2017年J2第31節 水戸ホーリーホック対名古屋グランパス レビュー「試合に出る喜びから、試合で結果を残し続ける苦しみへ」
2017年J2第31節、水戸ホーリーホック対名古屋グランパスは1-1の引き分けでした。
この試合は、なかなか相手ゴール方向にボールが運べませんでした。相手ゴール方向にボールが運べなかったのは、水戸ホーリーホックの守備が上手かったからです。水戸ホーリーホックは4-4-2というフォーメーションで守るのですが、守備をするとき、フィールドプレーヤー10人の横幅を、フィールド横幅に入るくらい狭く保ち、名古屋グランパスの選手にスペースを与えませんでした。
また、パスコースを切る守備も上手かったです。特に上手かったのは、名古屋グランパスの左サイドにボールが集まるように、新井や小林のような選手がボールを持ったら、右サイドへのパスコースを上手く消していました。
名古屋グランパスの左サイドは、イム・スンギョム、秋山、青木がプレーしていますが、ガブリエル・シャビエルは右サイドにいるので、相手の守備に捕まりやすくなってしまいます。水戸ホーリーホックとしては、ガブリエル・シャビエルにボールを持たせず、イム・スンギョムや秋山のように、ミスをしやすい選手にプレーをさせる。そんな意図を、水戸ホーリーホックの守備からは感じました。グラウンドの影響もあったと思いますが、水戸ホーリーホックの守備も巧みでした。
疑問だった和泉を90分起用したこと
僕が疑問だったのは、和泉を90分起用したことです。
この試合の和泉は中央のMFで起用されましたがミスが多く、ボールが相手ゴール方向に運べない要因になっていました。ドリブルを仕掛ければ相手につかまり、パスを出せば味方とタイミングがあわずに相手に渡ってしまう。特に前半はミスが多く、ボールを受ける位置も少しずつDFに近くなってしまい、小林と和泉の2人がDF付近でパスを受けるようになってしまい、結果的に青木とガブリエル・シャビエルとの距離が広がってしまい、なかなか相手ゴール方向にボールが運べませんでした。
後半に入って少しはよくなりましたが、味方の足元に正確に出せず半歩分後ろにパスが出てしまったり、パスがバウンドしてしまったりと、ミスには見えませんが、次のプレーのスピードが遅くなるような「小さなミス」が90分続きました。また、僕は和泉と同じくらいミスが多かった秋山に代わってフェリペ・ガルシアを入れた後は、次は和泉を交代させるのではないかと思っていました。しかし、風間監督は90分和泉を起用しました。
和泉は開幕から左右サイドのMF、中央MF、DFの左、FWと様々なポジションで起用されました。ポジションが定まっていないとも言えますが、和泉の力が評価されているからこそ、風間監督はポジションを変えてでも起用しているのだと思います。ドリブルでボールが運べ、左右どちらでも同じレベルでプレー出来て、ミスを恐れずに何度もトライ出来る選手は貴重です。
ただ、この試合までに6アシストを記録しているものの、得点はゼロ。ここに和泉の課題があると思います。相手ゴール前で正確にプレーし、得点を挙げ、チームを助けられる存在になれるか。和泉に求められているのはそこです。最近の試合で田口が実践しているように、ボールを運ぶのは小林に任せて、ゴール前で仕事をして欲しかったですが、上手くいきませんでした。本人としては、中央のMFでプレーするチャンスはなかなか来ないことは認識していたので、チャンスだと思っていたはずです。悔しかったと思います。
今後和泉がどこで起用されるかは分かりませんが、この試合のプレーは和泉が起用されるポジションに、少なからず影響があると思います。しばらくは、チームが求められる場所でプレーをする試合が続くと思います。ただ、チャンスが与えられているので、少しずつ結果を残しながら、自分がプレーしたいポジションでプレー出来る機会を勝ち取って結果を残せるか。和泉の今後のプレーに期待したいと思います。
この試合こそ玉田の出番だったのではないか
僕は和泉に代わって、玉田を入れるのではないかと思っていました。和泉がなかなかボールを運べず、ミスも多かったので、玉田のようにボールを奪われず、相手ゴール方向にボールを運んだ上で、相手の守備を崩すようなプレーをしてくれる選手を入れたら、もっとフェリペ・ガルシアやシモビッチといった選手にチャンスが増えたと思いますし、ガブリエル・シャビエルがもっと楽にプレー出来るのではないかと思いました。
ただ、1-1の試合で玉田が交代出場しなかったという事実は、玉田という選手のプライオリティがチームで下がっているという事を感じずにはいられませんでした。
前半戦の名古屋グランパスの攻撃を牽引していたのは、玉田です。ボールを奪われずに相手陣内に運び、正確なキックでシュートチャンスを作り出す。そして、「いつ攻撃するのか」「いつ守備するのか」をプレーを通じてチームに伝えていた玉田がいなければ、前半戦の名古屋グランパスはもっと負けていてもおかしくなかったと思います。
ガブリエル・シャビエル加入以降はスタメンを外れる事が多くなりましたが、僕はこの試合は久々に玉田が出場するのではないかと思っていましたが、実際は交代出場枠を1名残して出番なし。僕はこの試合こそ玉田の力が必要な試合だったんじゃないかと思いました。玉田が20分ほどプレーしていたら、もっとガブリエル・シャビエルも楽にプレー出来ただろうし、もう少しチャンスが増えた気がします。
ガブリエル・シャビエルが加入したこと、青木の台頭によって、風間監督が求めている選手のプライオリティは少し変わった気がします。ガブリエル・シャビエルと青木がボールを運べるので、2人が運んだボールを受けて、シュートチャンスを決める選手が、交代出場や先発出場のチャンスを得ていると感じます。
フェリペ・ガルシアと永井が起用されているのは、そんな理由があるのだと思います。ただ、この試合はガブリエル・シャビエルがボールを持つ機会も少なく、青木と同じサイドでプレーしなかったため、2人のコンビネーションによるプレーもなかったので、相手の守備を崩し切るようなプレーは少なかったように感じます。
だから、この試合は別の方法を採用しても良かったと思いますし、僕は玉田を起用しても良かったと思います。この試合の試合展開を考えると、引き分けは妥当な気もしますが、勝ち点2を取れたのではないかという気がします。この試合こそ、監督の采配で勝ち点を取って欲しかった。そんな気がしました。
試合に出る喜びから、試合で結果を残し続ける苦しみを味わう選手たち
5試合連続得点を記録した青木は、2試合連続無得点。5試合連続スタメン出場を記録している秋山は、ここ3試合は途中交代が続いています。試合に飢えていて、試合に出場して結果を残したことで、試合に出続ける事が出来るようになった選手は、少しずつ相手チームに警戒されるという事を意味します。
和泉、新井、イム・スンギョムにも共通しますが、相手に警戒されていても結果を残せるかどうかで、今後のキャリアが変わってきます。結果を残せないと、今まで積み上げてきたステップを繰り返さなければなりませんし、繰り返すだけの選手で終わってしまいます。結果を残せば、大きな責任を背負う事になりますが、給料が増えるといった見返りも増えていきます。そのステップを順調に歩んでいるのは、宮原です。宮原に続く選手が今後現れるのか、注目したいと思います。
引き分けに終わりましたが、湘南ベルマーレもアビスパ福岡も引き分け。勝ち点差は変わっていません。湘南ベルマーレ戦までの5試合で、どこまで勝ち点を積み重ねられるか。負けられない試合が続きます。ここからしびれる試合が続きます。楽しみです。