見出し画像

吸音ボード徹底比較「部屋の反響音を減らそう!」

今年、3月に札幌市から栗山町に移住。それにともない音楽スタジオも移転という事で、スタジオDIY中~。なかなか終わらない。。

押し入れの中の壁に遮音シート、ロックウール、グラスウールを埋めて新しく壁を作って、隣の部屋に音が漏れないようDIY。この後さらに石膏ボード→遮音シート→吸音ボードを貼って完成。

スタジオを作るうえで絶対にやらないといけないのは防音。
昨今、コロナ禍の影響でリモートワークが増え、自宅でZoom会議という方も多いのではないのでしょうか?

ただ、部屋の反響音が大きくてマイクの声が聞き取りづらい、生活音がうるさくて集中できないなど、弊害も多々あると思います。そういった方にも多少なりとも参考になれたら幸いです。


遮音と吸音

ご存じの方も多いと思いますが、防音するには遮音と吸音が必要です。
簡単に説明すると、

遮音

音を遮断。音漏れを防ぐ。
コンクリートや石膏ボードなど密度の高い素材を使用(音が反響しやすい)。DIYでは安価な遮音シートや石膏ボードがおすすめ。

吸音

音を吸収し反響を抑える。モニタースピーカーやマイクの音が聞き取りやすくなります。
グラスウール、ロックウール、ウレタン、フェルトなど、密度の低い素材を使用(遮音性は低い)


遮音と吸音どっちを優先?

皆さんそれぞれ住宅事情はいろいろだと思います。
幸い今回の移住先の住居は鉄筋コンクリートの一戸建ての2階部分で、一階はホールで人は住んでおらず、裏は山、両サイドは倉庫、正面は国道ということで、音漏れを気にする必要はなく、大家さんからもドラムを叩いても良いと言ってもらえたので、音は出し放題w

なので、一先ず吸音優先で作業を進めることにしました。

だけど、逆に屋外の音とコントロールルームの音はレコーディングブースには聞こえてほしくないので、ある程度の遮音は必要です。

問題は吸音。
部屋が広いのと、鉄筋コンクリートなので、手を叩くと良くも悪くもキレイに響きます。

これでは正しいモニタリングはできないし、マイクにも反響した音が入ってしまします。わかりやすく言うと温泉や銭湯に行くと反響がすごくて会話が聞き取りづらいとの同じです。

というわけで、
遮音優先
・自分が出す音を隣の部屋やご近所に聞こえてほしくない。
・逆に屋外の音、隣の部屋等の音を自分の部屋に聞こえないようにしたい。
吸音優先
・モニタースピーカーの音を正確に聴きたい。
・マイクの音をすっきりクリアにしたい。
・会話を聞き取りやすくしたい。

といった感じでしょうか、もちろん遮音も吸音も両方やった方が良いですが、予算との兼ね合いや、賃貸かどうかでもやれることは変わってくるかと思います。


ポリエステル素材の吸音フェルトボード

右の大きい二枚はロックウールボード、グラスウールボード。それ以外はポリエステル素材のフェルトボード。

吸音材にはグラスウール、ロックウール、ウレタン素材のものが割と一般的ですが、最近ポリエステル素材のフェルトボードを見かけるようになってきました。

非常に安価で見た目も良く、加工もしやすく、吸音もそれなりにしてくれて、保温効果もあるという事で期待大。

という事で今回はこのフェルトボードを中心に色味や質感、硬度、どのくらい吸音するのか比較していきたいと思います。


吸音フェルトボード4ブランド

今回、比較するフェルトボードはこちら。
ジョイフルAK以外はすべて大きさ60cm×60cm、厚さ0.9cmのものを使用。
ジョイフルAKは61cm×115cm(本当はもう少し大きいのですがこのサイズに切ってます)です。手元にあったのがこのサイズで一応、比較対象に入れてみました。

①ISL

②‎JANRI


‎Quiet-Mo①(YYT)

Quiet-Mo②(YYT)

ジョイフルAK(北海道の大型ホームセンター)


色味、硬度、質感の比較

4ブランドともホワイトを購入しましたが、上記写真を見るとわかると思いますが全て色味が違います。硬さや触った感じの質感も少し違うようです。
ちなみにどっちが裏で、どっちが表かわかりませんが、どのブランドも表はツルっと平坦で裏は少し凸凹しています。

