【完全版】脱落させないリハビリ管理シート:ゲーミフィケーション手法の適用
ついついさぼりがちな、「家でこれをちゃんとやってください」というリハビリメニュー。
自分でもできてませんでした。
もし、こんなシートを共有してくれたら良かったのに、という表をゲーミフィケーション実践者として作ってみました。
前の記事はブログでの詳細説明を見ていただく形にしていましたが、今回こちらに書き起こしてみます。
いやいや、こんなもんじゃないですよ、というコメントも大歓迎!ディスカッションしながら良いものができればそれはそれで良いことです。
まずは完成形
いったいこの↑表のどこにゲーミフィケーション要素を適用したか、というのを一度想像していただくと、このあとの『なるほど度』がアップするかと思います。
ちなみに、典型的なゲーミフィケーション要素とされる、12個の要素を取り入れてます。
ゲーミフィケーション要素の摘要ポイント:ヘッダー部
まずは、ヘッダー部。こちらにもいくつかのポイントを反映しています。
赤い枠で囲った部分を左から一つずつ解説します。
①覚えやすくやる気になるタイトル付与で前向きに
管理表、などの事務的な言い方ではなく、「頑張り表」などと、このシート自体を前向きに思える名前を付けました。
もっといいタイトルはありそうですが、ここでは分かりやすく。
解説:タイトルは重要です。
医療的な言い方が必要な場面もありますが、親しみやすく、前向きになれるような言い回しができる部分を変えるだけでも、取り組みに対する意欲が変化します。
②累積値の明示でやった感を
4週目、というように、これまでどのくらいやってきたのか、の累積を示すことで、着実な実行を印象付けます。
解説:累積値の明示がもたらすもの
そこに至るまでの実行した成果は、症状に反映しない場合もあります。
でも、実際にやって減らないデータ(回数、日数、期間)を明示することで、行動の成果として可視化ができます。
このことが、行動の満足度として働くことで、継続意欲につながります。
③仲間の存在の明示=担当者名の明示
ゲームでも、世界中で自分しかやってないのでは?という状況と、クラスの仲間がやっている!という状況での安心感は全く違い、よりのめり込みにも前向きになります。
リハビリも同じ。一人で黙々とこなすのではなく、いつも見ていてくれている人がいる、仲間がいる、ということが明示されているだけでも、継続的に高い意欲を保つ要因になります。
解説:仲間、共有者の存在がもたらすもの
自分の選択にそれほど自信がないと、行動の意欲は低下します。
同じ価値を見つけた仲間や協力者がいる、という状況で、この選択が間違ってなかった、という裏付けとなり、選択そのものの不安がなくなります。
ゲーミフィケーションの適用ポイント:スケジュール
続いて、上段のスケジュール部分。
かなりゲーミフィケーションの考え方がストレートに反映できる部分です。
④可視化と脱落防止=全体+クリア状況
はっきりと、この日にやる!という目標提示と可視化を行いました。
「週に3回くらいはやりましょう」と口頭で言われてできなかった自分が一番ポイントとしたい情報です。
明確にカレンダーにやるべき日を規定します。
⑤全行程の明示、⑥現在地の明示、の形にすることも重要です。
どこまで頑張ればいいのか、自分はどのように頑張ってきたか、を可視化することで、モチベーションを継続させます。
また、どこかで一回さぼっても、リカバリもその単位でできることが確認しやすく、脱落を防ぎます。
解説:可視化のもたらすもの
あまり解説はいらないかもしれません。
やった気になる、ではなく、実際これだけやった、と確認できます。
また、先の時間軸の行動規範にもなり、やり忘れも減ります。
ゲーミフィケーションの適用ポイント:工程管理
⑦ステージ化と進行方向の明示=名称付与とカラーリングした進行表
1週ごとにステージ化をして、達成感を小さく区切ります。
一つのステージクリアによる達成感が、リハビリという負荷に対する⑧バーチャルな報酬になります。
さらに、ステージもここではレベル、という名称を付与することで、リハビリ担当者との会話、同じ治療を受ける仲間たちの間で、共通の評価軸とします。
これにより、コミュニケーション中に明確に進行状況を共有できます。
さらに、カラーリングで、より右に行くほど変化が大きくなるようにして、着実な進行を表現します。
解説:ステージ化の恩恵
全工程がフラットに書かれている場合、脱落をすると、リカバリをどのようにすればよいのか分かりません。
