最後の一歩でフリーズする
最近、勇気を振り絞った経験ありますか?
最近、手に汗をかいた経験ありますか?
今日はそんなお話です。
『ミスタージャンプにて』
先日、息子と一緒に『ミスタージャンプ』というトランポリンで遊べるところに行った。
以前から息子にせがまれていた場所。
家からはちょっと遠いし(相模原だけど)、予約もなかなか取れないし。そんなこんなで行けずじまいだった場所。
でも今日はいいでしょう。つきあいましょう。なんとなく気持ちが向いた日だった。
ところが案の定予約サイトでは夕方18時まで埋まっている。
普段ならここで諦めるので、息子はこの時点でおもむろにアマゾンスティックを握った。
でも私は電話をしてみることにした。すると、当日の枠が意外と空いているらしい。
今のところ13時くらいの枠、まだ空いてますよ。
Goサインだ!
ナルトを見ながら
“今日はこのままアニメデーでもいいんだけど…“的なオーラを出し始めていた息子に、よし!行ってみよう!と急にギアを入れる。
私は身勝手なので、こういう時に息子の起動が遅いとちょっとイライラしてしまう。
“この一話が終わってから“ という息子に、“いやいやR君、今出ないともう埋まっちゃうかも。そしたらもう今後1年くらい行けないかもしれない(ママの気分の問題で)“と脅す。
えぇぇ!?わかったよぉ。
今ナルトのチャクラがすげーのに・・・。
知らんがな。
アニメはいつでも見られるけど、お母さんの気分が乗る日はめったにないのだからね。その辺わかってるかな?
11時45分。相模原に向けて出発。
休日のわりに思っていたほど渋滞はひどくなく、これはやっぱり今日なんだな!と嬉しい気持ちでアクセルを踏む。
息子は後部座席でマインクラフトに夢中だ。
いいでしょういいでしょう。
あなたはそうやって架空の世界で跳ねたり跳んだりしているけれど、実際に跳ねたり跳んだりしましょうよ。Gを体感しましょうよ。これから。
国道16号をしばらく走ると右手に大きな平屋のグレーの建物が見えてきた。商業施設に入っているテナントではなく、トランポリンただそれだけのために来た感じが嬉しい。
そして、なんと入口の目の前の駐車場が1台空いている!!!
ほらやっぱり今日なんでしょう!?お母さんわかってたんだよね。
けどこの先受付で何時間待ちといわれるかは不明だ。
テナントではないという事は、待つとなったらせっかく入れた駐車場を一度出てファミレスとかに入らなければいけない。
でもやっぱり今日は神様がついていた!
ちょうど13時15分からの枠であと2名ご入場いただけますよ!と受付のお姉さんが言う。
キタ!!!!おねぇさん!ありがとう!
嬉しくて思わず息子の頬っぺたをむぎゅむぎゅする。
テンション高めの母に少し引いてる息子。とお姉さん。
でも、さすがに目の前に広がるたくさんの種類のトランポリンに息子の目の色が変わる。
会員登録と安全に関する説明を受けて、トイレを済ませてさぁいよいよ入場!
今思うと確かにトランポリンは腰や首への負担が大きそう。とくに運動不足の大人には思いがけない衝撃がありそうだ。
万が一に備えて、と、緊急連絡先を聞かれる。
夫の携帯番号を伝えて、
そうか。ちょっと気を付けて遊ばないと、いろいろ迷惑かけちゃうかも。と、今日初めての理性が働く。
良くみるとトイレの前の壁に息子が好きなユーチューバー『フィッシャーズ』のサインが額に入って飾られていた。それにいち早く反応する息子。〈んだほ〉というぽっちゃり目のお兄さんは、アスレチック動画で有名なフィッシャーズの中で唯一運動が出来ないキャラだけど、そういうキャラも輝いて見え、メンバーの中ではむしろいい味を出していて我が家ではお姉ちゃんがまだ小学生のころから見ているチャンネルだ。
でも子供がユーチューブを見るのは、私はちょっと嫌である。
理由は、あまりに魅力的な紹介をしているからだ。
こんなの見たら次の休みに連れて行ってってなるじゃん。こんな上手な工作したら、自分も作ってみたいってなるじゃん。無理じゃん。こんなホテルの宿泊レポートされてら、泊まってみたいってなるじゃん。こんなクリスマスプレゼントの渡し方したら、私も次の12月、期待されるじゃん。
そんな理由で私はチャンネルを民放に変えたがるのだけど、私が子供なら、きっとユーチューブを見るだろうとも思う。
(トランポリンの話どこ行った?)
