見出し画像

愛しのバベイオモイド神さま💕【8/13】 「西田少女地獄【3】」

前回【7/13】はこちら
初回【1/13】はこちら

■2004年:13歳

■2004年6月10日(雨)

 偉大なるバベイオモイド神様!!
 
 また九州です!!!!

 今度は11歳の女の子が、同級生の女の子を、カッターで殺したそうですね!!!!
 今度は11歳です!!!

 去年、バベイオモイド神様は、12歳の男の子に人殺しをさせましたが、こんどは11歳ですか!!!!!

 だんだん、お選びになる使徒の年れいが下がってきているような気がしますが、この調子でいけば来年は10歳ですか?

 今からなにが起きるのか、どきどきしています!!!
 

 なんだかその女の子の顔写真がインターネットで出回っているらしく、あたしも中学入学と同時にパパから買ってもらったパソコンで、いろいろと探し回ったのですが、けっきょく見つけることができませんでした。

 とってもかわいい子だそうですね。
 なんだかネットの世界ではアイドルみたいになっているらしくて。

 かわいい子って得ですね。
 なにをしても許されちゃうみたいな。

 

 で、その子はホームページを作っていたそうです。

 そのホームページも、今はもう見ることができませんが、なんだかすっごく頭のいい子だったとか。

 殺された同級生もホームページを作っていて、そこでのけい示板のやりとりで頭にきたその子……なんだかネットでは『ダラス』というあだながついていますが……がカッターで相手ののどを切ったそうです。

 その子は血まみれになりながらも、クラスにもどってきて、給食をたべようとしたそうじゃありませんか。

 すごい!!!!!
 なんだかくやしいほど、イイ人殺しです!!!!!!!
 
 
 テレビではダラスちゃんの犯行について、社会学者だの教育評論家だの精神科医だのなんだのが、いろいろとズレたコメントをしています。
 みんなアホばかりです。

 なんであの人たちには、『自分には知らないことがある』ってことすら、わからないのでしょうか?

 『心の闇』って何よ?
 まったく頭の悪い、バカゲスブタクソ野郎どもです。

 彼女が同級生を殺した理由なんて、あの連中に理解できるわけがありません。
 8歳のときからあなたに祈りをささげているあたしですら、あなたの御心は理解できないのですから。

 
 世間というのは何に対しても、『理由』を求めるのですね。
 たとえそれがバカな学者のクソボラであっても、寝言であっても、とりあえず世間は『理由』がほしいのです。

 まったくアホくさいったらありません。
 
 遺薔薇鬼屠死夫いばらきとしお様やダラスちゃんが何を考えていたか?

 そんなこと、あたしにもわかりません。 
 ただ、あたしにわかるのは、あなたが彼・彼女らに『そうさせた』ということだけです。
 
 だいたい、テレビに出てくるえらい学者先生たちは、2001年のアメリカのテロや、今もイラクで続いている戦争、日本人人質の首を切ったテロリストたちの事件と、遺薔薇鬼屠死夫様やダラスちゃんの事件は、まったくべつの問題だと考えているようです。

 テロや戦争で人を殺すのと、学校で同級生を殺すこと、これにいったい、何のちがいがあると言うのでしょう?
 

 ほんとうに世間の大人のバカさかげんには、あきれてしまいます。
 あたしにはわかります。

 バベイオモイド神様。

 この世の中で人間どもにひどいことや、むごいことをさせているのは、ぜんぶ、あなただということが。
 その理由まで、あたしは知ろうとは思いませんが。
 
 

 ところで……中学校は、小学校以上につまらないところです。

 たまにダラスちゃんやなんかの件で、バベイオモイド神様があたしを楽しませてくれないと、ほんとうに気がくるってしまいそうになります。

 人間って年をとればとるほど、バカになっていくものなのでしょうか?
 