①ISL

色味:少し黄色っぽい白。
硬度:今回の5つの中で一番硬く、密度が高いイメージ。
質感:少しザラザラしている。
その他:青っぽい混入物が多い。

わかりずらいですが、真ん中あたりに青っぽい混入物が入ってます。10枚中5枚、何かしらの混入物がありました。

②JANRI

色味:少しグレーっぽい白。
硬度:今回の5つの中で3番目に硬い印象。
質感:肌ざわり良い。
その他:4ブランドで一番安い。Amazonでの商品説明がYYT(QUIET-MO)の商品説明となぜか同じ。良くわかりません。ブランド名はJANRIと書いてます。混入物も少なくキレイ。

③QUIET-MO(1)

色味:明るい白。
硬度:今回の5つの中で1番柔らかい印象。密度230kg / m3との事。
質感:肌ざわり良い。(2)と比べると少しデコボコしてる。
その他:製造工場が変わったため今後は下記の(2)と同じものがしばらく販売されるとの事。

④QUIET-MO(2)

色味:上記の(1)より少し青っぽい白。
硬度:(1)とほぼ一緒。密度230kg / m3との事。
質感:肌ざわり良い。(1)よりツルっとしてる。
その他:24枚セットで購入した場合、24枚中1枚汚れがついているものがある。

余談
QUIET-MO①と②がありますが、これは色が好みで混入物も少なく、虫ピンも付いてくるという事で最終的にこの商品を3回に分けて大量に購入したのですが、3回目に購入した商品と1,2回目に購入した商品の色味が違ったので、問い合わせたところ、コロナと世界情勢の影響によりコストが値上がりしたため製造工場が変わったとの事。

色味も違いますが、質感や手触り硬さも少し違うため、比較してみました。

大量購入する場合は今回のように色味や質感が違うものが送られてくる可能性があるので、同じロットのもの、同じ工場で作られているかなどを確認してから購入すると良いと思います。

⑤ジョイフルAK

色味:少し青っぽい白。
硬度:5つの中で2番目に硬い印象。
質感:肌ざわり良い。ツルとしてる。
その他:混入物ほぼ無し。


内容が変わる

僕が購入した時は24枚、48枚とまとめ買いできたのですが、恐らくコロナや世界情勢の影響で在庫状況の変動が激しいのか、内容が変わっている場合があるようです。


簡易的な実験による吸音効果の比較

両サイドにはフェルトボードを貼ってあります。スピーカーは壁に向かって設置。反響した音をカメラに接続しているステレオガンマイクて収録。それと画像には映ってませんがiPhoneのアプリのアナライザーで音量と周波数特性を測定します。

簡易的ではありますが、スピーカーからホワイトノイズと音楽を壁に向かって出力して、反響した音をiPhoneのアプリのアナライザーでリアルタイムで測定。
そして、カメラにはステレオガンマイクを接続しており、収録した音をCubaseの解析ツールで分析します。

両サイドにはフェルトボードを貼ってあるので、正面の壁の反響音が大きく収録されると思われます。

そして吸音ボードを貼ってある時と何も貼っていない時の音を比較します。

簡易的な実験なのでご参考までに!


吸音効果の違いを耳で比較

まずはホワイトノイズを使た実験。
正面の壁に吸音ボードを貼っている時と貼っていない時の音の違いを動画でご覧ください。

01.フェルトボード

・ホワイトノイズでの比較動画

フェルトボード無しの時は約80db。
①~④のフェルトボードは約76dbと約4db程度音量が下がっています。
⑤のジョイフルAKはサイズが大きいというのもあるかもしれませんが、少しだけ他の4枚より音量が下がっていました。

5枚のフェルトボードの音を聞き比べるとそれぞれ周波数特性が違うようで印象がかなり違います。③と④のQUIET-MOは同じブランドという事で似たような特性ですが、製造工場が違うという事で、周波数特性が若干違うように聞こえます。

全体的に言えるのは2kHより高い周波数に対して吸音効果が高いという事でしょうか。逆に1k~2Khzより低い周波数に対してはあまり効果が無いように思います。

・音源での比較動画

それでは音楽を流した時の音の変化も聞いてみましょう~。

比較に使った音源はkitorina recordsのアーティストでmy bird warms a blanket for Coletteの『スノードロップ』。
https://kitorina.com/wp/colette-eject/

どのフェルトボードも歌の印象やハイハット、シンバル、ギターの印象がかなり落ち着いて聞こえるかと思います。その中でも⑤のジョイフルAKは他よりも高域を吸音している印象です。


