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フ ァ ッ ク ・ マ シ ー ン 【最終話】

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 これまたよくある話だけど、目が覚めるとわたしの部屋のベッドだった。

 スマホの目覚ましアラームで目が覚める。
 あ……夢かあ……めちゃくちゃタマってたのかなあ、わたし……とか思って、ベッドから出ようとした。

「うっ……」

 なに?
 やべえ。
 腰から下が死んでるみたい。

「あっ……ううっ……」

 とてもじゃないけど、ベッドから起き上がれない。
 いやマジで起き上がれねえ!

「ってかっ……や、やっぱり……」

 セックスマシーン……夢じゃなかったんだ。

 えーーーーっと……あれは確か、何年前だっけ?
 とーーーーんでもない遅漏野郎とセックスしたあくる日のことを思い出した。
 
「く、くそっ……ま、まじか……」

 その遅漏男はセックスマシーンではなく、なんか爬虫類みたい顔した、ちょっと偏執狂入った男だった。
 カクカクカクカク、昨日みたいに何回も何回も何回も体位変えてなんとまあピストンが45分。

 わたしも「もう無理っ!」とか「許してっ!」とか言いながら喘いでみせたけど、すると男は喜んで、

“どう? どうだ? いい? いいか? いいのんか?”

 とかなんとかかんとか、ヤってる間中ウザいくらいうるさかった……それで45分。
 喘ぐのも何か言ってやるものさすがに疲れてきて、途中で寝た


 あのときのあくる日は……なかが擦れてズキズキ痛かったしヘトヘトだったけど……なんとか起きて、重たい身体を引きずりながら会社に行くことができた。

 やっぱ“昨晩、セックスしすぎました”で会社休むのってアウトじゃん?
 なんか、社会人として。
 でも、今朝は……

「あ、あかん……む、無理や…………」

 あ、言い忘れてたけど、わたし子どもの頃、関西だったから。
 どうでもいいか。
 そしてスマホに手を伸ばして、上司に“今日はカゼ気味で休みます”と連絡した。

「え? 大丈夫? ちゃんと温かくして寝てる? 最近顔色悪かったし、働きすぎ? ゆっくり寝ててね? それから……」

 上司、気が利くイイ奴だけど、さすがに今日はちょっとウザい。

「あああああ! うるせえ! カゼじゃねえよ! ゆうべヤりまくって腰が立たねえんだよ!!!」

 と叫びたいとこだったが、ぐっと堪えた。

 その日は翌の月曜が祝日の金曜日だったから、一日ぐっすり寝て、週末に銭湯行って、カイロプラクティス行って、それでもイマイチ効かなかったから鍼灸まで行くとなんとか身体が思うように動くようになった。

 

 ……そっからはさすがに……あの角打ちにはしばらく行かなかった。


 さすがのわたしも、あの男にもう一度会うのは怖かったし……
 それに、ジャバさん、ト●タさん、社長に顔を合わせるのもなんかイヤだった。
 
“あのあとミナミちゃん、メッタクソにヤられちゃったんだよね!!!”

 とか笑いもの&酒のツマミにされるのわかってるからさ……

 でまあ、あの夜から1週間くらいで身体も腰も膣も癒えたので、職場に宅急便を集荷にくる二十歳前後の男の子を誘ってった。
 たっぷりこってりねっとりとフェラして、半泣きにしてからあたしが上の、お馬さんスタイル。
 
 “ごめんっ! ごめんなさいお姉さんっっ! もう出ないっすっ! 許してっ!”

 って最後には全泣きしてたので、わたしもかなり留飲を下げて、自信も回復した。

 でまあ……あの夜から一か月後。
 それから数人のザコ男とヤった。自分でも結構なペースだったと思う。

 なんとなく普段のわたし、あの角打ちに堂々と澄ました顔して入っていける“ミナミちゃん”に戻れた気がしたので、仕事終わりにあの角打ちに行ってみることにした。

「えっ……」

 店は閉まっていた。
 というか……潰れていた。

 湿られたガラス戸に張り紙があって、あのママさんが書いたんであろう達筆で

「閉店のお知らせ
 長い間ご愛顧いただきまことにありがとうございました。
 当店は1月末日をもちまして(わたしが最後に訪れた、あくる日だった)閉店いたしました。
 開店以来●●年……
」うんぬん。

 まあ、よく行ってた店だし、馴染みの店がなくなるのは寂しい。
 馴染みのジャバさんやト●タさん、それに社長はどうでもいいとして……
 ママさんお歳だったから、どうかしたのかな……

 気になってガラスに顔をくっつけ、暗い店内を覗いてみた。
 覗いて何か見えるか、期待してたわけでもないけど……

「ん?」

 店内は真っ暗だ。
 暗すぎて、最初はよく見えなかった。
 でも、誰かいる。というか……
 “なにかある”というべきか……

「え、えっ……」

 もっと顔を埃っぽいガラスにくっつける。

「…………う、うそっ……」

 店の奥の……一か月前、あの男を見かけたのと同じカウンターの場所に……あの男がいた。

 カウンターに肘をついて、じっと立っている。
 いや、“じっと立っている”というか、まるで闇の中に見えるカウンターや壁や片づけられていないお酒の瓶と同じように、そこに“ある

 男は目を開けていた。
 暗いなかであの真っ黒の目は、周りの闇さえ吸い込んでいるように見えた。
 そして男は閉ざされた店の、働きと役目を終えたあらゆるもの、もの、ものたちと一緒に……静止している。

「…………………………ひっ………………」

 わたしはそのまま踵を返して、店から離れて駆け出した。

 もちろんだけど、あれから半年……あの店の前を通ってはいない。
 
 でももう一駅歩いたところに新しい角打ちを見つけて……とりあえずそこで声を掛けてきた一人目のヤンキー入った若い男とヤった。

 幸い、ふつうの人間で……お馬さんスタイルのわたしの下で、半泣きで白目剥いてたけど。

【了】

 もう一度最初から読みたいというタマってる方は ↓ こちら。


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