 耐えられないのはクラスの女子たちです。
 みーんな、色ボケの下品なアバズレ以下の、腐ったゲスだらけです。
 

 彼女らが話題にするのは、セックスに関する話題だけ。
 何組の何々くんがイイとか、誰々はよくないとか、そんなことばっかり。

 気に入った男子の前ではへなへなとこびて猫なで声だして、ほんとうに気持ち悪いったらないです。

 ダラスちゃんがどんなつもりで同級生の首を切ったのかは知らないけれど、あたしにもうすこし勇気があって、自制心がなければ……

 あたしだってクラスの女子全員の首をカッターで切り落として、窓ぎわに観葉植物みたいに並べてやりたい気分です。
 

 あたしはよく、得に退屈な5時間目の授業中なんかに、妙な空想をして過ごします。
 

 たとえば担任の白井が授業をしているような、けだるい光が射し込む教室のドアを蹴破って、りょう銃を手にした梅川昭美が乱入してくるのです。
 

 梅川は1979年(あたしの生まれる12年前です)、大阪の三菱銀行に立てこもった銀行強盗です。
 梅川の話は、地ごくに行く前の、おばあちゃんから聞きました。

  
 あたしにしてみれば……遺薔薇屠鬼死夫様の次にあたるスーパースターが、梅川です。
 
 あたしは梅川に興味を持って、図書館に出かけていっては、当時の新聞や梅川に関する本をたくさん読みました。
 インターネットでも調べました。
 
 教室に飛び込んできた梅川は、アフロヘアに、黒い帽子に、黒いスーツ。

 教室に乱入してくるなり、担任の白井を散弾銃でふっとばします。
 黒板に白井の脳みそが飛び散るのです。

 なんてすばらしい眺め!!!
 

「ようしオマエラ、おとなしゅうせいよ。わしの言うことを聞いたら誰も殺さん」

 梅川が叫びます。
 
 クラスメイトたちはみんな真っ青になって震え上がります。

 いつもでかい面をしているラグビー部の吉川なんか、実は根性がなさそうなので、それだけでビビッてしょんべん垂れ流すかも知れません。

 梅川はあたしたち生徒全員に、机や椅子で窓や入口にバリケードを築かせたあと、全員にすっぱだかになるように命じます。
 

 多分それを拒否できる勇気のあるやつなんて、誰もいないでしょう。
 
 クラスでいちばんの美人の(と自分で思っている)伊東も、男子の中でいちばんモテる(と自分で思っている)大石も、サッカー部で人気のある田中も、学年一おっぱいの大きい坂田も、みんなすっぱだかです。

 もちろんあたしもすっぱだかになります。

 あたしの胸はまだぺったんこで、お尻にもぜんぜん肉がついていません。
 そんな子どもっぽい身体を、みんなに見られるのは恥ずかしいですけども、まあみんなすっぱだかなのです。

 あたしは恥ずかしさよりも、何か別の感情で胸をどきどきさせながら、すべてを脱ぎます。パンツまで。
 

 クラスの全員がすっぱだかになると、梅川は女子を全員窓際に並べます。

 警察が来たときにバリケードにするためです。
 みんなべそをかきながら窓辺に並びますが、あたしは梅川のことが気になって仕方ありません。

 あたしたち女子の背後では、クラスで一番図体がでかいくせに真っ先にしょんべんもらしたラグビー部の吉川が、梅川にりょう銃で脅されながら、白井の死体のをカッターで切り取るように強要されています。

 吉川はりょう銃の銃口を頭につきつけられて、泣きながら、さらにおしっこうんこをたれ流しながら、白井の死体から耳を切り取っています。

 そこで。あたしはものすごく興奮して、おしっこに行きたくなります。
 

「すみません」

 あたしは梅川に声を掛けます。

「なんや」

 梅川があたしにりょう銃を向けます。

「おしっこがしたいんですけど」

 あたしは梅川に言います。

「ほな、ここでせえ。わしの見ている前でせえ」
 

 あたしは梅川のりょう銃の前まで行くと、梅川の真正面を向いて、その場にしゃがみ込みます。

 そして、梅川に真正面から見られながら……そして全裸のクラスメイト全員に見られながら……

 床にしゃーっ…………とおしっこをします。
 
 
 そんなことを考えていると、45分の退屈な授業が、あっという間に終わります。
 

 PS:
 終わるころには、あたしはいつもすこし、ぬれています。


【9/13】はこちら


いいなと思ったら応援しよう!