別な状況の時だけ超能力者になる存在が発生すると。

ハルヒの非日常を望む度合いが90だとしても、望まない度合いが10あるとしたら、キョンみたいな普通の人間が要請されてもおかしくなさそうです。長門はキョン君に対してあなたが選ばれた理由が必ずあると言いました。僕はキョンが選ばれた理由はハルヒを日常へと繋ぎ止める楔の役割として必要と判断されたからだと思いますね。なぜならハルヒの中に非日常を望まない心もどこかに存在するから。古泉がハルヒを常識的な思考を持った普通の人間と称していることからも、それが推測されます。こいつら結局似たもの同士なんだよ。キョンとハルヒ。もしかすると、同じような仲間が欲しいという願望もあったのかもしれない。最後の閉鎖空間の辺りでも言ってますからね。アンタ「も」日常に飽き飽きしてたんじゃないの、みたいなやつ。

⚫︎疲れたハルヒ

いいかげん何も起こらないので疲れ果てたハルヒ。キョン君は呑気に弱気になっている顔が可愛いなどと言っております。ことあるごとにハルヒの容姿を褒める男。

⚫︎朝倉の襲撃

長門と同じ情報統合思念体である朝倉がキョンを殺してハルヒがどう変化するか観察しようとします。キョン君は長門に救われてことなきを得ますが、朝倉は消滅しました。情報統合思念体の中でも思惑は一つではないらしい。それは小泉の機関も同じようです。未来人はどうなんでしょうね。未来人が一人しかいないので思惑がわからない。人間が二人いれば思惑は異なるものですが。リアルに殺されそうになったことで、一気に非日常感が増して緊張感が高まるイベントです。無意味な登場人物は出さないというのが小説の鉄則ですが、朝倉にもきっちりと役割は与えられていましたと。谷口と国木田は知らない。機関のエージェントなのか、中学校時代のハルヒとキョンを語らせるためだけの存在なのか。

ちなみに長門のメガネがなくなったのは憂鬱の中での明確なミスです。あった方がいいに決まっとるがな。いや、なくてもいいかな。いや、やっぱりあった方がいいな。

ハルヒは朝倉が急に転校したことを事件だと考えます。あってるんだけど、説明しようのない事件。とりあえず事件について一緒に調べることに。

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