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いつか来る、写真フィルムの死

フィルムで撮られた写真を見ると、無条件に美しいと感じる自分がいる。それはなぜなのかと、ずっと疑問に思っていた。

業務用フジフイルムISO100が生産終了になったとつい最近知った。たしかそのフィルムは、とても優しい色をしていた。コントラストが弱く、彩度に主張がない。だから強い印象にはなりにくいのだけど、柔らかい雰囲気の写真になった。

そしてなんといっても、お財布に優しい。2年前に一度買ったことがあるが、そのときの価格で36枚撮り10本パックが4,580円だった。同じ年にコダックのPORTRA400も買っているが、それは自分の付けていた記録では5本パックで5,980円とある。価格を比べると、一本あたり半値以上に安い。だから業務用100は、撮りたいものを反射的に撮れる気軽さもあった。

そのフィルムが、生産終了したのである。残念に思っている写真家がたくさんいることは、想像にかたくない。

なぜ業務用100は、生産終了となってしまったのか。それは言うまでもなく、採算が取れないからだ。

フィルム写真の好きなひとは、TwitterやInstagramではフィルムカメラを使っている人をたくさんフォローしている。そのため、普段タイムラインを見ていると、「フィルム写真はとても盛り上がっていて、人気がある」と錯覚してしまうのだけど、現実にそんなことは全然ない。フィルム写真に囲まれた日常は、特殊な世界なのだ。

ではフィルムの現実とは、どのようなものか。フィルムの生産量を調べたら、富士フイルムの2018年の資料に行き当たった。その4ページ目に「カラーフィルムの世界総需要推移」という折れ線グラフがある。

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カラーフィルムの世界需要のピークは2000年となっている。そこから急坂を転げるように需要は減少し、10年後の2010年にはピーク時の1/100にまで減っている。さらに10年経った2020年現在の需要は、想像するだけで恐ろしい。

また、フィルム以前に、そもそもフィルムカメラ自体の数が減り続けている。価格コムの「一眼レフカメラ(フィルム) 製品一覧」を見ると、執筆時現在、掲載はライカの4機種だけである。(自分の知識不足で間違っていたら申し訳ないが)もはや現行で製造している一眼レフ・フィルムカメラは、これだけしかないのだ。

中古市場には膨大な数のフィルムカメラがあるけれど、製造していない限り、中古カメラはいつかこの世からなくなってしまう。日本が中長期的に人口減に向かうのが避けられないのと同じように、フィルムカメラの数が少なくなるのは避けられない事実だ。

この事実が、フィルム需要の急激な落ち込みを裏付けている。レコードがCDに置き換わったように、フィルムは減ることはあっても、この先ふえることは決してない。ハードの生産が終了しているのだから、フィルムの生産量を増やしてもしょうがないのである。

もちろん例に出したレコードは、今でも大勢のファンに支えられている。同じようにフィルムも、完全になくなってしまうことはないだろう。生産量が少なくなったとしても、存在そのものがこの世から消えることはないはずだ。

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