9年前に作った「やりたいことリスト」の達成度
皆さんは、「やりたいことリスト」を書いたことがあるだろうか。それは文字通り、やりたいことをリスト化したものである。
「やりたいことリスト」を書くと、実現の可能性が高まると言われている。「リスト化するだけで、どんどん達成できる」と豪語する人すらいる。本当に書くだけでクリアできるなら、やらなくては損だ。
Evernoteを見返していたら、9年前の2012年に書いた「やりたいことリスト」を見つけた。存在を忘れていたくらいなので、何を書いたか定かでない。ただそのとき、やりたいことをひねり出すのに苦労した覚えはある。やってみるとわかるが、「やりたいと思っていることをリストに書く」そんなシンプルなことが案外難しい。
誰しもやりたくないことは、すぐに思い浮かぶ。寒い朝に布団から出たくないとか、満員電車に乗りたくないとか。しかし「さあ、何でもいいからやりたいことを、思いつく限り書いてみて!」と言われても、多くて20個くらいで行き詰まるだろう。
2012年の当時、それでも時間を掛けて絞り出してみて、書き出した項目は107あった。いま見返してみて、達成できたのはそのうち35。達成率32%である。
では達成済みの項目には、何かしら傾向があっただろうか。傾向は確かにあった。「再会したい人」と「行きたい場所」の達成度が高かったのである。
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これは何となくわかる気がする。誰しも「過去に出会ったきりで、もう一度、会いたい」と思う人はいるだろう。小中高の仲良かった同級生はもとより、大学生のときバイトで数カ月だけ出会った人や、最初に入った会社でお世話になった上司、よく相談に乗ってもらっていた喫茶店のマスターなど。ふと思い返すだけで、数人の顔が目に浮かぶ。
再会したいと思っても多くの人は日常の雑務で時間がすぐに埋まるから、「まあ、いつか会いに行けばいいか」と先送りしてしまう。しかし(縁起でもないことを書くが)再会したい人も自分自身も、いつまでこの世に生があるかなどわからない。先送りするうち物理的に会えなくなれば、「無理しても時間を作るべきだった」と後悔するだろう。お互いこの世に存在はしていても、何かしらの理由で金輪際、連絡の取れなくなることだってあり得る。人はいとも簡単に世間の渦に巻き込まれ、その存在が見えなくなってしまうのだ。
そういった「再会したい人」をリストに書くと、「済」にしたい意識が働くのか予定を作り多くの人と再会できていた。
もう一つの「行きたい場所」について。行きたい場所のほとんどは、時間とお金を使えば行くことができる。それをわかっていながら行かないのは、単に保留にしているだけのことだ。リストに書き出して自分自身にプレッシャーが掛かったのか、「行きたい場所」も半分以上は行けていた。
では逆に、未達成のまま残っているものに傾向はあっただろうか。未達成の代表的なものは、多大な予算の掛かることだった。やりたいことのために支払える金額は、人によって異なる。地方であれば多くが一人一台の自家用車を購入しているので、車の資金分くらいなら出せるかもしれない。しかしそれ以上の予算となると、リストに書いてもなかなか実現しようという気にならないようだ。
その他に非現実的な目標も、未達成がほとんど。それを達成するための道筋がイメージできないから、そのための努力すらしていなかった。例えば「宇宙に行きたい」とリストに書いたとしても、「数千億あれば行けるよ」と言われたところで現実感がなさすぎる。「リストに書けば達成できる」といっても、やはり地に足のついたものでないといけない。
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いずれにしても「やりたいことリスト」は、書かないより書いたほうが良いと思う。その理由のひとつは、そうは言っても達成の可能性が高まるから。明文化したほうが、人は具体的な行動へ移しやすい。
もうひとつは、自分の考えを再認識できる点。2012年に書いたリストを読んでみると、大筋ではいま思っていることと大差なかった。つまり9年前と今とでは、だいたい似たような考え方をしているのだ。
人間は瞬間瞬間でころころ考えが変わるし、人の意見にも影響を受ける。そのため考えに芯がなくぶれているように感じるが(少なくともぼくは自分自身をブレブレだと思っている)、過去のやりたいことリストを眺めると「なんだ、本質は変わっていないな」と認識できる。一見、移り気に見える自分自身を客観視する機会としても、過去に書いたリストは機能する。
「やりたいことリスト」を書くのに、お金はかからない。最低限、必要なのは紙とペン。パソコンやスマホのメモ帳でも何ら問題ない。あとは1時間ほど考えて、やりたいことを一滴残らず絞りきるだけ。損なことは何もないので、作ってみることをおすすめする。
ぼくも2022年の新しい年を迎えたら、また書いてみようかなと思う。そしてまた9年後の2031年に、達成度はどれだけか確かめてみたい。