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時代劇キャラのエロ属性について【中編】
鬼畜インチキ時代官能小説『手籠め侍』箸休め企画第2段。
時代劇に登場しがちな女性キャラクターたちは、なぜ時代を超えて今日に暮らす我々の浅はかな下半身に訴えかける普遍的なエロ性を持つのかを考えるこの企画。
↓いまいち不評のようだが【前編】はこちら。
さて前回は「町娘」と「武家の妻」について考えてみたのだが、やはり時代劇といえばこれを抜きには語れない。
■花魁
花魁はつまり、いわゆる性を売る職業の女性たちだ。
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まあ名取裕子主演・五社英雄監督の「吉原炎上」は有名だけども実は明治末期の話なので「時代劇」と言えるかどうかは微妙だが、とにかく女優さんは花魁(遊女)の役をやりたがる傾向がある。
近年では成人式で花魁風の晴れ着を着る新成人もいる。
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まあいろいろと異論はあろうが、遊女のなかでもトップ中のトップスターだった吉原の花魁は、時代を超えて女性の憧れの的だ。
華やかな花魁の姿などは浮世絵などのの主流の題材になったもので、そうした絵が出回ることで、遊女たちの髪型やファッションは一般の町民ギャルたちはまだしも、(どんどんエッジを落とした形で、ではあるが)武家の奥様方にも流行していったらしい。
とまあセックスというメインの仕事以外の分野においても、遊女たちの頂点に君臨したような花魁たちは、子どもの頃から三味線や琴などの楽器や書道、囲碁・将棋から古典、和歌などさまざまな教養を仕込まれたというから、江戸中の男どもはもちろん、
「新しい花魁チョーイケてるよね!!」
と江戸女子たちのリスペクトを集めていたことは想像に難くない。
「花魁」をテーマにした時代劇では、生き馬の目を抜くような激しい競争社会における花街において、花魁を目指して繰り広げらる女同士の熾烈な戦いなどが描かれる。
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けっこうドロドロした世界だ。
がっつりと情念系。
男に性を売る女性たちが主人公の物語において、こうした女同士の情念のぶつかり合いが描かれる(とは言っても作ってるのはおっさんで、いかにもおっさんフィルターが掛かってはいるのだが)点において、それは女性の共感を生むのかもしれない。
女性はアボカドと情念が好き。
ただ、花魁という存在はその同時代にあっても男どもにとって、高嶺中の高嶺の花だった。
はっきり言って、よほどの太い客でないと花魁とは懇ろになれない。
庶民の男どもの間ではどういう扱いだったのだろうか。
「けっ! 上級町民様の専属オナホがよ!!!」
と、現代のチンカスくさいミソジニ系男どものように、コンプレックスにまみれてディスっていたのだろうか。
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それとも、彼女らを描いた浮世画を見ながらオナニーをするのも憚られるような、ともすればチンコが萎えてしまうくらいの存在だったのだろうか。
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これを現代に置き換えてみるとどうなるか。
花魁は現代のどんな女性属性を連想させるのだろうか。
ナンバーワンキャバ嬢?
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いや、たしかにこういうトップクラスのお姉さん方と遊ぼうと思ったら相当お金がいることに違いはないのだが、どうもこの底辺国家に暮らす庶民である我々には、いまいち深夜ドラマや極道RPGの世界でしか、江戸時代の花魁クラスのトップ嬢、というのはイメージしにくい。
それになにか、根本的に違うような気もする。
たとえば一部の政治家やら官僚などの接待に登場するような「VIP専用のコールガール」、となると、
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もはや「女子高生殺し屋」くらいリアリティがない。
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何なんだろうか。
バーホーベンの「ショーガール(’95)」みたいな世界なんだろうか。
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ますます庶民的リアリティがない!!!!!!!
ただまあ、手を触れるなんて滅相もない、ただただ憧れの花魁を応援し続けたい、という、報われることすら求めずひたすらお金を使ってばかりの大旦那さんなどはいたと思われるので、その感覚は少し、現代におけるアイドルの推し活に近いものがあったのかも知れない。
まあお金持ちには程遠いが……消費額こそが愛情の量を示すという点において……
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そうなるとちょっとエロとは分けて考える必要があるのかも知れない。
いずれにしてもちょっと(個人的には)リアリズムを感じない世界なのではあるが……
■遊女
次に「遊女(ゆうじょ・あそびめ)」について考えたい。
広義には「花魁」も「遊女」の一つなのだが、トップエリートの花魁とはちがってランクは落ちるが庶民も親しみを持てる、いわゆるお仕事系女子のことだ。
「女郎」ともいう。
吉原でなくとも、全国のいたる所にあった遊郭あるいはリーズナブルな岡場所で働いてた女性たちのことを言う。
こういうところで
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こんなふうに、
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こんな感じでお仕事をしていた女性たちを指す。
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かつて「特選小説」だったか、そのあたりの官能小説雑誌で、ある遊女をヒロインにした短編作品を読んだことがある。
失礼ながら、作者もタイトルも忘れてしまった。
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ヒロインは深川のちょっと年増だが鉄火肌で威勢のいい女郎。
ある日、初見だが人の好さそうなお侍がお客としてやってくる。
その侍の求めたのは、「ちくび拓」を取らしてくれてという奇怪なもの。
その侍、単なる変態かと思ったらセックスにはめっぽう強くテクニシャンで、さすが海千山千の姐さんもヒイヒイ言わされるが、ここでヤられる一方では深川女郎の名折れ、とばかりに熟練の手練で侍にもヒイヒイ言わせる。
ことが終わると侍は女郎の乳房にむしゃぶりつき、いきなり子ども言葉で「母上、わたしは明日が怖くて怖くて仕方のうございます……わたしはほんとは意気地なしなのです……」と泣きじゃくり始める。
最初は奇異に思った女郎だが、その侍の姿に、強気の仮面に隠した自分の素顔を見たような気がして、侍をやさしく慰める。
そして侍に、自らの「ちくび拓」を取らせてやる。
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侍の名を聞いてみたが、「ちくび三十郎」と人を食った偽名を名乗るだけだった。
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翌朝、女郎が昨夜あったことを女郎仲間に面白おかしくしゃべっていると、江戸の町がえらく騒がしい。
なんと昨晩、赤穂浪士47人が吉良邸に討ち入りし、吉良上野介を討ち取ったというではないか。
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江戸庶民の声援を受けながら両国橋を凱旋する義士たちの先頭を歩いている侍に目をやると…………あっ! あれは“ちくび拓”の侍じゃないか!!!
