ニシイケバレイ通信 Vol.8
“三方よし”のシェアキッチン
ニシイケバレイの一角に佇む、昭和の木造アパートを思わせるレトロな建物。築50年を超えるこの
建物はかつて、「白百合荘」と呼ばれる全9戸の賃貸住宅でした。リノベーションを経て、2021年にこの建物の2階に誕生した、シェアキッチン「Attic(アティック)」。コンベクションオーブンをはじめとしたプロ用の厨房設備を整え、菓子製造許可と飲食店営業許可を取得。そして、“曜日指定で、自分のアトリエをもてる”をコンセプトにスタートしたこのシェアキッチンには、夢だったカフェ営業に挑戦してみたい!という方から、将来自分のお店をもちたい!という方まで、多様な利用者が集い、開業から1年ほどで、月曜から日曜まですべての予約枠がいっぱいとなり、2年目ともなると、ウェイティング枠を用意するまでになりました。
サービスとしてこだわったのは、「レンタルキッチン」ではなく「シェアキッチン」であること。つまり、“モノをレンタルする場所”ではなく、あくまでも“コミュニティをシェアする場所”であるということを、強く意識して運営しています。シェアキッチンに隣接するコワーキングスペースの会員さんをはじめ、ニシイケバレイに関係する人々が、単にお客さんとしてだけでなく、それぞれの知見やスキルを活かして、作り手たちのサポーターとなる。その応援を受けて成長していく作り手たちにはファンが生まれ、そしてそれが結果としてニシイケバレイの目指す、地域の顔の見える関係づくりに貢献してくれる。ニシイケバレイ⇔キッチンの利用者⇔利用者のファン…と、コミュニティの循環をもたらしてくれる、まさに“三方よし”のシェアキッチンは、ニシイケバレイに限らず、これからのまちづくりにおいて要となる舞台だと、日々感じています。実際に他地域でもシェアキッチンの立ち上げが始動しているので、今年はAtticの姉妹キッチンを増やしていきながら、地域を越えたコミュニティも育んでいけたら…と、わくわくしながら妄想を膨らませています!
食材もシェア!
パティシエが日本各地で出逢った食材を、色々なお店で使い倒してもらおう!の「食材祭シリーズ」。今年2月、岩手県北上市で育った雪下人参を使用した「人参祭」を開催。秋に収穫する人参を植えたまま雪を積もらせ待つことで、凍らないようにと自ら糖度を上げ
るため甘くなる人参。今回もシェアキッチン各店、わく別誂さんにご協力いただき美味しい料理やお菓子になって登場。この食材祭は、食材、産地、つくり手、そして生産者の抱える問題を、美味しく楽しみながら知ってもらいたいという思いで始めた小さな企画。しかし、魅力的な食材が多いこと多いこと。そこで、シェアキッチンで活躍する皆さんに「徳之島のじゃがいも使いませんか?」と聞いてみたら、快くOK。そこから拡がり、お菓子屋さんにもダメ元で聞くと…「使ってみます!」。予想外の返事に驚き、それぞれのお店で美味しいものが次々と出来上がっていく事に更に驚き。これをきっかけにキッチンの横の繋がりも出来たりして、調子に乗って酒粕、人参、柑橘…と、気が付けば6回目の開催。突然来る食材を受け入れてくれるキッチンの皆様、お客様、生産者の方、それぞれ同じ食材に向き合う楽しみを共有するため、これからも食材を追いかけたい。シェアキッチンでシェアできるものは、場所だけじゃない♪
a tiny step☆
シェアキッチン火曜日のa tiny step☆︎菊地原です。私がパンを作り始めたのは中3になる息子が離乳食を食べ始めた頃なので早いもので15年になります。最初は、発酵器もなかったので太陽光や温かいお風呂場で発酵させたりと、かわったパン作りをしていました。
家族に言わせるとその時のパンはあまり美味しくなかったようですね。私の食べて、食べての勢いに負けて食べていたと思います。結婚し毎日3食何かしら作りますので、頑張ればプロになれるのでは?と安易に考えて、料理する事を頑張ろうと密かに誓いました。それから子供が幼稚園に入ったタイミングでパン屋さんのお仕事と自宅でパン教室を始めました。いろんな分野の料理に興味があったので離乳食、幼児食の給食を作る仕事や、オリンピック選手村で食事の仕事もさせて頂きました。その時に私が学びたいと思う事を、私のやり方で必死に向き合いました。そして挑戦する先では私を助けてくれる仲間が必ず現れてくれます。私は美味しいパンをみなさんにお届けしたい、そして1番楽しみにしているのはニシイケバレイでたくさんの方にお会いできることです。これからもたくさんの笑
顔や美味しいに出会えますように、相方とともに皆様のお越しをお待ちしております。
インタビュー
今回はシェアキッチンAtticで隔週土曜日営業の「お菓子マツザワ」の店主髙橋理永さん。 周りの人に聞いた「マツザワさんてどんな人?」は、「見た感じと中身のギャップがある」「目 の奥に鋭さがある」「マイルールがありそう」「悩んでそう」(笑) そんなマツザワさんに聞きました!
ー何故Atticでお菓子やさんを?
「コミュニティを大事にしているし、ニシイケバレイ全体のイベントも純粋におもしろい。ニシイ ケバレイに集まる皆さんとの繋がりが楽しいので」
ー「お菓子マツザワ」の原点は?
「実家にいた頃は、食にこだわりがなく、特に意識してなかったのですが、一人暮らしをするよ うになって、節約していて。ある時、我慢出来ず、コンビニでスイーツ買ったら信じられないくら いおいしくて。この体験は私のターニングポイントです。お菓子マツザワもお買い物のついでに立 ち寄れる場所であったり、特別感はないけど毎日食べ続けられる素朴でやさしいお菓子を提供で きればと思っています。特別感がないという意味では気取らず『ちょいダサ』のイメージがしっく りくると感じています」
ーマツザワさんと言えば、特製プリンとロールケーキ。それにママ・マドレーヌ。名前の由来 は?
「これは名前の通り、マツザワママが作ってくれたオールドファッションの素朴なマドレーヌ。お菓子の名付けはほぼインスピレーションですが、見た人がちょっとくすってしちゃうような印象に残る名前にしたい。たまに自分でつけておいて恥ずかしくなるのですが」
ー自分がおいしいと思うお菓子を真摯に作っているマツザワさん。今後の展望ってなんだろう?
「音楽や絵とか誰かと一緒に何かする、そんな繋がれる場所を提供したい。自分が始めたことが 誰かの思い出やアクションのきっかけになる場所を作りたいな」
私のマツザワさん観は「魔女っ子感」です。カフェ営業日はマツザワさんの目の奥に何が見えるか覗いてみてください。