「踊るポンポコリンみたいな仕事がしたい」と3月15日の日記
村上ポンタ秀一さんの訃報を目にして、思い出したのがこの動画。
この動画は、ブルースギタリスト近藤房之助さんがCharさんとツアーしたときにブルースナンバー「Travelling」を演奏したときの動画。ギターは今は亡き大村憲司さん。踊り狂う観客の様子が最高な動画なのでぜひ観て欲しい。この動画でドラムを叩いているのが村上ポンタ秀一さん。最高に踊れるブルースは、最高のドラムが支えていることがよく分かる動画だ。
今日は村上ポンタ秀一さんではなく、敢えて近藤房之助さんの話をしたい。近藤房之助さんはコアな音楽ファンにはブルースギタリストとして知られているが、一般的な音楽ファンは知らない人の方が多い人だと思う。
でも、近藤房之助さんのことは知らなくても、この曲を知っている人はいるだろう。
多くの人が日曜日の18時に耳にしたであろうこの曲。かわいい女の人の横で、いかにもインチキそうな風貌のおじさんがギターを演奏しているが、このインチキそうなおじさん、実は近藤房之助さんなのだ。
実はBBクイーンズというバンドは、長戸大幸さん、織田哲郎さん、そして近藤房之助さんを筆頭に、名うての実力者のメンバーによる「大人の遊び」から生まれたバンドだ。ボーカルの坪倉唯子さんも「きまぐれオレンジロード」のテーマソングを歌った実力者だし、ギターの増崎さんは「Dimension」というフュージョンバンドを結成し、B'zのバックバンドでも演奏した。ベースの栗林さんは、Wandsの「Secret Night It's my Treat」といった楽曲提供でも知られるミュージシャン。そして、BBクイーンズというバンド名は、もちろんBBキングのもじりである。ブルースギタリストである近藤さんだからこそ出来る遊びだ。
近藤房之助さんはヒット曲を狙って生み出そう、とするタイプのミュージシャンじゃない。刀を抜こうと思えば抜けるけど、わざと抜かない。そんな人が「刀を抜いたらこんなこともできます」という感じなのがまたいい。できるけど、やらない。でもできる。
僕は「どんな仕事がしたいか?」と質問されたら、普段は違う答えを返すけど、本当は「踊るポンポコリンみたいな仕事がしたい」と答えたい。お金を稼ごうとかじゃなくて、ちょっと愉快犯というか、自分たちが全力でふざけたことを楽しんでもらおう、みたいな仕事が、結果的に多くの人にも受け入れられる、みたいな仕事がしたいのだ。
僕は「何でもできる」じゃなくて「技を絞る」のが大人の仕事だと思ってる。新日本プロレスの矢野通は、レスリングのアマレスチャンピオンなのに、わざとコミカルな戦い方をする。テクニックを使わないのだ。
近藤さんは、匿名でこのプロジェクトをやっているとき、本当に楽しそうだった。名前が売れるとか関係なく、自分が抜いた刀の切れ味を知りたかっただけなのだと思う。
匿名って、使いようによっては、とてもよい方法だ。JKローリングがペンネームで小説を出したとき、「名前じゃなくて純粋に作品の力で売れるか知りたかった」と話していたエピソードが好きだ。松任谷由実さんも呉田軽穂というペンネームでアイドルに曲を書いていたし、大瀧詠一さんも多羅尾伴内というペンネームがあった。小説家の重松清さんはいくつものペンネームを使い分けながら、小説以外の仕事を引き受けているという。
名前が売れてしまうと、名前のイメージに囚われてしまい、やりたくでもできない仕事もあるのだろう。でも、そうすることで、自分の表現の幅を狭くするのはつまらない。そう思ったとき、偽名や、遊びは有効な手段だ。
最近は、人の名前でコンテンツの良し悪しを判断する傾向にある気がする。確かに「誰がやったか」「誰が言ったか」のパワーは強いけど、本当に強いコンテンツはネームバリューなんて突き抜けるものをもってるはずだし、僕はそんな仕事がしたいなぁと思っている。
結局何がいいたかったかっていうと、面白い仕事が面白いチームを作るので、僕は面白い仕事を面白いチームでやりたい、と思っただけ。
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