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フ ァ ッ ク ・ マ シ ー ン 【4/8】

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 昔から、わたしはいろんな男とセックスしまくっている。

 人と比べて“しまくっている”のかどうかはわからないが、わたしは自分でもト●タさんが言うように“ハッテン家”だと思う。

 はじめてセックスしたのが16歳の時で、相手は吹奏楽部の部活の先輩と。
 ……とか言うと新人AV女優のデビュー作品の冒頭インタビューみたいだけど、ほんとうなんだから仕方がない。

 それから来るもの拒まず去るもの追わずで高校時代から大学時代と、下は14歳から上は65歳まで、いろんな男とヤってきた……クラスメイトに近所のガキ、男性教師に大学入ってからは講師や教授、バイト先の先輩や後輩、大学のアホ男ども、アホ男どもの友達たちを喰いまくってきた。

 で、まあ社会人になってからは同僚、先輩、後輩、得意先から出入り業者の男まで手当たり次第に、誘われたら食らいついて喰って喰って喰いまくってきたけど……なぜかわたしは普段のふるまいや雰囲気が地味で目立たないせいか、あまりこうしたセックス極道じみた所業を咎められたりあげつらわれたりすることはない。

 男たちの間ではそれなりに噂を共有されてそうなもんで、その噂が女の子たちにも伝わっていてよさそうなもんだけど……
 なんでだろうね? そんなに噂になっていないようだ。


『なんかさ、キミって……ヤバいよね……』

 会社一のチャラ男既婚者・オーツキとヤったときに、奴がそう一言漏らした。
 なんで? なにがヤバいの?

 一発目から、わたしが上になって思いっきりお馬さん体位で腰振りまくったから?
 で、情けない声出してあっという間にイっちゃったあんたのおち●ぽ、いきなりしゃぶりまくったから?

 ほぼ半泣きのあんたを無理やり勃たせて、また上からずぶっ、と跨ったから?

 それでもあんたがまた“らめええいっちゃううううううううっっ!!!”って女の子みたいに泣き叫んでとっとイっちゃったんで、こんどはアナルに指突っ込んだから?

 すると、“いやあああああらあめえええええええっ!”ってイっちゃっておしっこ漏らしちゃったから?

 ま、どーでもいいけどさ。

 だから社会人になってからもいっぱいセックスしてるけど、同じ男と2回目はないの。
 やっぱ避けられてるよね? ……わたし。

「そーんなにオトコ日照りなんやったら、どないやミナミちゃん、あいつ?」

 と社長が店の奥を指さした。

「え?」

 ジョッキから顔を上げて、ちょっとビビる。
 てのも、店にママさんとわたしたち4人以外、人がいるなんてまったく気づかなかったから。

「どう? ミナミちゃん……なかなかイイ男じゃな~い?」

 とジャバさん。

 その男は店の奥、カウンターの隅っこで一人ビールを飲んでいた。
 年齢はたぶんわたしと同じくらい。
 グレーのスーツに黒いコートを羽織り、紺のネクタイを締めている。
 体型はスリムで、身長はわたしより少し高いくらい。

「ミナミちゃんはちょっと変わってるから、あーいうのでもOK?」

 とト●タさん。

 顔は……うーん……微妙
 ブサイクでもハンサムでもない……というか、つるっとした、まるで特徴のない顔。
 清潔感はあるけど、なんか無表情で暗くて、話してもつまらなそうだった。

「そんなもん、ミナミちゃんが男で選り好みするかいな! 竿が生えとったら誰でもウエルカムやろ? なあミナミちゃん!」

「社長うるさい」

 じっくりその男を観察していると、男がこちらに視線を向けた。
 で、その黒目がなんか真っ黒で……へんな話だけど、なんか……人間じゃないように見えたんだよね……

 と、社長がわたしの肩に馴れ馴れしく手を置いて言う。

「気ぃつけやあ……いくらミナミちゃんでも、あれは手ごわいで……“セックスマシーン”やからなあ……」

「セックスマシーン?」

 なんだっけ? 大学時代、音楽に詳しい浅黒い顔のヤリチンから聞いたような気がするフレーズだ。歌のタイトルだっけ?

「そーよ、ミナミちゃん。あいつ、マシーンよ」

 とジャバさん。

「そうだよ。うちの作ってるクルマより馬力あるってよ」

 と、ト●タさん。

「……マシーン? ……機械?」
 
 あの男、機械? ……まさか、ロボットだっての? 
 ターミネーターみたいな?
 さすがこのアル中三匹、言うことがヤバい。

 わたしは3人から離れて、男のほうに向かった。

「……あ、ミナミちゃん、行くんか?」

「気をつけてね~……」

「どうなるか楽しみだね」

 酒こじき3匹の声を背に、わたしはその男に近づいていった。


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