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「慟哭は聴こえない」を読んだ

「慟哭は聴こえない」 丸山正樹 東京創元社 を読んだ。

旧知のNPO法人「フェロウシップ」から、民事裁判の法廷通訳をしてほしいという依頼が荒井尚人に舞い込んだ。原告はろう者の女性で、勤務先を「雇用差別」で訴えているという。かつて勤めていた警察で似た立場を経験した荒井の脳裏に苦い記憶が蘇る「法廷のさざめき」。何森刑事と共に、急死したろう者の男性の素性を探る旅路を描く、シリーズ随一の名編と名高い「静かな男」など、コーダである手話通訳士・荒井が関わる四つの事件。社会的弱者や、ろう者の置かれた厳しい現実を丁寧な筆致であぶり出した〈デフ・ヴォイス〉シリーズ第3弾。
(Google Books)

第1話 慟哭は聴こえない
医療における、ろう者のサポートの問題が描かれる。
緊急時、電話で助けを呼べないのは、本当に問題だと思う。

第2話 クール・サイレント
ろう者のモデルの話。
聴者の思い描くろう者であらねばならない苦悩。

第3話 静かな男
何森刑事視点の身元不明死体の身元を探る話。
手話の方言という点からも、いつもと違うテイストが良い。

第4話 法廷のさざめき
聴覚障害者のOLが、会社の不当な扱いを民事で訴える。
聴こえるようにみえることが、聴者のろう者に歩み寄る努力を放棄し、勝手な聴者基準の評価となる。

全体を通して、荒井に「聴こえない子供」が生まれたことによる、家族の話が走っている。

このシリーズを読むと、いつも考えさせられるのはコミュニケーションのこと。
それは、聴者・ろう者関係ない。

言葉を伝えるだけでは、意味まで通じているかまではわからない。
これぐらいわかるでしょ、という怠惰。

相手の理解度を探りつつ、対話をしていかないとダメだよな、と思う。
それには、相手の背景もある程度知らないと、難しい。
つまり、そう簡単にコミュニケーション取れた気になってはいけないのだ。

誰かの生きにくい世の中が、誰かが通訳してくれることによって、生きやすい世界に変わるといいよね。
みんな、どちらの誰かでもあると思うんだ。

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