愛しのバベイオモイド神さま💕【7/13】 「西田少女地獄【3】」
■2003年:12歳
■2003年7月4日(くもり)
偉大なるバベイオモイド神様。
きのう、おばあちゃんが死にました。
84才でした。
あたしが学校に行っているあいだに、おばあちゃんは部屋で昼寝をしていました。
いつもだったら夕方には起きてくるおばあちゃんが起きてこないので、ママが起こしに行ったら、おばあちゃんはもう死んでいたそうです。
のういっけつだったそうです。
おばあちゃんはそのままきゅう急車で病院にはこばれました。
死んでいるのに救急車に乗せてどうするんだろう、と思いますけど、とにかくおばあちゃんは家で死んだので、病院で亡くなった人以外は、“変死”あつかいになるということでした。
そんなわけであたしが学校から帰ると、おばあちゃんが死んだことを聞かされ、わけがわからないうちに病院に連れて行かれました。
あたしは、生まれてはじめて、死体を見ました。
おばあちゃんの死体は、まるで眠っているようにしか見えませんでした。
おばあちゃんはよく昼寝をしていたので、あたしにしてみれば、それはどうしても『昼寝をしているおばあちゃん』にしか見えないのです。
なんだか、ひょうし抜けしました。
よく見ると、おばあちゃんの鼻の穴には、なにか綿のようなものがつめこまれていて、あたしは思わずふきだしそうになったけど、ひっしでこらえました。
あんなふうに綿をつめこんでおかないと、なにかが出てくるのでしょうか?
あたしはものすごくきょうみがありましたが、なんだかその場のふんいきが、そんなしつもんをするかんじではなかったので、だれにも聞きませんでした。
パパも、ママも泣いていました。
パパは自分のお母さんが死んだのだから、泣くのはしょうがないとしても、ママまで泣いているのは、ちょっと意外でした。
なぜなら、ママとおばあちゃんは、あんまりなかが良くなかったからです。
おばああちゃんの、関西弁のしゃべりがげひんだと、ママはいつもぐちをこぼしていました。
おばあちゃんのことで、パパとママがけんかすることも、しょっちゅうだったようです。
でも、いざおばあちゃんが死んだら、ママは泣いている。
ほんとうに泣いてるの?
とあたしは思いました。
せいせいしてるくせに、なんで泣いてみせるんだろう、と思わずにおれませんでした。
あたし?
あたしはというと、ぜんぜん悲しくありませんでした。
おばあちゃんのことは好きだったけれども、おばあちゃんが死んでも、ぜんぜん悲しくないのは、へんでしょうか?
パパもママも泣いているので、なんだか自分も泣かなきゃ、と思い、いろいろと悲しくなるようなことを考えました。
元気だったころのおばあちゃんと、近所のえん日に遊びにいったことや、いろんなお話をしてくれたこと、ふたりでうちでかっている、犬のゴン太をさんぽさせたことなどなど………
いろいろかんがえて、なんとかなみだをしぼり出そうとしました。
でもいっこうになみだは出てきませんし、悲しくもなりません。
仕方ないので、あたしはあきらめて、べつのことを考えはじめました。
だいぶ前に、おばあちゃんがしてくれた、地ごくの話です。
たしか、生きているときに悪いことをした人は地ごくに行って、良いことをしてきた人はごく楽に行く。
それで、どっちに行けるかは、えんま大王さまが決める。
悪いひとは地ごくでもウソをつくので、えんま大王に大きなペンチで舌をひっこぬかれる。
その後、悪い人たちは、血の池や針の山や、ノコギリでばらばらにされたりして、えいえんに苦しめられる。
たしかおばあちゃんはそんなことを言っていました。
おばあちゃんは、あたしにとってとてもいいおばあちゃんでしたが、ママにはとってもイジワルでした。
いわゆるヨメシュウトメというやつです。
おばあちゃんはいつもママがいやがる関西弁で、ママがいやがるような話ばっかりあたしに聞かせて(たとばそれは地ごくの話みたいなものです)、あからさまにママにいやがらせをしていました。
そんなおばあちゃんは、ごく楽に行けるのでしょうか?
おばあちゃんのことですし、たぶんえんま大王さまの前で、本当のことを話すはずがありません。
いまごろおばあちゃんは、えんま大王に舌をぬかれているのかなあ?
それを思うとあたしはまた、ふき出しそうになるのを、ひっしでこらえなければいけませんでした。
それはそうと、バベイオモイド神様、このまえ九州であった事件は、すごかったですね。
小さな男の子を、あたしと同じ年の12才の男の子が殺した事件です。
あの子が遺薔薇鬼屠死夫様のファンだったのかどうかはわかりませんし、いまのところ新聞を読んでも、そんなはなしはのっていません。
でも、人殺しがあたしと同じ年だなんてすごい。
あたしは、自分はまだまだこどもで、とてもあたしに人殺しなんて、むりだと思っていました。
せめて遺薔薇鬼屠死夫様とおなじ年くらいにないとむりなんじゃないかなあ……って。
あ、ごかいされてはいけないので、いちおう書いておきます。
あたし自身は、じぶんで人殺しをしようとは、おもいません。
あたし、あんまり体育もとくいじゃないし、ちびだし、だいたいいくじがないので、そんなことはとてもむりです。
だからバベイオモイド神様、今回、九州のあたしとおない年の男の子に人殺しをさせたみたいに、だれかにまた悪いことをさせようとなさるなら、どうかべつの子をえらんでいただけますでしょうか?
あたしは、バベイオモイド神様が、人々にさせる様々な悪いことを見ているだけで、じゅうぶんです。
ほんとうに毎日たいくつでたいくつで仕方がなくて、いっそのこと学校にたくままもるさんが飛びこんできて、先生(とくにたん任の大久保)やクラスメイト(とくに女子では飯岡と島崎と三好、男子ではバカできたない大瀬)なんかを、さし殺してくれないかなあ、と思わない日はありませんが、あたしには新聞の三面記事を読むという楽しみがあります。
バベイオモイド神様が、人々にさせる悪いことの数々には、いつもほんとうにわくわくして、ああ、やっぱりいきていてよかったなあ、と思います。
ところで、遺薔薇屠鬼死夫様が、いりょう少年から院退院するは、あと2年くらい先だそうです。
ということは、あたしが14才のときなんですね!!
なんてすてきなんでしょう!
PS:
せんげつ、しょちょうがありました。
これから毎月、あたしは血を流すことになるそうです。
いやだなあ。
ママはお赤飯をたきました。
いったい、なにがめでたいのやら。
PSのPS:
あたしが10才のころからつづけていた、ベッドの中でパジャマのズボンに手を入れて、おしっこのでるあたりをいじるひみつの遊びですが、あれは“マスターベーション”というそうで、誰でもすることだそうです。
学校の性教育で、おしえてもらいました。
あたしはなんだか、ひょうしぬけしてしまいました。
あんなことをして遊んでいるのは、あたしだけだと思っていたからです。
「みなさんの年ごろでは誰でもすることですよ」と先生は言いました。
ってことは、それを2年も前からやってるあたしは、やっぱり人よりすけべえなんだろうか?
あ、あの貧血みたいになって、いしきがとんで、死にそうになるあれですが、あれは「いく」ということだそうです。
いっつも、そんなことばっかりしゃべっているクラスの女子、島崎と三好が、そんなことを話していたことを聞いたのです。
ふたりはまだ、「いった」ことはないそうです。
あたしはなんだか、いみもなく、勝った気がしました。
これはゆうえつ感、というやつなのでしょうか?
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