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【第6回】税務署や都道府県等から指摘されないMS法人との不動産や業務委託等の取引とは

MS(メディカルサービス)法人と取引をしている医療法人は多いですが、税務調査でMS法人との取引を否認されたり、都道府県からMS法人との取引内容について聞かれて対応に苦慮したり、保健所の立入検査で医療法違反として指摘されたという話をよく耳にします。

ちなみに平成12年に税理士事務所を開業して以降、当事務所の顧問先様について、税務署からMS法人との取引を否認されたことはありませんし、都道府県に対する対応で困ったことも、保健所から不適切取引と指摘されたこともありません。
もちろん税務調査のたびにMS法人との取引は確認されますし、都道府県からMS法人との取引について聞かれたこともありますが、契約書を提示するとともに金額の算定根拠を提示することで特に問題となったことはありません。
保健所については、そもそも医療法違反となような不適切な取引を顧問先様に提案していません。

当事務所に医療法人から相談があったときによく決算書や試算表等を見せてもらいますが、地代家賃や委託外注費の金額が比較的に多い時は「MS法人とどのような取引をしていますか?」と聞くと、地代家賃は「医療機関の建物」「役員社宅」「保養所」などの賃貸借契約をしていたり、委託外注費は「清掃」「レセプト請求業務」「受付業務」「経理事務」などの業務委託をしていることが多いです。

「役員社宅」は税理士から医療法人で所有(賃貸借を含みます。以下同じ)すると節税になると勧められることが多いようです。
「保養所」も税理士から節税になると勧められることもあるようですが、こちらはむしろ理事長等が所有を決定し、税理士に相談したところ医療法人での所有に問題はないと言われることが多いようです。
そして委託外注費についてはほとんどが税理士からの提案でやっているようです。
業務委託の金額について理事長等に聞いても、すべて税理士にお願いしているので知らないという医療法人がほとんどです。

しかし、少なくとも地代家賃は「役員社宅」と「保養所」が、委託外注費は「清掃」は問題となる可能性がありますし、委託外注費の「レセプト請求業務」「受付業務」及び「経理業務」は税金を損している可能性が高いです。
また、いずれの取引も契約書が無かったり、取引の実態が無かったり、契約金額の根拠が曖昧すぎる場合は、税務調査で否認される可能性があります。

医療法人は税法だけで判断するのではなく、医療法について問題がないかどうか判断する必要がありますし、消費税の仕組みをしっかり理解する必要もあります。

以下、問題となる理由等を明示するとともに、対処法などについて詳しく解説いたします。

なお、私が執筆している書籍にもMS法人との取引の注意点等について記載しておりますが、本記事では書籍ごとに分かれて書かれている内容をまとめた上で、書籍には書いていない追加の情報も記載しております。
つまり、MS法人との取引に関する深掘り解説だと思って頂いて差し支えありません。


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