02.グラスウール/ロックウールボード

続いてグラスウールボードとロックウールボードでもホワイトノイズで実験してみました。

グラスウールとロックウールは素材と密度が違います。両方とも触るとチクチクします。

①グラスウールボード

(今回使用した物とは別の商品ですが、同じく厚さ50mm、密度32kg/m3)

②ロックウールボード

( 厚さ50mm、密度80kg/m3_片面ガラス仕上げ)

二つともガラスクロスが片面に貼られているのですが、貼られていない裏面でも実験してみました。面白い結果になったので是非、ご覧ください。

・ホワイトノイズでの比較動画

吸音ボードの無い状態で80db。
グラスウールボードの表(ガラスクロス側)は約72dbと8dbほどの減衰。フェルトボードと比べるとかなり吸音効果があるようです。
裏面は71~72dbで表とほとんど差が無いように聞こえます。

ロックウールボードは約76db。約4dbの減衰。これはフェルトボードとあまり変わらない結果でした。
一方、裏面は72db~73dbでグラスウールボードに近い数値が出ました。
ちょっと意外な結果で面白いと思ったのですが、果たしてなぜこうなるのか?もしかしたらガラスクロスとロックウールの間の接着剤の量が多めで、硬質化して吸音しずらくなってるのかな?と推測しますがちょっとよくわからないです。

ま~簡単な実験なのでとりあえず、参考までに^^;


VUメーターによる音量の比較

収録した音をCubase に読み込みVUメーターでどのくらい音量が下がっているか比較してみました。収録した音はステレオでしたが、今回はLチャンネルだけで比較をしています。

①フェルトボードの音量比較

フェルトボード無し -8.00db から、どのくらい減衰したかを( )に表記してます。
①ISL : -13.05db (-5.05db 減衰)
②JANRI : -12.27db (-4.27db 減衰)
③QUIET-MO(1) : -13.83db (-5.83db 減衰)
④QUIET-MO(2) : -13.10db (-5.1db 減衰)
⑤ジョイフルAK : -13.96db (-5.96db 減衰)

②グラスウール/ロックウールボードの音量比較

フェルトボード無し -9.21db
①グラスウールボード -17.55db (-8.34db 減衰)
②ロックウールボード -12.33db (-3.14db 減衰)

測定方法が違うのでiPhoneでの結果との誤差は当然ありますが、似たような結果になりました。やはりグラスウールの吸音効果はフェルトボード、ロックウールボードよりかなり高いようです。

一方でロックウールよりフェルトボードの方が吸音効果が高いという結果になりましたが、これはもしかすると、スピーカーとマイクの距離に誤差があったことが原因の可能性もあるので、なんとも言えませんが、聴覚上でもロックウールとフェルトボーの音量の差はそこまで感じませんでした。

しかし、周波数特性的には明らかな違いがあったので、次の周波数特性の比較をご覧ください。


アナライザーによる周波数特性の比較

録音した音をCubaseに読み込みフェルトボード、グラスウール、ロックウールそれぞれの周波数特性を比較してみました。

・フェルトボード無しの時と有りの時の各ブランドごとの比較

どのブランドもだいたい1kHz~20kHzは減衰してますが、1kHzより下の周波数に対してはほとんど変化がないのが分かります。

・QUIETO-MO(1)とその他の吸音ボードとの比較

QUIET-MO(1)を基準として、他の吸音ボードと比較してみました。

この比較画像は一瞬を切り取った画像です。切り取る部分(時間軸)が違えば少し見え方も変わってくるので、時間軸関係無しにわかりやすく違いが出ている部分を赤枠で囲っています。

①ISLとの比較

そこまで大きな違いはないようですが、5kHz~7kHzくらいはQUIET-MO(1)の方が少し吸音しているように見えます。

②JANRIとの比較

こちらも大きな違いは無さそうですが、3KHzあたりはJANRIの方が吸音効果がありそうです。

③QUIETO-MO(2)との比較

同ブランド、製造工場違いの商品の比較。耳で聞いた印象はほぼ一緒ですが、少しだけ違います。もしかすると赤枠で囲っている7kHzあたりが少しだけQUIET-MO(1)の方が吸音しているからかもしれません。

