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アーティストはスピーカーを選べない

本格スムージーブランド「FICO & POMUM (フィコ・アンド・ポムム)」 を創業したF&Pジャパン代表の西野です。
このマガジンでは、いつも社内向けに発信している脳内公開つぶやきを投稿しております。

作り手の限界線

映画って、映画館で見るのと家のテレビで見るのとでは迫力や感動の伝わり方も全く違いますよね。
制作側や配給側としては、「映画館で見てもらえればベストの状態で感動を伝えられるのに!」と思うわけですが、映画館のスクリーンは多くの人の自宅にはないので、映画館までわざわざ足を運んでもらって、さらにお金を払って入場してもらわなくてはいけません。
それは、制作側や配給側からは強制することはできない話です。

同じく、曲を作るアーティストも、
「この曲はバキバキに低音の効いたスピーカーで聞いてもらえば全然違うのに!」と思ったとしても、アーティスト側から聞き手に対して高価なスピーカーを指定することはできません。

こういった制限は、映画や音楽だけでなくてわりと多くの企業に共通して当てはまることだと思います。

プロダクトを開発するときには、
「ここまでは作り手側で責任を負う範囲」
「ここからはユーザーに委ねる範囲」
という境界線を意識して商品設計をします。

半製品・スムージーキットが委ねる境界線

僕らのショップビジネスでは、
「ストローに口をつければすぐにパーフェクトな本格スムージーが飲める」という状態までショップ側でやってから、お客さんに提供していました。

一方で、「半製品」であるスムージーキットを販売するということは、
それを「完成品」に仕上げるところをユーザーあるいは卸先のパートナーに任せることになります。

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こうなると、
ブレンダーは指定できないし、
リキッドベースも指定できない。
使い方の自由度はユーザー側に委ねられます。

100%で開発されたはずの本格スムージーは、「仕上げ」を委ねた瞬間から、
もしかしたら80%, 70%の完成度まで伝わる感動が落ち込むかもしれません。
ユーザーから見ても、「仕上げ」の自由度が上がるのと引き換えに、不正解を踏むかもしれないリスクを背負います。
半製品「スムージーキット」の商品設計においては、この境界線をうまーくコントロールする必要があるなと思っています。

toBからtoCへ応用する「パッケージ化」

toBビジネスが立ち上がったばかりの頃、スムージーキットを卸で納品してあとは全部パートナー任せ。美味しいスムージーに仕上げるも不味いスムージーに仕上げるもお客様次第です! みたいな状態でけっこう雑な売り方だったことを反省しました。
最終的に僕らは、ブレンダーもレシピもブランドも全てワンストップソリューションの「パッケージ」に括ることによって、クオリティの一定担保ができるサービスを作り上げました。

今仕込んでいるのは、toBで学んだこの「パッケージ化」の、toCへの応用です。
ブレンダー、レシピ、その他ブースターもろもろまで。
「推奨」の向こう側へ、2万通りのカスタマイズの可能性を残しつつも、限りなく限りなく「最強の使い方」を限定していく。

「僕たちは、このスピーカーでこんなシーンでこんな風に聞いてほしいんだよ!」をおしゃれにかっこよく見せていくことができないか、を考えています。
自分で選ぶことが苦手な日本の皆さんに、まだ見ぬ新しい商品を手に取ってもらうには、しつこいくらい手取り足取りで導いていく必要があるのだと思います。

文化をつくるという作業は、こうしたこと1つ1つの積み重ねなのかもしれません。

(この記事は、2021年7月に社内向けに発信された内容をもとに編集を加えています)


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