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プロマネに必要な人間観:信頼と成長を促進する視点


人間観がプロマネに与える影響

プロジェクトマネージャー(以下、プロマネ)の役割は、プロジェクトを円滑に進め、チームを成果へと導くこと。そのためには、どうしても「メンバーをどう動かすか」という手法論ばかりに目が向きがちです。しかし、最終的にチームの力を最大化するカギになるのは、「人間とはどのような存在か」という根本的な考え方(人間観)だと私は考えています。

私はこれまでさまざまなプロジェクトを率いてきた中で、以下の点を実感してきました。

  • 人は本来、成長や自己実現を志向する存在

  • メンバーの能力や可能性を信頼し、尊重することで大きく伸びる

  • 心理的安全性の高いチームは、結果として高い成果を生みやすい

このような人間中心の視点を持ちながら、短期的な成果にも繋げるべく、チームを運営していくことが、現代のプロマネに求められる姿勢なのです。


人間中心のマネジメントが果たす役割

1. 成長と自己実現を支援する

メンバーそれぞれが持つ強みや得意分野を活かし、一人ひとりの成長を後押しする。そうすることで、チーム全体のモチベーションや生産性が高まります。たとえば、

  • 新しい役割を任せ、挑戦してもらう

  • 必要な学習リソースを提供する

  • 定期的にフィードバックやコーチングを行う

こうした施策をとることで、メンバーは「自分の成長がプロジェクトに貢献している」と実感しやすくなるでしょう。

2. 共感的理解

単に「やるべきこと」を指示するのではなく、メンバーの立場や感情を理解しようと努める姿勢が大切です。メンバー自身も遠慮なく意見を言えると感じられれば、プロジェクトをより良くするアイデアや新しい発想が生まれやすくなります。

3. 自己一致(リーダーとしての誠実さ)

プロマネ自身が、言動に一貫性を持つことは信頼構築の要です。言っていることとやっていることが噛み合っていないと、チーム内に不満や不安を招きます。自分の考えを透明性高く伝え、メンバーへの敬意を行動で示すことが重要です。

4. 心理的安全性の確保

意見が言いにくい、ミスや失敗を責められる環境では、メンバーの積極性がそがれます。逆に、安心して試行錯誤や挑戦ができる雰囲気をつくると、驚くほど活性化したチームになります。

  • 受容:その人をありのまま受け止める

  • 共感:相手の思考や感情にできるだけ寄り添う

  • 真正性:リーダー自身が偽りなく行動する

これらを組み合わせて、心理的に安全な土台を整えることが、長期的なチーム力向上につながります。


ボス型マネジメントとの比較:その強みと限界

以上のように、「人間中心の考え方」を軸にしたマネジメントがチームの主体性や創造性を高め、長期的な視点ではとても有効です。しかし、プロジェクトによっては「早急な成果」が求められることもあるでしょう。そうした状況で、一方的な指示や命令に頼る「ボス型マネジメント」が有効な面があるのも事実です。

ボス型マネジメントが効果的な場面

  • 緊急性・危機管理
    例)大規模システム障害への対応など、即時の決断が必要なケース

  • 経験が乏しいチームの初動
    統率と型を示すことで、短期的には混乱を減らせる

  • 厳格なルールや安全性が重要な現場
    例)医療、航空、原子力など、逸脱のリスクが大きい領域

ボス型マネジメントの限界

  • メンバーの自主性・創造性を抑制する
    指示待ち思考に陥り、イノベーションを生み出しにくい

  • コミュニケーションが一方向になりやすい
    誤解や不満がたまりやすく、チームにネガティブな影響を与える

  • 長期的なチーム力や柔軟性の低下
    最終的には、組織の学習能力や成長余地を失いやすい


プロジェクト特性に応じたアプローチの最適化

私の著書でも強調しているように、どんなプロジェクトにも万能なマネジメント手法はありません。緊急対応が必要な段階では、ある程度トップダウンの決断力が求められますし、イノベーション重視の長期プロジェクトなら、メンバーの自主性と創造性を最大限に引き出す仕組みが必要になります。

  • 短期と長期の目標を俯瞰し、優先順位を検討する

  • どの局面で人間中心を徹底し、どの局面でトップダウン要素が必要かを柔軟に使い分ける

このバランスを見極めることこそが、現代のプロマネの醍醐味といえるでしょう。


まとめ

プロマネに必要なのは、まず「人間をどう見るか」という根本的な姿勢です。人は本来、自己実現や成長を求める存在であり、そこに寄り添い、サポートすることで大きな成果を生み出せる――これが私が長年の経験を通じて得た確信です。

一方で、すべてを「人間中心」に振り切るのではなく、プロジェクトの特性やステークホルダーのニーズに合わせて、必要に応じたリーダーシップスタイル(トップダウン要素含む)を取り入れることも無視できません。

  • 緊急時には迅速な判断が重要

  • 中長期的にはメンバーの主体性を最大化したい

このように、状況に合わせて最適なアプローチを選択することで、短期的な成果長期的なチーム力の向上の両立が可能になります。
また、状況に合わせた対応を機能させるには、プロマネとプロジェクトメンバーとの信頼関係構築が必須であり、根底にプロマネの人間観に対するプロジェクトメンバーの信頼が前提になります。


私・西島雅が著書の中で繰り返しお伝えしているのは、最終的に「人が成長してこそプロジェクトも成功する」という考え方です。もし、あなたがプロマネとして「人間観」に興味を持っていただけたなら、ぜひ一度、自分のチーム運営を振り返ってみてください。チームメンバーが安心して力を発揮できる環境づくりこそが、最大の武器になるはずです。


さらに詳しく知りたい方へ

人間中心のマネジメント理論や、ボス型マネジメントとの具体的な使い分け方法等については、私の著書
『プロジェクトマネージャーを支える心理学: ヒューマンスキルとメンタルタフネスの強化』
でより詳しく解説しています。

あなたのチームが生き生きと成長し、プロジェクトで大きな成果を上げるきっかけになれば幸いです。

西島雅

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