見出し画像

Alain Querciaさんインタビュー「道で出会うお互いの中にベストがある」(前編)

2024年5月から8月までの約3ヶ月間
芸術村で滞在制作をしたフランスの彫刻家 Alain Quercia(アラン・ケルシア)さん。
滞在を終え、フランスに戻ったAlainさんに
お手紙形式でインタビューに答えていただきました。

西会津で“real Japan”に触れたとよく話していたAlainさんは
今回の滞在で何を感じたのでしょうか..!

前編・後編にわけてお届けします。


他人を気遣うことは自分自身を気遣うこと─滞在を経て

Q1. I imagine that you wanted to explore the relationship between nature and humans through this stay. Did you gain any new insights or deepen your understanding during this stay?(About that or anything else)
──あなたは今回の滞在を通して、自然と人間の関係性を探求したいと考えていたと思います。そのことに関して(あるいはそれ以外のことでも)何か新しい気づきや、深まった考えはありますか?

Indeed, I was very curious to discover the relationship of each Japanese person with nature and above all with their fellow man, whoever he may be, stranger, neighbour, relative etc.... I should point out here that otherness has always been at the heart of my project as an artist.
──私は、一人ひとりの日本人と自然との関係、そして何よりも、見知らぬ人や隣人、親戚など、同胞との関係を知ることにとても興味がありました。ここで指摘しておきたいのは、私のアーティストとしてのプロジェクトの中心には常に“他者性”があったということです。

I was not disappointed, since I was able to observe a very strong relationship with nature, of the transcendent order, but also an equivalent relationship with one's neighbour.
Little by little, I came to imagine that in Japan, caring for another person was tantamount to caring for the divinity within. Indeed, as in certain Western pantheistic theories, the divine here encompasses everything. I concluded, with all the inverted commas that implies, that taking care of another was also taking care of oneself.
This very personal pseudo-theory needs more thought, but I admit that I like it and that it could confirm some of my intuitions on the subject!
──私は失望することはありませんでした。なぜなら、自然との非常に強い関係、超越的な秩序、そして隣人との同等の関係をも観察できたからです。
私は少しずつ、日本では他人を気遣うことは、内なる神性を気遣うことに等しいのだと想像するようになりました。西洋の汎神論の理論にあるように、ここでの神性はすべてを包含しています。
それが暗示するすべての引用符を使って、私は、他人を気遣うことは自分自身を気遣うことでもあると結論付けました。
この極めて個人的な疑似理論はまだまだ考えていく必要がありますが、私はこの理論が気に入っており、この主題に関する私の直感のいくつかを裏付け得ると認めます。

町内の米農家・岩橋義平さんにお話を伺い、田植えに初参加。
黙々と田んぼに苗を植えていく。地球と対話するかのような作業。
修験道の話を聞きながら大山祇神社を探訪。
芸術村が毎年開催している「草木をまとって山のかみさま2024」参加。


形を与えたのは地域で遭遇した“神聖なもの”─作品について

Q2. What thoughts did you put into the works and performance you created this time? Also, how did you feel after creating them? What do you hope people feel and think when they watch them?
──今回制作した作品やパフォーマンスにはどのような思いが込められているのでしょうか?また、制作してみてどのようなことを感じましたか?作品を鑑賞した人がどんなことを感じ、考えてくれたら嬉しいですか?

I arrived in Nishiaizu without any precise idea of what I was going to do, and I wanted to incorporate into my work the words and experiences of the people I was going to meet there.
Kotori, you were kind enough to send me a lot of information and links about local culture and crafts. After consulting all this information from France, I became convinced that around Nishiaizu there were all the materials and know-how needed to create and build a story.
Thanks to all of you, I've been absolutely lucky to have made some fascinating encounters with artists, poets and people who are deeply committed to social issues.
I was also delighted by the many discussions and exchanges I had with Yoshihiro and Kaori about local traditions and beliefs. I was able to see that this culture, which is internalized by all the Japanese, set in motion a whole ancestral folklore, a series of actions and rituals that are still very much present and staged at meetings and public festivals.
──私は何をするか明確な考えを持たずに西会津に来ました。というのも、そこで出会う人々の言葉や経験を作品に取り入れたいと思っていたんです。
(スタッフの)ことりさんが地域の文化や工芸品に関する多くの情報やリンクを送ってくださり、フランスでそれらの情報をすべて調べた後、私は西会津周辺には物語を創造し構築するために必要なすべての材料とノウハウがあると確信しました。
皆さんのおかげで、アーティスト、詩人、社会問題に深く関わっている人々とすばらしい出会いを持つことができ、本当に幸運でした。
また、佳宏さん(芸術村ディレクター)と佳織さん(スタッフ)と地域の伝統や信仰について多くの議論や交換ができたことも嬉しかったです。私は、すべての日本人が内面化しているこの文化が、先祖伝来の民間伝承、つまり、今でも集会や祭りで演じられている一連の行為や儀式を動かしているのを見ることができました。

I tried to translate all this material into forms that would be accessible to the people of Nishiaizu. I hoped to be able to combine my vision, my artistic research as a Westerner, with the deep-rooted culture of the country I was discovering!
──私は、これらすべての素材を西会津の人々が理解しやすい形に訳そうとしました。西洋人としての私のビジョンや芸術的な探求を、私の発見した日本に深く根付いた文化と組み合わせることができたら、と思いました。

The performance by the dancer Akiko Kajihara, presented at the NIAV last July, consisted of dancing with washi paper masks that I had made on site - with the help of the artist Tetsuya Takizawa - but also and above all with the part of the sacred that I had encountered in this region and which had given form to these masks.
──この 7 月に芸術村で披露された、ダンサー・梶原暁子のパフォーマンス(『Heaven, Earth, Human! Born from the same sun…』)は、私がアーティストの滝澤徹也さんの協力を得てつくった和紙のマスクをつけて踊るというものでしたが、何より、これらのマスクに形を与えたのは、この地域で私が遭遇した神聖なものの一部分でした。

Judging by the feedback from the spectators who attended the performance and the visitors to the exhibition that followed, I'd say that the message had got through. They spoke to me of strong emotions and respect for Japanese culture, which more than repaid me for all my efforts!
──パフォーマンスを観た観客やその後の展覧会を訪れた人たちの反応から判断すると、私のメッセージは伝わったのだと思います。彼らは私に強い感情と日本文化への尊重を伝えてくれて、それは私の努力を上回る報いとなりました!


制作された熊とカラスの和紙のマスク。パフォーマンス後の一枚。
西会津で出ヶ原和紙を制作するアーティスト・滝澤徹也氏の指導のもと、マスクに用いる和紙から共同制作。
マスクにするため通常より分厚い和紙を漉いただけでなく、炭を使って黒バージョンも制作。
パフォーマンス後、来場者との交流の時間。



後編へつづきます)


Alain Querciaさんプロフィール

アラン・ケルシア Alain Quercia
出身|フランス
主な分野|彫刻、舞台芸術
滞在期間|2024年5月15日ー8月11日
https://www.instagram.com/alainquercia/


いいなと思ったら応援しよう!