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「ファミレスを享受せよ」をいまさら享受する

今更ながら、インディーゲームの名作「ファミレスを享受せよ」を享受したので感想を書く。

本作は「おいし水」さん率いるサークル「月間湿地帯」による、永遠のファミレス『ムーンパレス』を舞台にしたコマンド選択式アドベンチャーゲーム。
なんとドリンクバーもあります。

まず、「享受せよ」っていう言葉のチョイスがすごくこのゲームの雰囲気を言い表している気がする。英訳版は「Enjoy The Diner」なんだけど、それだとなんだか趣きが変わってくる。直訳すると「ファミレスを楽しもう」だし。

製作者さんの意図した表現の方がより「悠久の時間が流れる中でそれでもこの状況を楽しもうじゃないか」的な意味合いを一言で言い現わしているように感じた。

本作はビジュアルノベルに分類されるようなゲーム性なので、テキストの良さ=ゲームの評価と捉えてもいいと思うのだが、このテキストが幻想的でダウナーでユーモアあふれる不思議な感覚がに包まれている。

意味があるようなないような、それでいて人となりがわかるような、長い時間を過ごす中で何回もこの話をしてきたんじゃないかと思わせる雰囲気に呑まれるのが妙に心地いい。

登場するキャラクターも作品の世界観や設定に合わせてか決してテンションの高くない、それでいて人間味にあふれた魅力的な面々ばかり。

私的な推しはガラスパンさん。ダウナーお姉さんいいよね・・・。それに比べると主人公はすごいコミュ強で割と変な人。自分だったらテンション低い人にグイグイ行けない。

ガラスパンさん

永遠のファミレス「ムーンパレス」から脱出する方法を探すのが主な目的。
ポイント&クリックでものを調べたりキャラクターと会話してストーリーを進めていくが、途中物理的に何度もクリックが必要な場面があるので、手詰まり感を感じるとマジでムーンパレスから出られない恐怖感が少し襲ってくるのでまんまとゲームの中に引き込まれている感じがした。

特筆すべきはサントラで、世界観にマッチしたLo-Fiな音楽が魅力的。製作者ご本人がピアノを弾いて作曲されているらしい。マルチクリエイター恐るべし。クリア後に聞けるピアノアレンジVerが特に素晴らしい。

今作における「ファミレス」とか、身近な店とか食べ物とかが題材や演出になっていると、その雰囲気を感じたくて実際に行ってみたり食べてみたりするのが好き。プレイ後の夜バーミヤンに行ってドリンクバーを頼んでロールプレイしてみるとちょっとだけ世界観に浸れるので良い。

というわけで「ファミレスを享受せよ」の感想でした。
ボリューム的には2時間程度で全クリできるコンパクトさが丁度いいので、短い時間で満足度が高いゲームをやりたい方にはかなりおススメです。


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