ふきのとう味噌の風景
生まれ育った栗山町がふるさと。
その風景がいつだって心の拠りどころ。
町並みや住む人が変わっても、
夕張川から見る夕陽や、
バスから眺める水田や、
酒蔵の隅々に染み付く優しい記憶、
それらが僕に『ここが確かな居場所』だと教えてくれる。
内地に戻る日の朝、母は河川敷の『ふきのとう』を摘んできた。
皮を丹念にむき、硬い部分を取り除いては盆にのせていく。
そして、甘くした味噌をフライパンで練りながら細かく刻んだ『ふきのとう』を絡ませていく。
赤ん坊の頃から、その薫りと台所に立つ母の後ろ姿が『ここが確かな居場所』だと教えてくれるのだ。
僕は、ふきのとう味噌のお粥を食べてからバス停に向かう。
母は僕を見送るバス停で『お土産に、わかさいもは如何かしら?』と言った。
『もういいんだ母ちゃん。じゃがポックルでいいんだ。昨晩、同級生とそう決めたんだ』
ちなみに『じゃがポックル』のポックルはコロポックル。つまり【ふきの下の人】の意味が含まれている。
(これは偶然にしちゃ出来過ぎた話だぜ、母ちゃん。)