④ジョイフルAKとの比較

ジョイフルAKは耳で聴いても他のフェルトボードよりも少し落ち着いた印象でしたが、3kHz~4kHzが他のフェルトボードよりも吸音効果高いように見えます。あと、赤枠で囲っていませんが、9kHz~10kHzあたりも吸音効果高そうなので、落ち着いて聞こえるのはこの辺りが抑えられているからだと思われます。

⑤グラスウールボードとの比較

全体的にグラスウールの方が吸音しているのが分かります。
特に400Hzから1.2Khzあたりの中域はフェルトボードよりかなり吸音効果は高いと言えます。
一方、2kHz周辺は逆にQUIET-MO(1)の方が吸音効果が高く、これはもしかするとフェルトボードの特徴なのかもしれません。

⑥ロックウールボードとの比較

400Hz~1kHzあたりはロックウールの方が吸音効果が高いですが、2kHz周辺と4kHz~20kHzはQUIET-MO(1)の方が吸音効果があるようです。


ロックウールボード VS フェルトボード

一般的に密度が高い方が音を反射しやすくなるので、吸音率は下がります。
そして、厚みがある方が吸音率は上がるとされています。ただ、密度が低すぎると、逆に音が素通りしてしまうので、適度な密度が必要です。

ただし、今回の実験からフェルトボードとロックウールの関係性を見ると、そうとも言えない部分もあります。

フェルトボード(QUIET-MO)の密度は230kg / m3。
ロックウールボードの密度は80kg/m3なので、吸音率はロックウールボードの方が良いはずですが、今回の実験では高域に関してはフェルトボードの方が良いことが分かりました。

そして、厚みもフェルトボードは0.9cmに対して、ロックウールボードは5cmなので厚みの部分でもロックウールの方が良いはずですが、そうとも言えないようです。

そもそも、素材や加工の仕方が違うので比較すること自体が間違っているかもしれませんが、DIYで使う吸音材として考えた場合はフェルトボードの方が安価で加工しやすく、耳障りな高域部分を抑えてくれるので、個人的にはフェルトボードで十分かなと思いました。

ただし、遮音性で考えると、厚みのあるロックウールで密度ができるだけ高いものを使った方が良いです。


遮音シートの有効性

フェルトボード単体での吸音性能はだいたいわかっていただけたかと思いますが、遮音性はというと0.9cmという薄さもあって、あまり期待できません。では遮音シートを貼った場合はどうでしょうか?

これも簡単な実験をしてみたのでご参考までに。

遮音シート無しだと3~4dbほど音量が下がりました。厚さ1mmの遮音シートを貼った場合は7~8dbほど下がりました。
遮音性を求めるなら遮音シートはかなり有効です。

遮音シートは厚みのあるもの、重いものを選んだ方が遮音性が上がるようです。


まとめ

簡単な実験なのでどこまで正確かはわかりませんが、吸音材としてフェルトボードを選択肢に入れるのは有りかと思いました。

実際、DIY中のスタジオは全面フェルトボードを貼ることにしました。
現段階であと一面を残すところまで貼り終えましたが、この時点でモニタースピーカーの音はかなりクリアに聴こえるようになりました。

全面貼り終えた後は追加でウレタン素材の吸音材や調音パネル等を使って、もう少し追い込んでいきますが、そこまで、シビアな環境を求めないのであれば、フェルトボードだけで十分と言えます。

何より加工が楽で安価で購入できるので、気軽に騒音対策ができるのも良い所だと思います。

一方、遮音性は期待できないので、遮音するなら遮音シートとのセットがおすすめです。

生活音や雑踏、反響音は意外とストレスになったりします。防音することによって、そういったストレスから解放される可能性はかなりあると思うので、是非、防音DIYしてみてください。

加工の仕方や貼り方についてはまた改めて記事を書こうと思います。

追記

保温効果がかなり高いです!お家が寒い方にも良いかもしれません。


今回の使用機材等

使用機材
・カメラ:SONY α6600

・レンズ:TAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD

・マイク:audio-technica ステレオマイクロホン AT9946CM

・スピーカー:GENELEC 6010A
・Cubase PRO12

・木工ボンド(速乾)
フェルトボードと遮音シートの接着に使用。速乾性のあるタイプがおすすめ。

・遮音シート:大建工業(厚さ1.2mm)

・遮音シート:ゼオン化成(厚さ1.2mm)


いいなと思ったら応援しよう!

西村サトシ(kibaco)
サポートよろしくお願いいたします。サポートは制作費、ライブのツアー費など活動資金にあてさせていただきます。

この記事が参加している募集