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ちくび侍の正体は、大石内蔵助だったのだ。
女郎は自分との一夜とちくび拓が、意気地なしのあのお侍に勇気を与えたんだ、きっとそうだよ! と思いつつ、
“よっ! ちくび三十郎っ!”
と、大石内蔵助に声を掛ける。
その声に気づいた大石は、にっこりとほほ笑むのだった……
……なかなかいい話だと思いません?
女郎と言えば、個人的に思い出すのはこの短編小説だ。
時代劇の女郎のイメージといえば、
・ぶっきらぼうだが実は気立てがいい
・エロいけど幸薄い、だからなおさらエロい
・どんなキモメンにでも(お金次第で)優しくしてくれる
などなど、男にとって都合のよい要素が凝縮されている。
でまあ、ようするにこの属性を現代に置き換えると風の職業の女性たちになるわけだが、案外、本来ファンタジーであるはずのポルノコンテンツにおいて、現代でも風俗嬢というのはあまり題材にならないようで案外なっており、AVなどでも人気が高い。
以前、当noteで行ったこういう↓考察においても、
某有名AV動画配信サイトで検索した結果、「ソープ嬢」を取り扱った動画の件数は99,403件とけっこう人気であった。
ちなみに2024年3月1日現在、改めて検索してみると100,339件と、大台を越している。
時代劇におけるいわゆる遊女・女郎に現代の私どもが何を重ね合わしているのかは明白だろう。
■夜鷹
遊郭などに属さず、路上でセックスを売る……この不況下の令和において再び人気となっている(らしい)職業の女性を、かつては夜鷹と呼んだ。
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これ、不思議なのだが英語にも夜鷹=Night hawksという表現がある。
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もっとも英語の “Night hawks” は“夜中にうろうろする人”という街娼なども含めた宵っ張りの人々全般を指すのだが、古くから使われていた「夜鷹」は翻訳から生まれた言葉であるわけないので、この一致は奇妙だ。
とまあ、そんな話はどうでもいい。
夜鷹は料金的にも地位的にも最下層にある娼婦たちで、遊郭や岡場所に居場所を失ったような人もいれば、何らかの事情でリーガルに商売できない女性が丸めた御座を抱えてアウトドアでセックスを売った。
料金もめちゃくちゃ安く、だいたい二十四文が相場。
これを現代のお金に換算するとだいたい350円くらいで、当時でどれくらいの金額だったかと言えば、だいたいそば一杯の代金くらいだった、というから驚く。
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というと年増が多いのかと思えば、確かに60歳を超える超ベテランもザラではなかったが、30代~40代が中心を占め、若いのでは15歳の夜鷹もいたらしい。
基本的に行為は河原の小屋などで行われるか、渡し船の中、最悪の場合は地面に御座を敷いて傘を立てて行為に及んだというから、やはりかなりアウトドア系だ。
こういう職業の人はいまだに多く、私が以前暮らしていた大阪・天王寺でも(キューズモールもルシアスもてんしばも無かったころ)商店街の店がすべて閉まった深夜ともなれば、仕事帰りに疲れ切って歩いていると、
「オニサン、アソブ?」
と片言の日本語で声を掛けられたものだ。
わたくしはビジネスには関わらなかったが、彼女らの仕事場はラブホなどではなく、そのへんの駐車場の端の闇の中らへんだったと聞く。
ある日、連日のハードワークにほぼリビングデッド状態で歩いていたわたしに、
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「オニイサン、イイオトコネ、コノミヨ」
と、40がらみのふっくらしたお姉さんが声を掛けてくれた。
疲れ切り、自己評価もマイナスだったあの日、あまり褒められることのない私はいくら商売の口上とはいえ、純粋に嬉しかったのを覚えている。
同時に、思い出すたびに少し寂しい気持ちにもなる。
私は一銭も払わず、彼女は何も提供しなかったのだが、これもまた搾取の一種なのだろう。
花魁も一般遊女も夜鷹も、搾取される側であり、これらを奇妙なロマンチシズムをもって「彼女らには彼女らのプロとしてのプライドがあって云々」語る言説はいかにも男性主眼的、というか石原慎太郎的、というか宮台真司的、というか昭和の体育会的でウザい。
一般的に男連中が彼女らに対してまがいもののリスペクトを表明するのは、ようは彼女らを見下しているからで、その感傷は蔑視からくる欲情に裏付けられている。
などとちょっと話がめんどくさくなりそうなので、このへんで筆を置こう。
引き続き、『手籠め侍』をお楽しみください!