時過ぎて、時刻は13時15分。
会員登録するともらえる専用の靴下を履いていざジャンプだ!
ボヨンっ!フワっ!!
なにこれ。
重力にとらわれない体の浮遊感(大袈裟)。
久しぶりの感覚に心も跳ねた。
トランポリンなんて何年ぶりだろう。
やばいねぇ!!!これ楽しいねぇ!!!
息子と一緒に跳ねる。
スローモーションにしたら、良いCMが撮れそう。
しばらく跳ねまわって、ちょっと慣れてきたから半回転(宙返りは禁止)とかしてみて、例の安全に関する注意事項を思い出す。
そうそう。。。私普段運動しない人なんだから、気をつけなきゃ・・と急に真顔になる。
ママどうした?
満面の笑顔の息子は本当に楽しそうだ。
何でもないよ。
連れてきてよかったと思う。
でも、遊べる時間は限られていて1時間30分である。
ここ『ミスタージャンプ』にはトランポリン以外にも魅力的なアトラクションがたくさんあった。
私がやってみたかったのは、ハーネス(命綱)を装着して高所から飛び降りたり、直径20センチ程度の階段状にならんだポールを登るアトラクション。施設内を一周するジップラインも惹かれる。
息子を誘ってみたけれど、一向にトランポリンから離れる気配がない。息子はせっかく来たのだから元をとろうという意識がないから、とにかく跳ねていたいの一点張り。脳みそがシェイクされて、昨日受けてきた塾の授業はもはや教科横断型になってそう。
大人の理由で無理やり誘うな、好きなことをやらせろ。というごもっともな息子を置いて、私は一人で行動することにした。
まず向かったのは、ハーネスを付けて遊ぶクライミングゾーン。
実は今年の夏休みに、栃木にある【大自然の中を鳥のように滑空するジップライン】を体験する予定があるため、私はそういったものに免疫を付けておきたい気持ちもあったのだ。
こんなんでヒヨっていたら、夏の冒険は失敗に終わるだろう。
私は一歩踏み出した。
一本目のポールは高さ30センチ程度。2本目は50センチ。3、4、5と続き、6本目のポールで建物にしたら1階くらいだろうか。そんなの平気じゃんって思うでしょう?ところが足場が直径20センチ程度のポールなのだから、屋根からドラえもんと夕日を眺める心境とは違う。
だんだんと恐怖心が襲ってくる。
これは後々チャレンジする人を観察していて気が付いたのだけど、高所恐怖症だったりこういうのが苦手な人は、だいたいこの6本目くらいで “無理無理!むりだわー“といって引き返す。
でも、私には免疫をつけるという目的があるので諦めない。7本目、8本目と進みハタと気が付く。これって、もし最後まで登ったとしても、下りが怖すぎて降りられなくなったら、飛び降りればいいの?(それも怖そうだけど)
下にいるお姉さんに聞いてみた。すると意外な答えが返ってきた。
「飛び降りるのはダメです~!しゃがんで足を延ばしてでも頑張って降りてきてくださいね!お姉さん!!」(40を過ぎると、だいたいこういう時、お姉さんと呼ばれる。)
そうかぁ。。。泣いても、おばさんのことはきっとだれも助けてくれないよなぁ。
冷静になった私は、まず7本目から6本目に降りてみることにした。
よく山登りは下りの方がきついとかいうし。
でも、バランスを崩すこともなく一段ずつきた道を下ることは意外と簡単だった。きっと私、高所恐怖症ではなさそう。夏のジップラインに向けて一つ安心材料が増えた。
気を取り直して前を向く。8本目。9本目。順調だ。大丈夫。
けれど、気が付いたら手のひらには大量の汗をかいていて、無意識のうちに片手ずつハーネスから手を離してはTシャツで汗をぬぐっていた。
そして、最後の1本に向かうとき、今までにない恐怖心が襲ってきた。
今までにない、恐怖だ。
なんでだろう。目の前に次の一本があるのとないのではこうも違うのか。それはなぜ?もしバランスを崩しても、次の一本にしがみつけるから?実際はそんなこと出来ないまま落下するんだろうけど。
私は9本目に左足、10本目に右足をかけたまま、フリーズしてしまった。それはきっと、一見とても勇ましい姿に見えて、とんでもなくカッコ悪いポーズだったと思う。
あ、あのひと、最後の一本だねー!、、、あれ?まだあそこにいるねー!
