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「わたしのいないテーブルで デフ・ヴォイス」を読んだ

「わたしのいないテーブルで デフ・ヴォイス」 丸山正樹 東京創元社 を読んだ。

コロナ禍の2020年春、手話通訳士の荒井の家庭も様々な影響を被っていた。刑事である妻・みゆきは感染の危険にさらされながら勤務をせざるを得ず、一方の荒井は休校、休園となった二人の娘の面倒を見るため手話通訳の仕事も出来ない。そんな中、旧知のNPOから、ある事件の支援チームへの協力依頼が来る。女性ろう者が、口論の末に実母を包丁で刺した傷害事件。聴者である母親との間に何が? “コロナ禍でのろう者の苦悩”、“家庭でのろう者の孤独”をテーマに描く、シリーズ最新作。

東京創元社

コロナが私たちの社会に現れた頃の描写から始まるので、「そうだった、そうだった」と思い出す。
今もまだ、なくなったわけではないけれど、その頃に比べたら、みんなが気を付けつつ、なんとか普通に生活できるようになってきた気がする。
私の周りはね。

今回の事件の被害者は、コロナ禍で仕事をなくした聴覚障害のある女性。
でも、コロナ禍で起きた、ろう者をめぐる社会の問題、変化がメインではない。
コロナとは関係なく、常にそこにある聴者とろう者の家族の問題が浮き彫りにされていた。

毎回、このシリーズは、いろいろなことに気づかせてくれて面白い。
しかも、これが正解の解決策です、という提示がないのも、また深い。
だって、一人一人違うものね。人間は。
結局、お互い、相手を理解しようという気持ちがないと、ダメなのかな。

言ってくれなきゃわからない。
言ってもわかってくれないから、もういいや。

そんな時でも、やっぱり、もう一度、お互い理解する努力はした方がいいのかな。
理解に固執するのも良くない気がするし、かといって、諦めたらそこで止まってしまうし。
さじ加減も、また微妙。
なかなか、渦中にいるとそんな余裕はないけれど。

とまぁ、本から離れていろいろなことを考えさせてくれる良い本です。

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