家族を好きじゃなければいけないという暴力
やあ!筋トレは精神安定剤、筋肉は向精神薬(誰も触れてくれないキャッチ)でおなじみ、メンヘラマッスル作家錦山まるだ!
タイトルを改めて見てみて欲しい。僕は「家族を好きじゃなければいけないという暴力」と表現した。これを見て「好きじゃなければいけないなんて誰も言ってなくない?」とか「家族なんだから好きなのが普通でしょ。何が暴力なの?」とか思う人もいるだろう。
突然だが、僕の実家は(端から見たら)完璧な家庭だ。話を盛ってると疑われるくらいの理想の家庭だ。どんな家かというと…
・100坪超えの庭付き一戸建て
・庭には果物の木がいっぱいで果物を近所やクラスメイトにお裾分け
・車はベンツ
・使っていない和室に紫檀の違い棚
・犬は血統書付き
・長男は都内の有名大学から某大手に就職
・次男(僕)は県内の有名進学校で生徒会長をやり21歳でプロ漫画家デビュー
・祖父は社長
・etc.
…と、ただの自慢話にしか聞こえないと思う。子供は1度も非行に走らず経済的にも恵まれ、休日に家族で高級車でゴルフに行く。分かりやすいステータスを持った正に理想の家庭だろう。
でも僕は実家の人間を恨んでいる。実家を出て10年経った今でも乗り込んでボコボコにしてやろうかと思う時があるし、親や兄弟が夢に出てうなされる日もある。ここまで読んで下さった方で
「そんな恵まれた家庭で育てて貰って何を言ってるんだ?」
「親になったことないから感謝出来ないだけだろ」
「片親の家庭や貧乏な家より幸せだろ」
「DVされてたわけじゃないんだから良いだろ」
と思った人が多数派かもしれない。実際何度も何度も言われた。だが、「自分と同じだ…」と思った人も案外少なくないんじゃないかと思う。
別にハッキリと『家族を好きじゃなければいけない』という台詞を言われるわけではないが、それでも家族を好きじゃないと言うと途端に非難を浴びる。これは何となく想像つくんじゃないだろうか?
そのせいで、家族が嫌いなのに『いやこの家は普通だ。尊敬すべき親兄弟だ。自分は幸せなんだ。』みたいな思考で自分の「嫌い」という本心に無理やり蓋をしている人が結構いるんじゃないだろうか。
うつ病になった僕はカウンセリングで「錦山家は典型的な機能不全家族です。」と言われた。そのカウンセラーさん曰く、僕の実家のような家庭は『端からは幸せいっぱいに見えるぶん本人も問題に気付けない』らしい。
そして、僕が入院した精神病院の主治医は僕の両親と面談した後に「あの親御さんには関わらない方が良い。あの親御さんが自分達の問題を自覚し改善する可能性は恐らく0でしょう。」と言った。
違う病院の違う立場の専門家たちから『実家に帰らない方が良い』という旨の話をされ流石にビックリしたが、同時に自分が20年も実家を好きになろうと努力していたことに気付いた。
そもそも好きになる努力なんかしている時点でもう関係は破綻している。それに気付いたことでやっと『家族が嫌いでもいいんだ』と思え、楽になった。
序盤から「自分と同じだ」って思っていた人だけでなく、ここまで読んだことで「自分と同じだ」って思った人が結構いるんじゃないかと思う。家族が「嫌い」なのに家族は「好きじゃなければいけない」から自分の「嫌い」に蓋をして、精神のバランスを崩している人が。
別に周りから羨ましがられるステータスがあれば幸せいっぱいの暖かい家庭になるわけじゃないし、子供を生んだからってその人が急に人格者になるわけじゃない。体にアザが出来るような暴力だけが暴力じゃないし、子供のために離婚しないと親が勝手に思ったからって子供も親に離婚しないで欲しいと思っているとは限らない。あなたが考える幸せと相手が考える幸せが同じとは限らない。なのに
「そんな恵まれた家庭で育てて貰って何を言ってるんだ?」
「親になったことないから感謝出来ないだけだろ」
「片親の家庭や貧乏な家より幸せだろ」
「DVされてたわけじゃないんだから良いだろ」
なんて言葉を子供の頃から家の中でも外でもかけられ続けるのはもう『家族を好きじゃなければいけないという暴力』だろう。
何で家族だからって好きじゃなければいけない?尊敬しなきゃいけない?何をされても言われても許してあげなきゃいけない?感謝しなきゃいけない?悪く言ってはいけない?定期的に会いに行かなきゃいけない?『家族』って最強のカードか何かなの?
感謝しろとか幸せだろとか言う前に、その言葉の暴力が相手を追い詰めるかもしれないということを知って欲しい。
僕はカウンセラーじゃないから僕みたいに好きになる努力なんかしている人を見ても突っ込んだことは言えない。けど、数年前の自分に今会えたらこう言いたい。
"親だから家族だから好きにならなきゃいけない。時間が経ったら全部許してあげなきゃいけない。嫌っちゃいけない。悪く言っちゃいけない。
そんな決まり無いんだよ。楽になって良いんだよ。"
家族を好きじゃなければいけないという暴力に苦しんでいる人が1人でも楽になりますように。