でも、なかなか最後の一歩が出ないのだ。勢いあまって前に倒れてしまいそうなのだ。
何分くらい固まっていただろうか。順番を待つ人が一人でもいたら、私はきっと早く降りなきゃというプレッシャーに勝てず、この試合には負けていたはずだ。
あと一歩。あと一歩。
そう唱えながら一度辺りを見回すと、ネットの向こう トランポリンのコーナーで手を振る息子を発見した。笑顔でこっちを見ている。
息子には常々偉そうなことを言っている。
最後までやってみなさい、途中で諦めないで、絶対にいい経験になるから。
それらが今、全部ベクトルを変えて私に降りかかってきた。
ママ!頑張って!
息子の声が聞こえた。
よし。きっと足が固まっているからいけないんだ。
一度足を置き換えて、左足を最後にする作戦に変えた。
ちなみに最後のポールの高さはきっと2階建てくらい。足場は変わらず20センチ。
ハーネスがあるから平気でしょ?って思うでしょう?
ハーネスって、決してバランスを支えてくれるものではなくて、ハーネスに頼ろうとするとかえって足元がふらついてしまう。あれはあくまでもいざって時のもので、支えてくれたり引き上げてくれるわけでもないんです。
どうにか分かってほしいあの恐怖心。
でも、どうにかしてやっと最後の一歩を着地させたとき。
想像以上の達成感に満たされて私は幸せだった。
私がスタッフなら、ここまでフリーズしていた人が引き下がらなかったのなら拍手くらいしちゃうけどなぁと下にいるお姉さんをチラっと眺めていたら、遠くで息子が小さく拍手をくれていた。ありがとう、ありがとう、ありがとう。
私は次の人がいないのをいいことに、息子を手招きして鞄からスマホをだして写真を撮るようにお願いした。ジェスチャーで。面倒なお母さん。
でも、そんな私を息子は面倒がらずに撮ってくれた。
たぶんここまでの出来事って、要点絞ったら2行くらいの文章で伝えられる事なんだけど、私にとっては久しぶりに勇気を振り絞った体験だったから書いておこうと思った。
最後までチャレンジしたことで、その隣にあるバンジージャンプのアトラクションにもすんなりと挑戦することが出来た。なぜならそのジャンプ台が10本目のポールよりも低いことを見ていたから。
その後の観察で、バンジーの台から飛び降りるのに何分も固まったり引き返そうと悩んでいる姿もたくさん目撃した。それでも飛び降りた6年生くらいの男の子を遠くから見ていた私は、もちろん彼に拍手を送った。勇気、出したね。って。
息子は相変わらずずっと(1時間半)トランポリンで飛び跳ねていたけれど、放置していた間にジャンプの高さが増していた。そして汗だくで、とても満足そうだった。何で元を取るかは人それぞれだなぁと改心した。
最後に施設を1周するジップラインにものったし、息子の空中で『つ』の字になる面白いジャンプも見られたし、大満足のレジャーになった。
興味のある方はぜひ、一度行ってみてください。もちろん、全然怖くないじゃんってがっかり拍子抜けすることもあるかと思いますが、それは個人の感想による、です。
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