脱落の落とし穴を狭めることで、万が一脱落しても、そこだけやり直せば元通り、という道筋を用意できます。
ゲーミフィケーションの適用ポイント:成果のチェック
⑨クリア条件の明示=具体的な達成状況の確認
何をしたらこのステージが終了するか、というのを患者さんと共有し、明確にそのことを確認します。
これにより、自分が何のために何をやっているのか、ということが意識され、実際の運動効果が高まるとともに、次のステージへ前向きに進めます。
チェックボックスを置くことで、確実に記録をしてもらえるようにします。
解説:クリア条件をはっきりする効用
進められなかったときに、攻略のポイントがはっきりしていれば、迷わずにリカバリができます。迷わせない、というのはポイントです。
ゲーミフィケーションの適用ポイント:オンライン(じゃないけど)マニュアル
⑩不明点の素早い解消=やることをしっかり明示
不明点を残したままにしておくと、進行するごとに累積する危険があります。
分かりにくいことは、いつでも確認できるよう、別紙などにせず、同じ進行管理表に確実に書いておくことが回避策となります。
また、変化ポイントは色を変えるなど、分かりやすくすることで、ロストを防いでいます。
あらかじめ運動の写真などをストックしておいて、ここに貼りつけるのも良いでしょう。
↑いらすとやさんにもたくさんありますね
解説:不明点の解消
不明点をそのままにして、次の工程でまた不明点が重なる…完全に脱落コースです。一つの不明点はその場で解消できる形を用意しておきます。
ゲーミフィケーションの適用ポイント:成果の記録
(11)行動の記録と確認=やった時にすぐ書けるメモ欄
自分がちょっと不安に思ったこと、気付いたこと、は後で思い出すことはなかなかできません。
行動しながらすぐ記録、という環境を作ります。ゲームであれば自動的にログが残るようなイメージです。
これにより、課題を残さずに進むことで、脱落を防ぎます。
解説:記録の効用
自分の費やしてきた時間や行動の価値については、常に不安を持つのが普通です。確実な記録が残ることで、この不安を解消し、前に安心して進めるようにします。
ゲーミフィケーションの適用ポイント:回答欄
(12)行動のリアクション=担当者の返答欄
何かの行動をしても、何も反応が無ければプレイヤーはやがて行動をしなくなります。
明確なリアクションを戻してあげることは、行動継続の大きなエネルギーとなります。
リハビリによる効果はもちろん一番いいリアクションですが、簡単に実感できない場合もあります。なので、敢えての手書きでも、簡単でもいいので返すことが、脱落防止につながります。
解説:リアクションの重要性
やった→誰かや何かがその行為についてリアクション、というのは、孤独な作業を打ち破る一番の要素。ゲームではなにがしかの変化を起こします。
リハビリでは、担当者からの返答、というのが一番信頼されるリアクションになります。
以上を踏まえてもう一度みてください
実は、皆さんがしっかりと考えて、さらに口頭でも伝えていることを形にしただけなのです。
もちろん、形に『どのように落としたか』については、様々なノウハウを反映してあります。
せっかくのリハビリ計画、100%の効果をもたらしたいわけで、それの手助けになれば、という考え方です。
そもそもゲーミフィケーションとは
ゲーム分野のノウハウを、教育や一般サービスに適用する考え方という理解をしています。
「手法」の分析はかなりしっかりされていますので、色々な場面での応用の可能性は高まりました。
自分は、この考え方が整理され言葉が産まれるより前から、ゲーム開発の現場でノウハウを溜めて、さらに一般サービスの開発に応用していました。
その活動により
手法だけじゃ発展性はない
という考えを持つようになりました。
なので「なぜその手法が産まれたか」からブログではじっくり解説しています。
↑ここから、順番にお読みいただくと、全体像がつかみやすくなります。
まだまだこれから
今回提示してみたのは、あくまでも個人の経験が元になった一例です。
様々な症状や症例ごとに、注意点も含めて検証しながら様々なシートができてくることが望ましいと思っています。
専門家が作るのではなく、利用者側が作った、というところも一つのポイントだと思っています。少なくとも、利用者目線の一つの正解例ではありますので。
でも、専門家とのディスカッションを勧めることで、もっと良いものになっていくと考えています。
ぜひ、絡んでいただければ。